男性に比べると、女性はパート・アルバイト・派遣などの非正規雇用形態で働くケースが多くなっています。

扶養範囲内で働くために、その雇用形態を選ぶ方もいらっしゃれば、正社員になりたいと思いつつ甘んじている方もいらっしゃるでしょう。

今回紹介する、大手中古書籍販売チェーンのブックオフで相談役を務めている橋本真由美さんも、そのキャリアは時給600円のパートから始まりました。

まずは橋本さんの経歴から紹介します。

求人募集のチラシが運命を変えた

出典 http://www.bookoff.co.jp

橋本さんは、1949年生まれの57歳。一宮女子短大を卒業後、栄養士として勤務した後に寿退社。2女に恵まれ、18年間専業主婦として生活を送っていました。

そんな橋本さんに転機が訪れたのは、1990年の春のこと。ブックオフ1号店開店に伴い、求人募集のチラシが橋本家に舞い込んだのです。

そこには<お好きな時間にお好きな時間だけ>と書かれていました。

専業主婦歴18年でしたが「学費の足しくらいは稼げるかな」と軽い気持ちで応募し、面接の際には「子供が帰る4時までに退社したい。夫が休みの土日は働けない」と言って店長を困らせたほど。

出典 http://www.bookoff.co.jp

時給600円のパートとして扶養範囲内で働こう、そんな軽い気持ちだったようです。

しかし、いざ勤務が始まるとその考えはガラリと変わりました。橋本さん曰く「働くことにハマった」と表現しています。

どんなことを職場で体験したのでしょう?

働いて気付いた3つのこと

出典 http://prtimes.jp

1つは、私個人を認めてもらえたということ。

それまでの18年間は、「橋本さんの奥さん」「◯◯ちゃんのお母さん」、あとラッシーという犬を飼っていたので「ラッシーのおばちゃん」で通ってたんですよ。

出典 http://www.happy-bears.com

女性は専業主婦になると、個人として認めてもらう機会が激減します。それは、行動範囲が家庭、近所、お子さんの通う教育機関、親族などに限られてしまいがちだからです。

ところが働くと個人として認められ、仕事ぶりも第三者から評価されることになります。

2つ目は、毎月25日にお給料が振り込まれること。これはとても新鮮な経験でした。

出典 http://www.happy-bears.com

専業主婦の場合、ご主人のお給料で生活が賄われるのが一般的です。特に橋本さんの場合は、18年間という長い間を専業主婦として生活してきたので、自身名義で収入を得ることが尚更新鮮に感じたのではないでしょうか。

1ヶ月の労働対価として、毎月決まった日に収入を得るということは労働者の醍醐味とも言えますよね。

3つ目は、中古業のおもしろさです。

お客様に売っていただいたものを加工して、それをまた新しいお客さまが手に取り、レジに持ってこられたときというのはとてもうれしいものがあります。

出典 http://www.happy-bears.com

ご存知の通り、ブックオフは中古の本を中心としたリユースチェーンを展開している会社です。

自分の手で美しく加工したものを手に取ってもらえるということは、従業員冥利に尽きるのではないでしょうか。

専業主婦時代との比較を総じて、橋本さんは次のように話しています。

パートとして働き始めてみると、家の外でも自分が役に立つという手応えを感じることができました。

主婦としてやって当たり前の家事。それには報酬がありませんが、仕事は働けば働くほど周囲から認められ、おまけに収入がある。

自分の知らなかった世界が広がり、家の外にも自分の居場所ができたことが日々の充実につながりました。

出典 http://diamond.jp

働くことで自分に自信がつき、新たな居場所を得たと仰っています。橋本さんの場合は、働くことが自身の人生にとってプラスになったのです。

さて、パートの主婦がどうして経営者にまで上り詰めたのか…それは、橋本さんが“言われたことだけをやるパート”ではなく、自分が気付いたことはどんどん実行していく“現場のお母さん”だったからです。

