中東出身でヴィジュアル・アーティストとして活動されているSaint Hoaxさん。ディズニーキャラクターを用いたDV注意喚起ポスターや拒食症注意喚起ポスターなど、社会問題を独自の方法で表現してきました。

そんなSaint Hoaxさんは、2011年より始まったシリアの内戦によって、現在もなお460万人ものシリアの人々が難民となって不自由な暮らしを余儀なくされている状況を見て、中東出身のアーティストとして、自分が何かできないのか、するべきではないのかと考えました。そこで、シリア難民の援助を行うNGO団体のMALAAK、クリエイティブスタジオ・PLASTIK STUDIOと共に“Once Upon a War”というプロジェクトを立ち上げました。

シリアのアーティストとして自分の国に恩返しを

“Once Upon a War”は、シリア難民の女の子達との出会いがきっかけだったのだそうです。それはある難民キャンプで、PLASTIK STUDIOSと共に仮装パーティーを企画し、子供達に大好きなディズニープリンセスの姿にドレスアップしてあげた時の事です。

プリンセスに変身した自分の姿を見た彼女達は、嬉しそうに微笑み、そして自分の夢を語り始めました。

「夢を見る事」が「叶わぬ夢」になってしまっていた子供達

彼女達は、幼い子供達がごく当たり前にしている夢を見る事、その夢を語る事、そんな機会を得る事さえ出来ずにいたのです。

出典 https://www.instagram.com

「美女と野獣」のドレスが一番のお気に入りだったという6歳のAyaちゃん。ベルのイラストを見ながら同じ髪型を作り、その姿で写真を撮りました。そんな彼女の夢は女優になる事。カメラの前に立つ事が大好きだった彼女の為に、よりたくさんの写真を撮ったそうです。

出典 https://www.instagram.com

12歳のBayanちゃんは「眠れる森の美女」のピンク色のドレスを選びました。その理由は、彼女が昔持っていた大切なピンクのドレスを思い出させたから。彼女は3年前に、家族と共に自宅を出ました。そしてその時、すべてをその家に残してきたのです。

BayanちゃんとRaghadちゃんとMonaちゃんは、3年前にこのキャンプで知り合った大切な友人です。そして彼女達の共通の夢は「教師になる事」

出典 https://www.instagram.com

弁護士、教師、詩人、エンジニア、パイロット、映画スター。彼女は本当にたくさんの大きな夢を持っていました。しかしその夢は、今、この小さな胸の中に閉じ込められてしまっています。

出典 https://www.instagram.com

16歳のMaramさんは「シンデレラ」のドレスを選びました。明るい未来を信じているというMaramさん。この悲劇的ともいえる経験の中からでも、良い事、素晴らしい事を見つけて暮らしているのだそうです。まさにシンデレラ。本物のプリンススですね。小さな子供が大好きで、難民キャンプで子供達の世話をしているという彼女の夢は「看護師になる事」

出典 https://www.instagram.com

20歳のManarさんが初めて読んだ本だった「眠れる森の美女」それ以来、ずっと彼女のお気に入りの1冊なのだそうです。そんな彼女の夢は「医者になる事」

同じく20歳のWouroudさんは「白雪姫」のドレスを選びました。彼女の夢は「社会科学者になる事」

2人は、2年前にこのキャンプで知り合い、まるで双子の様にお互いが大切な存在になったそうです。「この友情は戦争から得る事のできた最高のもの」と言える2人の、心の強さこそ、真のプリンセスといえるでしょう。

Once Upon a Warとは

Saint Hoaxさんは「とても残念な事ですが、シリア難民がテロと関連付けられてしまうという場面があります。私は、世の中の人々が持っている”シリア難民に対するステレオタイプのイメージ”を払拭したいのです。そして、難民キャンプにいるこの子供達への教育の必要性について、広く知って欲しいと考えました」と語っています。

この戦争により、住んでいた家や、それまでの生活環境、そして本来彼女達が受けるはずであった教育、様々なものが彼女達から奪われてしまいました。そんな彼女たちが、性的暴力や、望まない妊娠などを避ける為には、教育を受ける機会がある事、これがとても重要な事なのです。

シリア難民の少女の24%が、18歳になるまでに結婚しているのだそうです。これは生活に困窮した親達には子供を養う経済力がなく、娘に夫を見つける以外に選択肢がないことが多いことが主な原因であると言われています。その結婚が、娘を危険な目に合わせる可能性があり、教育を受けたり社会に出る機会を奪うことになったとしても、現実的に他に方法がない場合が多いのです。

しかし、実際には夫からの暴力や性的暴行を受けたり、妊娠・出産に関連する合併症が、15〜19歳の少女達の主要な死亡原因となっているという現実もまた目を背けてはいけないでしょう。

シリアのプリンセス達の現実と私たちにできる事

国際女性デー(3月8日)にYouTubeに投稿された動画や、Saint HoaxさんのInstagramに投稿された写真には、レバノンの難民キャンプで暮らすシリア難民の女の子たちが、プリンセスのドレスに身を包み登場しています。

出典 YouTube

動画では「Que sera, sera.」の曲をバックに嬉しそうにドレス姿で微笑む少女達の姿が映し出され、しかし次のシーンではその背景がガラガラという音と共に開くと、そこには彼女達の現実の暮らしが映し出されます。そのギャップに、息が詰まり胸が苦しくなってしまいますが、これが彼女達の現実なのです。

「Que sera, sera.」は日本語に訳すと「なるようになる」「なるがまま」という意味ですが、決して楽観主義という意味ではありません。今、自分の前にある現実と、そしてそこから未来に向かって行動しようとする気持ち、この2つを受け入れ進む事で、それ以外は自然の「なるがままに」という意味。彼女達の現実を受け入れ、そして明るい未来に向かって進むべき道を作ってゆくのは、周りにいる私たちなのではないでしょうか。

NGO団体の「MALAAK」では、そんな彼女達のための援助と始めとする、シリアの子供達への寄付を受け付けています。この写真や動画に感じるものがあったら、ぜひ、一度、こちらの公式HPも覗いてみてください。

この記事を書いたユーザー

Mucoco このユーザーの他の記事を見る

愛犬と一緒に、海を眺めながら暮らしています。

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス