以前ご紹介した東京都武蔵野市・井の頭自然文化園の人気者・日本最高齢であるアジアゾウのはな子の飼育環境にショックを受けた人たちが、はな子の救出を求めていた「象のはな子騒動」

きっかけは、昨年10月にアップされたとある英文ブログ。

『コンクリートに囲まれたまるで「牢獄」の様な場所で、60年以上もひとりぼっち』『この様な悲惨な状況の中、ただ生かされているだけのハナコを、助けたいのです』といった内容が書かれていました。

全世界中から署名も

このブログを読んだ世界中の人から「あまりにも可哀想」「はな子を助けてあげたい」という意見が溢れ、ブログを書いたカナダ人・中川ウララ(Ulara中川)さんの呼びかけで、はな子のタイにある象の聖域への移動を求めて全世界から45万人以上の署名が集まっていました。

これに対し、困惑していた関係者。環境が最適なものではないと認めながらも、その中で可能な限りはな子に負担がかからない方法で飼育している事や、高齢のはな子を移動する事や飼育環境が変化する事へのリスクを語っていました。
(詳細は下記リンク記事へ)

ウララさんが来日・飼育担当者と直接対話

この騒動のきっかけとなったウララさんが、象の保護に詳しいキャロル・バックリーさんを同行し2016年3月4日に来日、翌日5日〜7日に井の頭自然文化園を訪問、はな子の様子を観察し、飼育担当者と直接意見交換しました。

キャロルさんは、直接はな子と飼育員の様子を観察し「長年一頭で飼育されており、はな子は飼育員を家族と認識して愛情をもっている」と判断、はな子は人とのふれあいによって社会性を補っているため、象の群れの中に入れても順応できないであろうという結論に達しました。

また、ウララさんも、はな子にとって長距離の移動が危険であるという事を納得、タイの象の聖域への移動は無理だと考え、移送すべきだとの主張を撤回しました。

はな子の移送をしない事で合意

その上で、ウララさんたちからは、生活環境をより良く改善する為、地面に土やゴム製のマットを引く、自動給水器や赤外線ヒーターの設置、はな子のお気に入りのおもちゃであるタイヤやチューブに工夫したものを増やす事などの提案がありました。

飼育担当者も前向きな姿勢を示しましたが、予算の問題だけでなく、神経質なはな子ゆえ工事などによるストレスを考慮する改善には多くの課題が残りそうです。

この結論に支援者から賛否両論が

ウララさんは自身のブログで「飼育担当者は丁寧で、とても誠実であり、協力的であった」と綴り「私たちは、はな子の移送はしない方が良いと判断しました。

日本には、象の聖域と言える様な場所が存在しないという事、そして外国の聖域への移送は高齢のはな子にとってとても危険だからです」と続けました。

この報告に対して、来日して直接対話をした事や飼育環境が改善される事への感謝のコメントもありましたが、否定的な意見も多く見られました。

実際にはな子の姿をみたウララさんはその移送の危険性が実感できたとしても、それまで「はな子を救おう」と支援してきた人にとっては、この報告は全く想定外の結論だったのです。

この報告を記したブログには、多くの批判的な怒りのコメントが書き込まれました。中には「はな子が幸せな余生を送るチャンスを奪った」と書かれているものもありました。

これらの意見に対して、ウララさんは辛抱強く説明しています。花子がかなり高齢である事、本来4本である歯がはな子は左下の1本しかない事、視力が失われつつある事、飼育担当者を家族だと思っている事、横になって眠る事など、移送だけでなく、新しい暮らしに馴染む事も難しいであろう事を伝えています。

はな子が幸せである為に、協力して努力を

「この決定は確かに完璧な方法ではありませんが、今ある環境の中でできる限り改善されるはずです。私たちの目標は、はな子の限界を尊重しながら、彼女の人生を豊かにすることなのです」

そして、はな子と飼育担当者の関係をこう記しています。

花子はとても優しく、飼育担当者の女性の手から食事をしていました。そしてもう一人の飼育担当者の男性は、彼女の足を洗ってあげ、熊手で彼女の体をブラッシングしてあげました。

ブラッシングされている時、はな子は大きな「幸せノイズ(呼吸音)」を出し、ブラッシングが終わると「もっと!もっと!」と要求していました。

今回の訪問の中で、最もはな子が生き生きとしていた時間が、飼育担当者とのコミュニケーションの時間だったと言います。

そして、その時間があまりに短すぎる事を指摘し、はな子との時間をより多く持つ事を提案しました。そして、それはすでに現在実行されています。

また、今回提案のあった寒さ対策のための風よけのプラスチックカーテンの象舎への設置も完了しました。

そして、ウララさんは次なるミッションへとすでに活動を始めています。それは、はな子の飼育環境改善の為の資金を集める為の募金活動です。

はな子の移送に賛同していた人たちが、すべてこの解決策に納得しているわけではありません。けれどユララさんが望んでいるのは「はな子の幸せ」その為には、これからもウララさんは活動を続けます。井の頭自然文化園のスタッフとタッグを組んで。

今年で69歳になった日本最高齢の象、はな子。はな子にとって本当に穏やかで幸せな余生を送らせてあげたい、その幸せを望む気持ちは同じです。

今回は、ウララさん達が問題視する相手に対し頑なに否定するだけでなく、むしろその相手を知ろうとする努力をした事で、本当の解決へ向かう道が見えてきた様に思います。

この騒動から、私たちは多くのものを受け取る事ができるのではないでしょうか。

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