フランスの同時多発テロの裏側で

Licensed by gettyimages ®

ベルギー、ブリュッセルでのテロがパリの同時多発テロに関連したものだと確定されて以来、ますます欧州に住む者にとっては緊張と不安の日々。まるで去年の11月に起こったパリでのテロ事件に時間が戻ったように感じる人もいることでしょう。

2015年の11月13日に起こったパリの同時多発テロ事件のために、報道がほとんどそちらに偏ってしまい、その前日に起こったレバノンのテロ事件はあまり世界的には報道されませんでした。そしてもう一つ、同時期にナイジェリアでもテロ組織「ボコ・ハラム」による大量虐殺が起こっていたのです。

アフリカ西部のナイジェリアで勢力を振るうテロ組織「ボコ・ハラム」

Licensed by gettyimages ®

近年、ISISやISILなど日本人も巻き込まれた「イスラム国」によるテロ事件が表立っていますが、「ボコ・ハラム」テロ組織はナイジェリアのタリバンと言われているほど、ナイジェリアでは勢力を振るっているサラフィー・ジハード主義組織です。

パリの同時多発事件が起こった数日後の11月17日には、ナイジェリア北部のヨラで夕方の買い物客で込み合う青果店を自爆テロ犯が襲い、34人が命を落としました。更に翌日には女性テロリストによる自爆行為で15人が死亡。

留まることを知らないボコ・ハラムはISに忠誠心を誓う一方、既に「ISを超えた史上最悪のテロ組織」という調査結果もあがっています。残虐な方法でナイジェリアで虐殺を繰り返すボコ・ハラムは、実はイスラム国よりも多くの人を殺していると言われています。

2014年に起こったナイジェリア生徒拉致事件

Licensed by gettyimages ®

今からちょうど2年前の2014年4月に、ボルノ州の公立中高学校から276名の女子生徒が拉致されました。ボコ・ハラムによる犯行声明文が出され、子供を奪われた家族に地獄の苦痛を与えました。

Licensed by gettyimages ®

後に53人の女生徒が自力で抜け出したと報道がありましたが、残りの生徒は「行方不明」になったまま。実際はボコ・ハラムにより改宗を強要されテロリストの花嫁(性奴隷)にされたと言われています。

こうしたボコ・ハラムによる学校襲撃の残虐行為は、2010年から勢いを増したと言われています。ナイジェリア政府の欧化政策がテロ行為の要因になっていると言われていますが、学校を攻撃目標とし子供たちを殺害する行為は大量虐殺そのもの。

女性は教育を受けるべきではないという性差別が根底にあるボコ・ハラム組織。誘拐され性奴隷として人身売買されるナイジェリアの女性たち。逆らえば殺され捨てられ、生きていても改宗させられ「物」として扱われるだけ。

女性の権利をことごとく踏みにじる悪しきテロ組織「ボコ・ハラム」は、ナイジェリアの全国民に計り知れない傷跡を残し、それが癒えないうちにまた次のテロ行為を繰り返すのです。

女生徒たちは未だ行方不明に

Licensed by gettyimages ®

ナイジェリア軍に救出された53名以外の女生徒は、事件から数年たった今でも行方不明といった状態。度々デモが行われてはいるものの、実際にボコ・ハラムの問題に政府や軍が対応できていないという状況だそう。軍事予算も高く、兵員の数も多いナイジェリア軍を市民が支援しないというのが大きな理由の一つだとも言われています。

力でもって力で制するという国の状態に住民がほとほと疲れ切っているのではないでしょうか。ボコ・ハラムが起こしているテロ事件は、単なる宗教の問題だけではなく、民族や国そのものの問題にも大きく関わっているのです。

テロリストにより行われている人身売買などの人権問題も、ナイジェリア政府がきちんと対応できれば問題はないのですが、軍事が過剰になってしまうためにボコ・ハラムに関係のない人までをも巻き込み、それによって国民の怒りを買い非協力的になる。

そうするとボコ・ハラムがますます勢力を拡大し、手が付けられなくなる前に政府が何とか解決策を出すといったことが全くできないという悪循環に陥っているのです。解決策がでなければ、結果的にボコ・ハラムを抑えることもなくすこともできないということ。

それが今ナイジェリアで根深い問題となっていて、今後も続くであろうと懸念されているのです。

増え続ける女性誘拐拉致事件

Licensed by gettyimages ®

ナイジェリアに暮らす女性は、2014年の女生徒拉致事件だけに留まらず性奴隷として次から次へとボコ・ハラム組織の犠牲になっています。それだけでなく、女性や子供を自爆テロに使うという残虐極まりない行為を繰り返すテロリストたち。

ナイジェリア軍によってボコ・ハラムから救出されたとしても、彼女たちの苦悩は終わることがないのです。故郷に戻ることができても家族やコミュニティから拒絶されるという苦痛を味わっているのです。

Licensed by gettyimages ®

家族でさえも、誘拐され拉致された娘が戻ってきたとしても素直に喜ぶことができないとうのは何とも悲しいことです。ボコ・ハラムによって性奴隷にされていたという汚らわしさとボコ・ハラムの思想に洗脳されているのではないかという恐怖から、地域にまで拒絶される女性たち。

無理やり自爆テロに強いられているという考えよりも「国の破壊に力を貸している」という捉え方をされるケースが多く、事実ボコ・ハラムに誘拐された女性たちによる女性自爆テロにより多くの人々が犠牲になっているために、地域住民としては拒絶する以外の選択肢がないといったところ。

ボコ・ハラムに拉致され、性奴隷として扱われて人権を奪われた挙句に、生き残ったとしても故郷に帰れば住民たちから拒否される存在にしかならないという女性たちの苦しみは、私たちの想像を絶するものがあります。

ナイジェリア・ムスリム女性協会連合は、こうした被害者となった女性たちのサポートに全力を尽くしています。2012年以降、ボコ・ハラムに誘拐された女性は2千人に達するとも言われています。彼女たちが負った精神的苦痛は、簡単には癒えることはないでしょう。

悲劇が更なる悲劇を生む現実

Licensed by gettyimages ®

性奴隷として扱われた女性はもちろん妊娠することだってあります。性的暴力によって生まれて来た子供は、母親に捨てられたり、母親の女性よりも地域から酷い虐待を受けることもあるそう。テロリストのレイプにより生まれ出る命は「悪」としかみなされないからです。

女性も犠牲者なら、レイプにより生まれてくる子供は更なる犠牲者といってもいいでしょう。このような悲劇が悲劇を生むという繰り返しが、今、ナイジェリアでは起こっているのです。

日本では考えられないようなことでも、ナイジェリアでは日常茶飯事。この国に生まれてしまったことで人生が大きく違ってくるというのは、本当に悲惨な、そして非常にやりきれないことです。

終わりのないテロ事件。第3次世界大戦の始まりだと言う人もいます。これだけ多くの人の血や涙が流れている今がほんの始まりだとしたら、いつ、このような恐怖の日々の終わりが来るのでしょうか。また、果たして終わりがやってくることなどあるのでしょうか。

世界で起こり続ける性差別、女性蔑視、レイプ、虐待、そしてテロは終わることなく続き、この世界を徐々に破壊していくのでしょうか。残虐なテロ組織が豪語している「世界を支配する」ことにだけはなってほしくないと強く願わずにはいられません。

この記事を書いたユーザー

Mayo このユーザーの他の記事を見る

公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

得意ジャンル
  • 話題
  • 社会問題
  • 動物
  • 海外旅行
  • 育児
  • テレビ
  • カルチャー
  • 美容、健康
  • ファッション
  • 感動
  • コラム
  • おもしろ

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス