誰かの役に立つ、誰かを救うということに対して見返りを求めてしている人は単なる偽善者ではないでしょうか。本物の親切は決して報酬の対象にはならないと筆者は思います。

ところがこのほど、どっちもどっちというなんだか情けない出来事がイギリスで起こりました。ロンドンのルートン空港からギリシャのテッサロニキへ飛行中の格安航空会社「easyJet(イージージェット)」にて、高齢者の女性が体調を崩すという事態が発生。

偶然自身のホリデーで乗り合わせていたエドワード・サウスホールさん。彼はイギリスの診療所(GP)で一般診療をしていた元医師でした。女性が呼吸困難に陥り、ひょっとしたら飛行機を引き返さなければならない可能性もあると耳にしたサウスホールさんは、女性の診察をオファー。

救命用具を乗務員に要求し、すぐに対応に望んだサウスホールさん。1時間以上に渡り、今にも意識を失いそうな70代らしき女性の脈と血圧を測り呼吸を確認。ようやく女性の状態が落ち着いた時、サウスホールさんは自分の席へ戻りコーヒーとキットカットをリクエスト。ところが、この応対をした乗務員は信じられないことを口にしたのです。

「コーヒーは無料で差し上げますがキットカットは料金を頂きます。」

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咄嗟の対応で機内の乗客を救ったサウスホールさんに対し、客室乗務員の1人が「コーヒーは無料でサービスできますが、キットカットは1.2ポンド(約196円)頂かなければいけません。」と言ったのです。

通常、スーパーなどで売られている普通サイズのキットカットは55ペンス(約90円)。easyJetは格安航空券を提供しているために、チェックイン時の荷物や機内でのサービスも全て有料。そして機内で販売されているスナックなどは当然地上よりもコストが高いのでキットカット一つにしても約100円も割高。

不満を申し立てたサウスホールさん

出典 http://metro.co.uk

キットカット代を払えと言われてその場ではおとなしく代金を支払ったものの、内心立腹状態だったサウスホールさん。飛行機を降りた後にカウンターで事情を話し苦情を申し立てるとスタッフは「荷物代金を無料にする」とオファー。

「何が起こったかを真剣に受け止めていない」と感じたサウスホールさんは、easyJet本社に苦情を申し立てました。フライト中の緊急事態が起きた場合、飛行機が途中でどこかの空港に緊急着陸しなければならないとなれば臨時の空港使用料、余分のフライトの燃料など日本円で330万円~2600万円の費用がかかると言われています。

「自分はその危険を回避し、女性だけでなく航空会社の余分な出費も防いだ」と豪語するサウスホールさんは、キットカットの代金を支払わされたばかりでなく「報酬」としてコーヒーと荷物代だけが無料になったことに腹を立て「こういう状況なら、無料のフライトをオファーしても罰は当たらないだろう」と苦情を言ったのです。

「自分が救った女性もその娘らしき女性も、私の対応にとても喜んで感謝していました。ところが、easyJetは善意のジェスチャーが全く見られず失望しました。」と言うサウスホールさん。

親切行為をはき違えているのでは?

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わざわざeasyJetに「私はキットカットにお金を払ったことに文句を言ってるんじゃない。」と言った上で実は更なる報酬(無料のフライト)を求めているサウスホールさんに対し、親切行為をはき違えているのでは?と思う筆者。

確かにeasyJet側も、そんな状況だったにも関わらずキットカット一つでさえ無料でサービスできないという無神経さは呆れます。でもサウスホールさんも元医師という立場でありながら、誰かの命を救ったことに対して「報酬」を求めるのはどうでしょうか。

サウスホールさんがした対応は、フライトを無料でオファーしてもらうほど価値があったことなのかも知れません。でもそれを医師本人が苦情するというのは親切で誰かを救ったことにはならないのではないでしょうか。

機内に医療関係者がいた場合、万が一のことが起これば彼らの協力が必要なのは彼ら自身も認識しているはず。気が利かずキットカット代を請求した航空会社に腹を立てる気持ちもわからなくもないですが、元医師である立場上、やはり緊急事態に人を救うという行為は見返りを求めるものであってはならないと筆者は思うのです。

easyJet側のコメントは…

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サウスホールさんからの苦情を受けたeasyJetは「今回、緊急着陸を視野には入れていませんでした。でもサウスホール氏の対応に深く感謝しているのは事実。その時のオファーが至らなかったことで彼の気分を不快にさせてしまったことは申し訳ない。改めて無料のフライトをオファーさせて頂きました。」とコメント。

サウスホールさんが何度も苦情を申し出たことで、結局は無料のフライトをオファーすることになった航空会社。「善意のジェスチャー」をさせてもらった、と言っていますが「言われたからオファーした」だけのニュアンスもぬぐえません。

そしてそんな状況でオファーしてもらった無料フライトを堂々と今度のホリデーに使うサウスホールさんに対してもなんだかな~と悲しい気持ちに。どっちもどっちという今回の出来事。改めて「親切行為とはなにか」を考えさせられますね。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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