パート時代にどんなことを提案していたのか紹介しましょう。

女性ならではの視点がお店づくりに生かされた

出典 http://www.bookoff.co.jp

女性も気楽に入れる清潔な店内、立ち読みOK、古本の臭いを消す空調、明るく元気な店員、作家の名前順に陳列…などを次々に提案。坂本孝社長はそれを取り入れた。

9時から5時までのパートのつもりだったが、同じ5時でも、午前5時になることも度々だった。

出典 http://www.j-cast.com

今では当たり前のルールや設備は、橋本さんの提案がきっかけだったのです。「とにかくお店を良くしたい」という思いから、明け方まで働くこともあったとか…。

その積極的な仕事ぶりは高く評価され、なんとパート雇用のまま2号店の店長に就任しました。

通常、役職に就くのは正社員という概念がありますが、ブックオフでは雇用形態に関わらず公平な評価をしています。これは橋本さん自身も、経営の上で大切なことだと仰っていました。

ここで気になるのは橋本さんのご家族の反応…。自身の経験を次のように話しています。

「オレとブックオフどちらが大事なんだ」と言われ…

出典 http://next.rikunabi.com

橋本さんは団塊世代の女性です。ご存知のようにこの世代の夫婦観というのは、「男性が外出稼ぎ、女性は家庭を守る」というのがスタンダードでした。

例に漏れず、橋本さんのご主人も妻が働くことに対して否定的だったそうで、仕事にのめり込む橋本さんにこんな言葉を投げかけていました。

入社して2週間ぐらいで仕事にやりがいを見つけ、お店のオープン準備でそれはもう大忙し。次第に家よりお店の方を優先して考える自分がいました。

ついには主人に「オレとブックオフとどっちを取るんだ」と問いただされ、「ブックオフです」と言い切ったほど(苦笑)

出典 http://diamond.jp

女性が「仕事と私、どっちが大事なの!」と言うのはよく聞きますが、逆パターンは珍しい…。

それでも夫婦仲が悪くなることはなく、むしろ仕事という共通の話題を通して夫婦の会話が増え、ご主人からのアドバイスに救われたこともあったそうです。

次に娘さん達の反応を紹介します。

元々専業主婦だった橋本さんは、仕事を始める前の自身の様子を「教育ママだった」と振り返っていました。母親として、仕事を優先させてしまったことを申し訳なく思うこともあったそうですが、当の娘さん達はどう受け止めていたのでしょう?

働き始めてから、悩んで辞めようと思ったこともあるんです。でも子どもに相談したら「やめて、あのパワーがまた私達に向かうと大変だから!」と言われまして。

出典 http://www.happy-bears.com

当時の娘さん達は思春期真っ只中。門限は18時、口にするものは添加物一切禁止、偏差値についてもうるさく言われるなど、ちょっと息苦しかったのかもしれませんね。

働くことでお子さんと適度な距離が保たれ、後に娘さんから「お母さんみたいになりたい」と言ってもらえたことが、仕事への活力にもなったそうです。

いずれにしてもご家族の応援が、今日の橋本さんを支えているのは間違いありません。

その後、「もっと働きたい!」という思いから橋本さんは正社員なりたいと直訴し、1994年には取締役に就任。

2006年には、社長に就任しました。現在は相談役ですが、役職がどれだけ重いものになろうと「現場主義」を貫き、人手が足りない店舗があれば現在も自ら店舗に立っています。

実際に何が起きているのか、自分の目で確かめた上で経営に生かすことを今でも心がけていらっしゃるそうです。

ちなみに…

出典 http://www.campjo.com

タレントの清水国明さんは、橋本さんの実弟です。

ブックオフのCMに清水さんが出演したのも、姉である橋本さんからのオファーでした。

「浮き沈みの激しい芸能界で生きているからこそ、出られる時に出て稼いで欲しい」という姉としての思いがそこにあったのではないでしょうか。

現在では娘さんも結婚して、3人のお孫さんのおばあちゃんになった橋本さん。

専業主婦から経営者になったシンデレラストーリーは、新しい女性のキャリアの象徴にも思えます。

現在では出産を機に一度仕事を退職してしまうと、なかなか復職できないという現実がありますが、橋本さんのように育児が少し落ち着いてからでも働ける環境が増えていくと良いですね。

今後の活躍に期待したいと思います。

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