記事提供:カラパイア

上の写真のような、白い鳥の嘴のような仮面を見たことがあるだろうか。これは、イル・メディコ・デッラ・ペステ、つまりペスト専門の医師が、17世紀に実際に身につけていた防護マスクのレプリカである。

医師たちは、こうしたマスクをつけ、黒いコートを着て、ペストの蔓延する町に分け入って患者の治療に当たっていた。効果のほどはかなり怪しいが、当時の科学的根拠に基づいている装備だったのだ。

この防護服一式について、医師のシャルル・ド・ロルムがルイ13世に提出した報告書が残っている。

鼻の部分は鳥の長い嘴のような形になっていて、鼻腔近くにそれぞれ、ひとつずつふたつの穴があいていて、問題なく呼吸できる。

嘴の内部には、香水をつけたり、いい香りのするハーブなどを詰めて、呼吸のたびにいい香りを吸い込むことができる。

コートの下には、腰まわりから続くモロッコ革(ヤギの革)のブーツを履き、柔らかな革でできた半袖ブラウスの裾をそこにたくし込む。

帽子と手袋も同じ革で作り、目のまわりにはメガネの絵が描いてある。

ロルムが発明したといわれるこのペスト防護服に関する最古の詳細な記述は1619年に記されたものだ。

まず、広いつばの帽子。ちなみに当時、帽子は公の職業に就いている人は必ず被るものだった。

弁護士にはカツラ、聖職者にもさまざまな種類のかぶりものがあったし、医者もなんらかの帽子をかぶっていた。かぶりものが必須アイテムだった理由は、頭を覆っていれば病気にならないとされていたせいだ。

鳥の嘴のようなマスクは、何世紀も前からあったかもしれないが、これはいわゆるガスマスクのようなものだ。

長い嘴の中に香水やハーブを詰めて、瘴気(悪い空気)を追い出すという理屈のもとに考案された。

これは、病気は毒を含んだ悪い空気、瘴気が媒介するという当時の考えに基づいている。

瘴気は腐敗によって発生し、その悪臭で存在がわかる。嫌な空気が病気を運ぶのだから、いいにおいによって、空気を浄化すればいいという論理は確かに理に適っている。

また、目のまわりに黒い円を描き、それが黒い曲線とつながっている。これは、実際に当時の医師がマスクの上につけていたメガネを表わしている。

そして、このマスクには医師たちが邪悪な瘴気から身を守るのに役立つデザインがほどこされていたという。

黒いロングコートは、マスクの中にしっかりたくしこまれていて、手袋やブーツ、革のアンサンブルは、医者の皮膚が病原体に触れるのを防ぐよう作られていた。

汚れた空気が諸悪の根源だとされていたものの、こうした防護服が病気を防ぐのに、多少なりとも役立ったのは確かだろう。さらに全体が蝋でコーティングされていたため、液体が染み込むこともなかったのだ。

さらに医者は木の杖を持ち、感染者との身体接触を最小限に抑えていた。現代の感覚ではこのいでたちはむしろ死神のイメージに近いかもしれないが、17世紀の詩の中で、彼らは善意の力を持つ者とみなされていた。

これは当時の人々の間でもかなり特殊な恰好だったらしく、疫病がはびこる地域に登場した医者の姿を見た者は皆仰天したそうだ。

彼らの帽子やコートは見たこともないもので、黒っぽく、すべて油布でできている。帽子にはメガネがついていて、長い嘴には、解毒剤が仕込まれている。

汚れた空気が充満していても、なんの害もないだろうと、医師を不安にさせない。彼らは、行く先々で気高い医療処置を施してくれるに違いない。

出典 http://karapaia.livedoor.biz

とはいえ、やはりそれを目にした人々に植えつけられたのは、効力のある防護服を着て、気高い治療活動に精を出している医師というイメージのみに留まらなかった。

疫病は死を意味する。黒い服を着た医者たちが、長い嘴が突き出したマスクをつけ、目を覆ってそこらを歩き回っていたら、誰でも彼らを死と結びつけるだろう。

このマスクと衣装は、コンメディア・デラルテ(16~18世紀のイタリアの即興喜劇)の登場人物のペスト医師と結びつけられるようになった。

白いマスクはヴェネチアで使われるようになり、カーニバルでよく見られるようになった。

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス