桜が咲くころ、寒さが戻ることを「花冷え」と言います。生暖かいような、肌寒いような…そんな春の夜におすすめの怪談・ちょっと怖い話を7選+a、ご紹介いたします。

※定番中の定番がメインのご紹介となります。文中の敬称略。

桜の樹の下には/梶井基次郎

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桜の樹の下には屍体が埋まっている!】の冒頭があまりにも有名な作品。美しい幻想を思い描いて読み進めると、なかなかえげつない感じの妄想が繰り広げられています。とても短いお話で青空文庫(Web上で無料で読めるサイト)で読めるので、未読の方はこの機会にぜひどうぞ。

桜の森の満開の下/坂口安吾

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坂口安吾の代表作です。桜の持つ狂気性を表現した傑作。峠に暮らす山賊の男と、残酷で美しい女の孤独と狂気の怪奇物語です。一度読んだら忘れられない静かな恐ろしさと、桜の森の満開の下の花冷えの寒さを感じる文体が美しいです。こちらも短編なので、最も美しいラストの一文へ向けて、ぜひご一読ください。

詩集/萩原朔太郎

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狂気と紙一重の世界で日本語の美しさ・深さを感じさせる詩なら萩原朔太郎で決まり!春をテーマにした作品もいくつかありますが、それ以外にも春の狂気をはらんだような湿気のある詩があって好きな人にはたまりません。

―地面の底のくらやみに、さみしい病人の顔があらはれ。

―みつめる土地の底から、
奇妙きてれつの手がでる、
足がでる、
くびがでしやばる、
諸君、
こいつはいつたい、
なんといふ鵞鳥だい。

―かずかぎりもしれぬ虫けらの卵にて、
春がみつちりとふくれてしまつた、
げにげに眺めみわたせば、
どこもかしこもこの類の卵にてぎつちりだ。

出典 http://www.aozora.gr.jp

じっとり、暗く美しい日本語に浸れます。

花の咲く比/田中貢太郎

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桜が咲いた月夜の晩に、美しい女と出会った若侍。途方に暮れている女を親切心から泊めてやるが…。気付かずに見過ごしそうなくらいのさじ加減で、中盤までそっと狂気の端が見えていて、後半で突然ビックリさせられます。やはり桜の下には…。すぐ読める短編です。

よもつひらさか/今邑彩

黄泉比良坂(よもつひらさか)とは日本神話において、生者の住む現世と死者の住む他界(黄泉)との境目にあるとされる坂、または境界場所。

出典 https://ja.wikipedia.org

イザナギとイザナミの神話でも有名な坂です。

夢十夜/夏目漱石

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文豪・夏目漱石の珠玉の短編集「夢十夜」。宝石のように美しく切ない第一夜からはじまり、夢かうつつかわからない物語が紡がれていきます。

こんな夢を見た。
腕組をして枕元にすわっていると、仰向きに寝た女が、静かな声でもう死にますと云う。

出典 http://www.aozora.gr.jp

(第一夜)

「おまえがおれを殺したのは今からちょうど百年前だね」

出典 http://www.aozora.gr.jp

(第三夜)

柔らかい家/夢枕獏

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「陰陽師」「魔獣狩り」「サイコダイバー」「闇狩り師」シリーズや2016年映画公開の「エヴェレスト 神々の山嶺」で知られる夢枕獏の短編です。
夜道に迷ってやっと見つけた一軒家に入れてもらった主人公。しかし家の中には薄気味悪い奇妙な生物たちが混沌と生息しており、食べさせられた鍋の中身も…。ガツンと怖いのではなく、じんわりとやわらかな怖さが迫ってくるあたりが春の怪談にふさわしいです。

夢枕獏作品でその他のオススメ

願わくば 花の下にて春死なん その如月の 望月のころ

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願わくば 花の下にて春死なん その如月の 望月のころ
(ねがわくば はなのしたにてはるしなん そのきさらぎの もちづきのころ)
1100年代の歌人・西行(さいぎょう)が詠んだ晩年の歌です。怪談ではありませんが、美しい春の和歌なのでご紹介いたしました。

―(西行は)その歌のとおり、陰暦2月16日、釈尊涅槃の日に入寂したといわれている。

ねかはくは 花のしたにて 春しなん そのきさらきの もちつきのころ (山家集)
ねかはくは はなのもとにて 春しなん そのきさらきの 望月の比 (続古今和歌集)

―花の下を“した”と読むか“もと”と読むかは出典により異なる。なお、この場合の花とは桜のことである。

出典 https://ja.wikipedia.org

春の夜におすすめのちょっと怖い話7選+α、いかがでしたでしょうか。桜の持つ独特の雰囲気や、生暖かいような肌寒いような怖さを感じられるものをご紹介いたしました。これを機にもっとたくさんの作品に触れてみたいと思っていただければ幸いです。

満開の桜の下での宴会は楽しいもので、花より団子とは言いますが、くれぐれも夜桜の下にお独りきりで居残ることのないように…。

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