「生でパフォーマンスを見ると圧倒される」――アーティストの実力・歌唱力を表現する際によく使われるこの言葉は、受け手の体験にその説得力を委ねるという点で非常に便利であり、もはや常套句のように様々なメディアに登場してきた。

ただし、三浦大知に対して誰かがこの表現をしていたとすれば、それは決まり文句として言っているのではない。文字通りそのパフォーマンスに圧倒された結果、体験させる以外にその魅力を十二分に伝えられる術がないと確信して言葉が出てきている。そう思っていいだろう。

1997年、10歳になる直前にダンスボーカルユニット「Folder」のメインボーカルとしてデビューした三浦大知。変声期を経て2005年にシングル『Keep It Goin' On』でソロデビューし、ソロとしての活動も既に10年以上のキャリアとなっている。

まずはメディア初公開となる、彼の最新LIVEツアーで披露されたバックダンサーたちとのダンスナンバーの映像を見ていただきたい。三浦自身も“怪物”と表現するほどの強敵ダンス・モンスターたちとの1対1バトルに、彼のパフォーマンスレベルの高さを思い知ることができるだろう。

出典 YouTube

そんな三浦が、デビュー日である3月30日、19枚目のシングルとなる『Cry&Fight』をリリースした。

Spotlight編集部は、同日にラゾーナ川崎にてリリースイベントを行った三浦に密着。本記事の最後では彼のパフォーマンスを至近距離から撮影した超貴重なステージ動画をお見せするが、まずは今年29歳になる三浦大知がいま何を考えているのかについて聞いたインタビューの模様を紹介していこう。

ダンスや歌は「生活の一部」

三浦大知については、親交のあるアーティストのKREVAもそう語るように、「ダンス・歌の実力ともに世界最高峰レベル」という評価がもはや定着している。そんな三浦をもってして、新曲『Cry&Fight』のダンスは「これまでで最高難易度」だったという。一体、どの点が難しかったのだろうか?

三浦:とにかく、息をつけるポイントがないんです。今回の振付には、特にポジショニングや重心の動かし方において、体幹がしっかりしていないと体がぶれてしまう難しい動きが多く入っています。

体幹をしめるときは、息をとめて一瞬無酸素っぽい状態になる。それが動きの中で連続して起こるので、歌うのが大変という意味で難易度が高かったです。

――パフォーマンスをするうえで、体幹を鍛えることはやはり重要ですか?

三浦:はい。体幹を鍛えて芯がしっかりしていれば、自分の動きを自由にコントロールすることができます。ピタッと止まりたいときにピタッと止まれて、ゆっくり動きたいときはゆっくり動けて、素早く動くこともできる。

僕の場合はそういう動きに加えて歌も歌うので、動きの間にブレスコントロールもしなきゃいけない。それを担うのも体幹ですから、体幹のトレーニングをしておけば多くのことに対応できますね。

三浦は普段、体幹トレーニングこそ時間をかけて取り組むものの、いわゆる外側の“見せる”筋肉を鍛えることはほとんどしないという。そのような外側の筋肉が声帯、すなわち歌うことに悪影響を及ぼすというのが理由だ。

常にダンスと歌の両方でベストなパフォーマンスを目指す。そこに三浦大知の凄みがある。

ダンスや歌の練習時間について聞くと、「僕の場合、ダンスや歌は(仕事というより)生活の一部なので、練習しようと思って時間を設けるというスタンスではないですね」と答える三浦。

では、その終わらない“生活”はどこに向けて進んでいるのだろうか?

三浦:僕の場合は、ライブがひとつの終着点です。たとえば壁にぶつかってどんなに上手くいかなかったりしても、ライブをやるときの景色を思い浮かべると、頑張ったら頑張った分だけお客さんが楽しんでくれるだろうなと考えられる。そしてその壁も、次のレベルにいくためにあるものなんだと思えます。

全てが上手くいかない そんな時いつも もっと遠くに行けると信じた

出典『Cry&Fight』

このような三浦の考え方は、新曲『Cry&Fight』の歌詞の中でも表現されている。

30代を間近にひかえた心境

内面の話が出たところで、ソロとしてのキャリアが10年を超え、また30代を1年後に控えている現在の心境や考え方について聞いてみた。

――来年2017年には三浦さんは30歳を迎えられます。30代というと“完全なる大人”という印象がありますが、その実感はありますか?

三浦:どうですかねぇ。僕が小さい頃に見ていた“大人”の人たちって、余裕があってかっこいい、何事にも動じないっていう印象があったんですけど、自分はまだまだそんなことはないなって思います。もっと余裕を持っていたいですね。

ただ、小さかった当時の自分にとってそう見えていただけで、実際あちら(大人)側としてはそうでもなかったのかなって思うこともあります。だから、あまり考えずに思いっきりやり続けて30代を迎えたいです。

また、幸いにも自分の周りにいる先輩方がよく、『30代楽しいよ』とか『40代はもっと楽しいぞ』って言ってくださるので、そういう言葉を聞いてると単純にこれからが楽しみですね。

――「自分はまだまだ」という気持ちはありますか。

三浦:はい。特にアーティストとしては、まだまだやれるっていう気持ちが強いです。まだダンスも上手くなれるし、歌も上手くなれる。まだまだ成長できるはずだって、自分の可能性を信じています。年齢を重ねていっても、そうやってモチベーションを上げ続けていけば達成できることは増えていくと思っています。

それに、まだ体験していないことも多いなと。今年、アラスカにオーロラを見に行ったんですよ。オーロラの写真って今はネットとかでもたくさん見れるから、それで見た気でいたんですけど、やっぱり生で見てみたいと思って。それで行ってみたら、やっぱり全然違ったんです。

他にも、実際に行ってみないと分からないことがたくさんありました。アラスカは風が全然吹かないとか、日本の雪と質が違って握ることができないとか、実はタイの移民が多くてタイ料理がすごく美味しいとか。そういう様々な体験が音楽活動のインプットになることもありますし、そういう意味でまだまだやれることがたくさんあるなって感じます。

シンプルな思考の中に見える成熟

「自分はまだまだ成熟してない」と語る三浦だが、10代、20代、そして30代へと近づくなかで自身の内面に起きた変化として挙げたのが、キャリアを重ねるほど「シンプルに物事を考えるようになった」ということだ。

「ダンサーや周囲のスタッフと接するうえで心がけていることは?」という質問への答えにも、三浦のシンプルな思考は表れている。

三浦:“気づく”ことを心がけています。僕はコミュニケーションがおざなりになるのがイヤで、誰かが少しでも何か思ったのなら、それについてしっかりと話し合いたい。“三浦大知クルー”のリーダーとしてみんなを引っ張るためには、そういう周囲の思いや変化に気づける人間でいたいと思います。

そしてこの“気づく”というのは、僕が音楽をつくる理由にも繋がるんです。僕は、僕の音楽を聴いて、みんなが何かに気づいてくれたらいいなと思っています。こういう気持ちがあるんだなとか、こんな物事の見方ってあるんだなとか、そういう気づき。

人が何かに気づく瞬間って、小さなことでもひとつのターニングポイントになると思っていて、そこで新たな価値観が生まれる。その気づきのきっかけが三浦大知の音楽だったらすごく有意義なことですよね。

さらに、“シンプル”という点でいえば、こんな言葉も出てきた。

三浦:最近、“体力”ってすごく大事だなって思います。やっぱ体力なんだなって。体力があれば、まず疲れない。疲れないと余裕ができる。余裕があれば、人に優しくできる。体力さえあれば、壁にぶち当たったりイヤなことがあったりしても、前向きに考えられるんですよね。

『病は気から』ということがよく言われますけど、そういう、心の持ちようが体に影響を与えるという考え方とは逆の、『体が心をつくる』、体力があるから気持ちが追い付いてくるということを最近すごく実感するようになりました。

「気づくことを心がける」「体力が大事」。自らの考えをとにかくシンプルな言葉で表現する三浦。自身では謙遜し否定するものの、その姿勢は紛れもなく成熟した“大人”である。

あえて“特別なことをしない”理由

ソロアーティストである三浦大知は、言わずもがな、ひとりでパフォーマンスを成立させなければならない。

ダンスと歌の両方で最高レベルを維持するからには、日常生活の中で自身を律するための多くのルールやルーティンをつくっているものと思い、それについても聞いてみたところ、意外な名前と意外な答えが返ってきた。

三浦:僕は武井壮さんが話すロジックがすごく好きで、それに影響を受けているところもあるんですけど、生活の中ではなるべく特殊なことはしないようにしてるんです。

もちろん、『この時間だからラーメンはやめとこう』みたいに健康に対して最低限の配慮はしていますが、スーパーフードを一定量摂取するとか、必ず睡眠時間を◯時間確保するとか、そういう特別なことはしません。

そういう特別なことをしてしまうと、たとえばそれができないような環境でパフォーマンスをすることになったとき、“あれがないから調子が出ない”となってしまうような気がして、それが怖いんですよね。だから、ゲンをかつぐようなこともしません。

どんなところにいても自然にいつものパフォーマンスができるようにしていたい。そのために決まった特別なことはやらず、リラックスした状態で集中力を高められるようにする。そのほうが精神的にも健康なんだと思います。

何かをすることに理由を持つのではなく、何かを“しない”ことに確固たる理由を持つ。やはり三浦大知は成熟したメンタリティーの持ち主だ。

「日本語の歌が世界中で流れる未来をつくりたい」

最後に、“今後実現していきたいこと”について聞いた。

三浦:僕にはふたつの大きな目標があって、ひとつは、ソロデビューのときにそう思って始めたように、“ひとりで歌って踊る”というスタイルをとるアーティストを日本にもっと増やしたい。特に男性アーティストがもっと増えてほしいですね。

もうひとつは、日本語の音楽が世界で普通に聞かれるようになる未来を実現させたい。

僕は日本語が凄く好きで、100かゼロかじゃなく、70とか30とかそういう“感情の間”みたいな複雑な気持ちを言葉にできるのが日本語の強みであり、魅力だと思ってます。そういう日本語の歌が世界中で普通に流れているっていう状況が実現できたら面白いだろうなと。

このふたつのどちらが先に実現するのがいいのかっていうのは分からないし、必ずしもそれを実現するのが自分でなくてもいいんですけど、自分のこの“歌って踊る”人生の中で、三浦大知がやれることがあるのならやっていきたいと思っています。

――これから世界へ出て行く中で、「これで勝負してやろう」と考えているものはあるんですか?

三浦:あります。まだ詳細は言えないですけど(笑)、構想としてはあります。それはもちろん、日本でやっても面白いだろうし、海外の人たちにとっても面白いだろうなと思えるものです。毎回毎回チャレンジして提示していきたいですね。

最後にワクワクせずにはいられないことを言い残し、三浦はインタビューを終えてくれた。

そして、このインタビューの数時間後に行われたリリースイベント。

Spotlight編集部は、三浦のパフォーマンスが行われているあいだ、ラゾーナ川崎ステージの至近距離に定点カメラを設置した。彼のパフォーマンスがこれだけの近距離で撮影され、それが世に出るという事例はこれまでにない。

インタビューでも登場した新曲『Cry&Fight』のステージ。最高難易度のダンスと歌を平然とやってのける三浦大知に、ただただ圧倒されてほしい。そして、「生でパフォーマンスを見ると圧倒される」という言葉に少しでも納得してもらえれば幸いだ。

ステージ間近から定点撮影!圧巻のダンス動画はこちら

出典 YouTube

<インタビュー/渡辺将基・宇佐美連三、文/宇佐美連三、撮影/長谷英史>

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