尾崎世界観。一度聞いたら忘れないこの名を持つ男は、若者から熱狂的な支持を集める4人組バンド、クリープハイプのフロントマンを務めている。

そのクリープハイプは、2014年のレコード会社移籍問題で大きく揺れた。以来、彼は作曲などで苦悩・葛藤の日々が続いていたが、今回発売された新曲『破花』は、「これで新しいスタートが切ることができる」と本人が語る会心の1曲。今回、曲作りの原動力から、ネットで言われ続けている噂まで、Spotlight編集部が根掘り葉掘り聞いてきた。

――全国ツアー、お疲れ様でした。今回の会場は、原点に帰る意味も込めてメジャーデビュータイミングで行ったツアーと同じ場所を回っていましたが、終わってみていかがですか?

楽しかったですね。本数としてはいつもより少なかったんですけど、結果的には充実したものになりました。

――本公演&追加公演ともにソールドアウトしたこともあり、尾崎さんの中で一つの区切りとなったのではないでしょうか?

そうですね…ただ、ずっとモヤモヤは続いていますね。でも、このツアーでそれでいいんだな」と気付けて楽になりました。今まではそのモヤモヤを消せるかもしれないと考えていたんですが、今回終えてみて、もう消えないなとわかって。

ネットの反応を見て後悔

――先月23日に発売された新曲「破花」の初回特典DVDには、1時間にも及ぶバンドの苦悩に迫ったドキュメンタリーが収録されていました。何でも赤坂BLITZ公演では、本番直前まで声が出ずに中止も考えていたとか。

あの時はきつかったですね。でも自分がやるしかないし、他にやれる人がいないからその分やりがいもあるんですけど。

――今回のDVDは、元からドキュメンタリーにしようという考えがあったんですか。

自分の気持ち的に少し決着が付いたところがあったので、いい機会だなと思ってはいました。陰で言われるくらいなら、先に全部ぶちまけてしまえというか。そのほうが気持ちがいいですし。

出典 YouTube

――以前から「尾崎さんの声が出ていない」というのは、ファンの方が心配していることでした。

自分がどう思われているかというのは、ネットで見ているので知っていました。本当はよくないんですけど、やっぱり見てしまうんですよね。今ネットでニュースを見ると、どんどん関連記事を見てつながっていくじゃないですか。

勉強にもなるし便利なんですけど、リンクをたどっていくと自分の話題になることがあって、結局最後は見なきゃよかったなと後悔することになる(笑)。

――周りの声を聞いても無視するタイプではないんですね。

そこは引きずられてしまいますね。でも引きずられたから書けたこともいっぱいあるし、作曲する上では悪いことじゃないです。まあ、精神的には疲れますが。

曲を作り続ける原動力とは…

――「昔の曲の方が良かった」というファンの声もありますが、それを知ったときは焦りがまず来るのか、それとも前向きに考え打開していこうという気持ちですか?

焦りのほうが強いですね。音楽性は変わっていくのでしょうがないと思っていますが、いざ「前のほうが良かった」と言われると気にしてしまいます。いつでも最新で最高にいいものを届けたいと思ってやっているので。

――そうした悩みはメンバーと話し合ったりはしないんですか?


メンバーにはほとんど言わないですね。自分でいまだに悩みながらやっていてます。曲は作らなきゃいけないけど、やりたくないことをやってまで人にいいと思われたくない。ここ2年ぐらいそれを考えていて。

――2年前といえばレーベルを移籍した時期ですね。

そうですね。これまでは、聴いてくれる人のほうに合わせにいっていた部分もあったんですが、それを一切やめて、曲作りを見詰め直していました。結局曲を作る理由はなんだろうなと考えると、自分が聞きたい曲を作りたいからなんです。「こんな曲があったらいいのにな」とか「こういう歌詞は誰も歌ってくれないな」とか。

振り回されて体制が崩れて、建て直す時間もないまま走ってきましたが、今回この曲(『破花』)を出せたことで、また新しいスタートが切れると思っています。

出典 YouTube

メディア露出を増やす理由

――バンド自体や尾崎さんはこうしたインタビューやテレビなど、メディア露出には積極的ですよね。テレビに出ない方針をとっているアーティストもいる中、ご自身でどう考えていますか。

最近は極力出て行って、自分の口から伝えようとは思っています。今ってなかなか理解してもらえないというか「この歌詞は意味がわからない」となると、それだけで終わってしまうことが多くて。

――確かにメディアに出ないと、いろいろ憶測で語られてしまうことがありますね。

あとは、自分で語っている時に気付くことがとても多いんです。きちんと作ってこうしてプロモーションの時期にしゃべっていると、自分でも「あっ、こんなことを思っていたんだな」とわかるし。ちょうど聞いてくれる人と同じような気持ちになれるというか。

「僕は直球を投げ続けるタイプ」

出典Spotlight編集部

――そういったこともメンバーと話さないんですか。こういうプロモーションをしていこうとか。

話さないですね、僕がほとんど決めています。メンバーとの距離は近からず遠からずみたいな感じで、それぞれ役割が決まっていますね。野球の守備と攻撃じゃないけど、メンバーがしっかりバンドを守ったら、その分メディアで話す役目を僕がやっていくと。

――今、野球の話題が出ましたが、野球選手は葛藤しながらも、現実にアジャストして行かなければならない。それはミュージシャンにも通じるところがあると思うのですが。

野球選手って、年齢とともに成績が下がっていっても、本人の中ではやれると思っている人も多いと思います。周りからは「年だからしょうがないよ」と言われても反発して。いわゆる「体と心が追い付かない」というやつですが、そこにはすごく共感できます。

あとピッチャーで、昔は剛速球を投げていたのに、力が落ちて変化球派にシフトする人がいますが、自分にはそれができない。僕は球速が落ちても、直球を投げ続けてしまうタイプ。もしかしたらまた球が速くなるんじゃないかと、自分を信じているんです。

――そうしてしまう理由はどういうところにあるんでしょうか?

やっぱり他のミュージシャンを見ていても、辞めて戻ってきたりするじゃないですか。僕も辞めたいと思うことはあるんですけど、結局その後に再結成したりしてやりたくなるんだったら、そこにいたほうがいい。

もともとバンドで上手くいかなくて生活できなかった時も、続けていたかったわけじゃなくて、ただやめられなかっただけ。そんな自分の性格もわかっているので、もし辞めたら「今思えばあの頃は恵まれていたな」と絶対言うと思う。だからとりあえず進み続けるしかないんですよね。

プロ野球球団のテーマソングを作りたい

出典Spotlight編集部

――ある程度高みに登った人ならではの葛藤だと思います。悩みなくスッキリとした気持ちで進むのは難しいですよね。

そうですね。スタイルを変えて表現している人もいると思うんですけど、それは大きな決断だと思うし。もうちょっとしたらそういう決断があるのかもしれないですね、まだメジャーデビューして時間が浅いので、見えていないこともあるし。

また野球の話ですけど(笑)、野球の試合では優勝チームだって絶対「負け」があるわけじゃないですか。戦っては勝って負けての繰り返し。結局音楽もそうだと思っていて、一回も挫折しないなんてことはない。いいときと悪いときの繰り返しなんです。辛いことは辛いですが、それを楽しめればいいなと思っています。

――最後に、今後の具体的な目標などはありますか?武道館ライブは過去にもやっていらっしゃいますが。

また武道館でやりたいなというのは最近思っています。ライブは生ものなので、やり続けないと感覚を忘れてしまいますから。言っているとキリがないですが、ゆくゆくはアリーナクラスで出来ればいいですね。

――尾崎さんは以前SMAPにも楽曲を提供していましたが、そういった活動にも興味はあるんでしょうか?

やりたいですよ、でもそういった話は全然来ない(笑)。人に曲を作ると「こんな言葉が自分の中にあったんだ」と、思ってもいなかった歌詞が出てきたりするんです。自分が歌うという前提を取り払うと、いかに自分が表現者として縛られていたか気付けますね。

――それだけ野球フリークであれば、ぜひプロ野球球団の歌も作って欲しいです(笑)。

いいですね、自信あります!(笑)

最後に

大好きな野球の話を織り交ぜながら、熱っぽく自身の価値観を語ってくれた尾崎さん。

ここで語ってくれた「音楽をやり続けるしか無い」という言葉からは迷いのない、強い決意を感じることが出来た。苦悩と向き合い、それを乗り越えた彼らをアリーナのステージで見る日もそう遠い先では無いのかもしれない。

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