今現代の社会問題となっている高齢化、そして認知症の問題など、いずれ「老い」を経験するであろう私たちにとっては、これらは決して避けては通れない問題です。「老い」を改めて考えた時、介護する側、そしてそれを支える周りにとって何が必要か考えたことはありますか?

高齢化社会が進む日本で、果たしてどれだけ多くの人が自分の両親の老いを身近に経験し、理解しているでしょうか。親が老いるということは、それを受け入れなければいけない自分がいるということ。

健康に老いていくのが誰でも一番でしょう。ところが日本では高齢者による認知症の増加が著しいと言われています。

厚生労働省の2015年1月の発表によると、日本の認知症患者数は2012年時点で約462万人、65歳以上の高齢者の約7人に1人と推計されています。
認知症の前段階とされる「軽度認知障害(MCI: mild cognitive impairment)」と推計される約400万人を合わせると、高齢者の約4人に1人が認知症あるいはその予備群ということになります。
医療機関を受診して認知症と診断された人だけでもこの数字ですから、症状はすでに出ているのにまだ受診していない人も含めると、患者数はもっと増えていくと考えられます。

出典 http://www.ninchisho-forum.com

認知症といってもレベルも症状も様々ですが、普段の生活に支障をきたすとなると介護が必須。実は筆者の父も認知症を患っています。父の場合はパーキンソン病と認知症が重なった病気で、介護なしでは今は生活はできません。

パーキンソン病の主な症状は「手足がふるえる(振戦)」「筋肉がこわばる(筋固縮)」「動きが遅い(無動)」「バランスがとりづらい(姿勢反射障害)」の4つです。
その他にも、トイレが近くなったり、よく眠れないなどの症状もみられます。これらの症状は、すべての患者さんに必ずみられるわけではなく、病気の程度によっても変わってきます。

出典 http://www.parkinson.gr.jp

元々父が急激に弱くなったのは、大腸がんがきっかけでした。幸い早期発見だったので手術後は回復。今は定期健診を受けるだけですが、これまで退職し、山登りや散歩を趣味としていた父は、がんになってからめっきり弱くなってしまったのです。

それは身体的にも精神的にも急激な変化でした。体調がもとに戻るまでは安静にしていなければいけないということだったので、好きな山登りにも行かず家でじっとしていることが多くなった父。そして暫くして「なにかおかしい」と気付いた母が父を病院に連れて行くと「認知症」と診断されたのです。

MRI検査の結果、簡単に言うと「頭が空いている」と言われ認知症と診断。その後、投薬治療を始めた父。ところが一向に良くはならず悪化する一方でした。そしてある日、倒れて緊急搬送された先の病院で別の医師により「パーキンソン病ではないか」との診断を受けたのです。

医学の知識がない素人の母としては、自分の夫が「認知症」と判断されその後「パーキンソン病」と診断を受けたことに困惑。今まで処方された薬が効かないのは当然ではないのか?という疑問に行き当たったのです。神経内科の医師に確認したところ「この方の場合は認知症とパーキンソン病の両方にあてはまる」という言葉が返って来て愕然とした母。

障がい者認定されるまでの月日は長かった

Licensed by gettyimages ®

父は、急激に人生の坂を転がり落ちてしまいました。筆者が一年前に里帰りした時には孫と一緒に外へ出て、ゆっくりではあるけれど歩くことも可能だった父。ところが症状が急速に悪化し一年後には介護なしでは生活できないほどになってしまったのです。

デイケアサービスにもお世話になったり、病院へ検査に行ったりとする間に、父のために介護手当と障がい者手帳を申請した母。老いが急激に訪れた一方で、市役所などの審査、手続きに予想外の時間がかかってしまいました。

そしてやっと介護保険が認められることになったのですが、日本の介護保険は規定が厳しく、正直介護にかかる費用を考えるとまだまだ行き届いていないというのが現実でしょう。

筆者は海外に住んでいるため、正直なところ急に何かあった時でもすぐに駆け付けられる状況ではありません。だからこそ、日々急速に老いていく両親を見ていて毎日胸が詰まる思いをしています。

母一人が介護を続けていて、この先どうなるかわからないという不安な状況が続いていたのですが、去年11月に父が倒れたのです。原因は急性肺炎とくも膜下出血でした。そのことを母に聞き急きょ家族で帰国。もうダメかも知れないと思いながら父に会った時に、遠くにいる自分の不甲斐なさを痛感しました。

奇跡的に一命を取り留めた父は3か月の入院後、母に連れられて帰宅することに。ところが入院前の父と比べて更に状況が悪化していた父の介護は、高齢者である母には辛く「老々介護」の厳しさを実感せずにはいられません。

父が入院前も、トイレや食事問題など懸命に介護をしてきた母。週に何度かはデイサービスに頼ってはいたものの睡眠を取る暇もないほどハードな介護に、母は憔悴しきっていました。

そして今、緊急入院のためにほんの少しリハビリを休んでしまった父は一から始めなければいけない身体になってしまったのです。入院先の病院ではなんとか車椅子に乗ることもでき、支えてもらいながら少し歩くこともできましたが、自宅での介護となると更に困難を極めます。

国の決まりにより、3か月以上同じ病院での入院ができないために帰宅せざるを得なかった父。母は今、この先の介護をどうするかという葛藤の中にいます。

介護施設に預けっ放しにするには資金の問題もあり、またリハビリに力を入れている病院に転院させるにも自宅から車で1時間とかかり、距離的にも物理的にも「理想」の介護の形がみつからないままどんどん溜まっていく母のストレス…。

老々介護は、介護する側の体力の限界もあり先に倒れてしまうかもしれないという最悪のケースもあります。認知症とパーキンソン病を患う父は、昼間寝て夜間起きるというリズムが出来上がっているようで、夜中の俳諧こそしないものの何度もトイレに行きたがる父の介護で睡眠が十分取れない母からすれば、昼も夜も疲れっ放しという状態。

食事をさせるだけでも1時間半は余裕でかかってしまうために、今母は完全に「介護の人」となっています。父の退院後、「妻」である立場から更に病状が悪化した「介護人」のケアに明け暮れる日々の母のストレスは相当なもの。

「反応がほしい。」認知症がどういう症状か理解していないはずはないのについ漏らしてしまった母の本音。要る、要らないなどの返事をしないだけではなく、ただじっと座って気付けば居眠り…そんな父を見て「反応ぐらいできるのでは」とついイライラしてしまう母。

反応を期待できないとわかってはいても、それを認めたくない母もいるのかも知れません。「ありがとうの言葉もない」「何を言っても反応もないのでどうしたらいいのか判断できない」そんな言葉を聞いて、遠くにいる筆者は辛い気持ちを隠せません。母も父も可哀相と感じ、両親のために何もできない役立たずの自分…。

認知症を知ること

Licensed by gettyimages ®

介護をしている人からすれば認知症を100%理解しているつもりでも、実はそうではないのではないかと思った筆者。本を読むことを勧めれば「そんな暇がどこにあると思うの⁉」と母に返されて「私にいったい何ができるのだろうか」と苦悩の日々を筆者も過ごしています。

イギリスでは、認知症に対するサポート団体が充実。同じ認知症の介護をしている人たちのコミュニティがあり、日々の辛さも経験者同士が話すことでほんの少しでも楽になれることは実はとても大切なのではと思う筆者。

実際に介護をしている立場の母からすれば、そんな時間さえもないというのが厳しい現実なのかも知れません。でも医師の勧めで投薬ばかりをしていても、果たして父は良くならないのではないか、母が先に倒れてしまうのではないかと不安になってしまいます。

認知症の介護に見返りを求めてはいけないとわかっているはずの母でも、つい繰り返し漏らしてしまう本音。それを聞くことしかできない筆者。自分の親が老いるということはこういうことなのかと実感している毎日です。

大切な両親が大変な状況にあるので、実は近い将来移住をすることも考えている筆者家族ですが、今筆者にできることは何なのかと毎日悩まずにはいられません。そんな毎日の中で、兵庫県尼崎市の医師、長尾和宏さんが認知症に関する著書を出版しYouTubeでは「親が老いるということ」はどういうことかというメッセージを公開しています。

出典 YouTube

老いるということ
親が老いていくということ
それは、何度も同じ話をすること
何度も同じことを訊いては、
あなたを苛々させるということ

親が老いていくということ
それは、自信がなくなるということ
自信がなくなるけど、
子供にだけは強がっていたいということ

老いるということ
親が年老いていくということ
それは、言葉が咄嗟に出なくなってくるということ
言葉が出なくなっても
心の中に想いはちゃんとあるということ

出典 https://www.youtube.com

筆者のように認知症を抱えている人や、実際に認知症の介護をされている方、そうでない方にも是非見て頂きたい動画です。認知症は誰にでも起こり得ること。老いが来れば直面しなければいけない症状の一つでもあるのです。

患者数が増加しているとはいえ、日本の社会の認知症に対する認識はサポート団体が多い欧米に比べてまだまだ低いと思う筆者。もっと認知症を介護する人たちに十分なサポートを与えられるような社会になってほしいと願う一方で、老いてゆく親の心を知ることはやはり子供としての義務なのだと強く実感しています。

この記事を書いたユーザー

Mayo このユーザーの他の記事を見る

公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

得意ジャンル
  • 話題
  • 社会問題
  • 動物
  • 海外旅行
  • 育児
  • テレビ
  • カルチャー
  • 美容、健康
  • ファッション
  • 感動
  • コラム
  • おもしろ

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス