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電通のCMプランナー・コピーライターの東畑幸多さんの、TEDxNagoyaUでのプレゼンテーション動画がアップされていた。

広告業界の人のみならず多くの人に刺さる言葉がたくさん溢れていてとっても感動したので、書き起こしてみる。(ちなみに東畑さん、大学の同じキャンパスの出身だった。知らなかった…)

※見出しを付けたりハイライトしたりしようと思ったけど、ほとんどそうなってしまうのであえてフラットな文面で載せます。もちろんこの書き起こしだけでなく、動画もぜひ見てみることをおすすめします。

プレゼンテーション動画(17分28秒)

出典 YouTube

書き起こし

皆さんこんにちは。今日はですね、CMの話ではなくてですね、アングル・視点の話を今日はしようと思います。

僕はずっと広告クリエイターとして、アイディアを考える仕事をずーっとやってきたんですね。ひとつ発見したことがあるんですけども、それってのは、人はすごい優れたアイディアに出会ったときに、必ずある一言が心に浮かぶんですね。

その一言っていうのはなんなのかっていうと、「その手があったか」って一言が必ず心に浮かぶんですよ。

「なんでそれに気づかなかったんだろう」「同じものを見ていたのになんでそれに気づかなかったんだろう」って、優れたアイディアであればあるほど、そういった感覚に襲われるんですね。

同じものを見ているのに、ちょっとした違いでアイディアが激しく飛躍するっていう、そのちょっとした視点の違いを“アナザーアングル”と言います。

これは僕が4日前に名付けたばっかりで、このTEDで喋るように名付けたんですけども。

僕が考えるアナザーアングルってことを獲得すると、例えば違った世界が見えてきたり、自分が違うものに感じたり、新しいチャンスが見えてくる、みたいなそういう話を今日はしようと思います。

ちょっと広告業界で有名な理論があるんですけども、「石切り場理論」っていうのがあるんですね。

それは、例えば石を切る仕事があると。黙って石を切らせていると、それはただの奴隷の労働みたいな形で、とっても苦しい作業になるんですけども、例えばその石が教会になるってことを知ると、ちょっと石を切る意味が少し変わってくるんですね。

さらに、例えば教会に祈りに来る人をイマジネーションさせられると、それは同じ石を切るって行為が違う意味を持ってくるってことがあるんですね。

それがよく言われる言葉で“ビジョン”って言葉で表されるんですけども、ビジョンってのも実は視点を、今まで見てなかったゴールって景色を見せることで、人の気持ちを変えるって力があるんですね。

例えば現実世界で言うと、ディズニーランドってあるじゃないですか。ディズニーランドってホスピタリティが物凄いあるところで、サービスのクオリティも物凄く高いですよね。

彼らはアルバイト・スタッフのことを「キャスト」って呼んでるんですよね。例えば掃除をする人も、アルバイトの人も、ミッキーも、同じ全員出演者だと。

バックヤードの裏方ではなくて表に出る人なんだっていうことを、概念を与えることで彼らの仕事の意味・掃除の意味とかが変わってくるってことで、サービスのクオリティが上がったりするんですね。

同じように、これはスティーブ・ジョブズの有名な言葉なんですけども、彼はアップルのエンジニアに対して、「僕たちはエンジニアじゃなくてアーティストなんだ」っていう話をしてるんですね。

それは工業製品を作るのではなくて、人のイマジネーションを掻き立てて、世界を変える作品を作る、我々は集団なんだっていう規定を置くことで、イノベーティブな商品をいっぱい作ってきたと。

アングルを変える・視点が変わると、見えてくる世界が今まで同じものを見てたはずが、世界が変わって見えるんですね。

そうすると変わって見えたことで、人の行動のやり方が変わってくるってことがあります。それがビジョンの力なんですけども、そういう概念っていうのは昔の結構日本にも、実はたくさんあったんですね。

いきなり「念仏」と書いたんですけども、これはあの南無阿弥陀仏ってあの念仏のことなんですけども。

この話をみうらじゅんさんの本(※)で勉強したんで、正しいかはちょっと微妙なところがあるんですけども、

念仏を唱えることの意味ってのは実は人生の物凄い辛い局面に立ったときにですね、「そこがいいんじゃない」って無理やり声に出して言ってみるってことなんですね。

※みうらじゅんの『マイ仏教』という本だと思われる。

例えば「人生思うようにいかない」。でも「そこがいいんじゃない」って言うと、確かにそんな気になってくるというか。

例えば「命は永遠に続かない。でもそこがいいんじゃない」とか、「恋愛は思うようにいかない。でもそこがいいんじゃない」っていう、

そういうことを言ってみることに近いっていう話をしていて、ぜひこれ皆さんも、何か辛いことがあったときに呟いてみると声に出してみると、少し脳みそが騙されると思うんですけども。

これは念仏が生まれた時代背景っていうのが、飢饉があったり貧困があったり病気があったり戦争があったりって、生きてく中で物凄いとても苦しい時代背景があるんですね。

そんな中で、とはいえ現実を受け止めて前を向かなきゃいけない庶民の人達が、生きる知恵としてソリューションとして、こういう念仏ってものを発明されたりですとか。

「わび・さび」っていうのもまた似たような概念なんですけども。

千利休をきっと思い出すと思うんですけど、「わび・さび」も、例えば応仁の乱から戦国時代までずーっと争いをしてた日本ってのは荒廃しきってたわけなんですね。

その中で物質的に貧しい時代ってのが続いたんです。

ある権力者以外は、新しいものや美しいものを手に入れられない時代が続いた中で、例えば古くなっていく・錆びていくものに対して美を見つけようとか、不完全なもの・欠けているものを美しいって思おうっていう概念を提唱したんですね。

それはそのものがないっていう時代の中で豊かに生きていくための生活の知恵であって、それもある種のソリューションなんですよね。

アングルを変えるヒントっていうのは、実は必ず課題の中にあるんですよ。課題の中に、アイディアを考えるヒントがあると。

これは身近な例で考えると今の話を、英会話教室を僕の友達がやってたんですね、ビジネスマン向けの。

とはいえ大手には料金体系で絶対敵わないので、彼がやったことっていうのは、日本に駐在する外国人の奥さんにやる日本語教室ってのを始めたんですね。

それは英語っていうスキルを使うのは変わらないんですけども、視点を変えることで彼は新しいビジネスを生み出していたり。

例えば旭山動物園ってのはとても有名だと思うんですけども、北海道にある動物園でかつては凄く人が来なくて潰れかけたんですね。

その理由は2つあって、1個は人気・ヒーローの動物がいなかったっていうことと、もう1個は札幌から結構遠くていわゆる僻地にあった・場所がよくなかったってことがあって、潰れそうになったと。

そのとき彼らが取った行動っていうのは、「行動展示」っていう新しい視点を動物園に入れたんですね。

行動展示ってのは、普通動物園ってのは檻があってその中に動物を入れてみんなで見るってのが動物園だったんですけども、彼らが作ったのは「動物の動きに合わせた檻を作る」ってことをしたんですね。

つまり動物を見せるんじゃなくて、動物の動く姿を見せる動物園っていうことを作って、トランスフォームしたんですけども、動物ってやっぱ「動く物」って書くんで動いてる姿を見る方が楽しいんですよね。それで今の大ヒットがあるんですけども。

これは実は上野動物園にはできないソリューションにになっているんですね。それは行動展示ってのは動物の動きに合わせて檻を作るので、物凄く広い土地が要るんですよね。

なので、旭川っていうちょっと僻地にある、ただ土地だけはあるってことが、実は地の利になってああいうソリューションが生まれているというような背景があります。

課題っていうのは、アイディアだったりソリューションだったりイマジネーションを生み出す原動力になる、っていうのがあるんですね。

どんどん行きますけど、例えばですけど「老眼鏡」。これは凄く僕、大っ嫌いな名前でですね。

僕も38でそろそろいつかかける日が来るんですけども、かけたときってやっぱショックを受けると思うんですよね、「なんか老眼鏡をかける歳になっちゃったよ」って。

こういうのも例えば「リーディンググラス」と呼んでみようよと。「読書するときの眼鏡なんだ」みたいに呼ぶとかける人の気持ちが変わるはずなんですよ。

逆に言うと「まだリーディンググラス持ってないんだ?」っていうなんか、知的なオシャレアイテムになる可能性もあったりですとか。

例えば「介護ベッド」も、これはやっぱ寝る人の気持ちを考えたときに、「介護ベッドにお世話になる」って心理的に辛い部分があるんですよね。

だから例えば「アシストベッド」って呼んでみようよとか。

僕は首にヘルニアがあって朝起きるのが結構辛いんですけども、例えば介護ベッドに起き上がる機能があったら、それはそれで凄く便利だと思うんですね。

ああいった機能を「介護」って呼ばずに高機能なベッドとして売ったら、もしかしたらターゲットが拡がるかもしれないとか、

そういう寝る人の気持ちが変わるかもしれないみたいな形で、アングルを変えるとかアイディアを考えるヒントってのは課題の中に潜んでるという。

もう1個アングルを探すヒントなんですけども、それはものの良さっていうのは必ず長所と短所でできているんですね、光と闇の関係性で。

人間ってのは悪いところばっかり目に付く生き物なんですね。でも影があるってことは、その影をずっと見続けた先には必ず光があるんですよ。逆転できる何かがあるんですね。

これは明治大学の斎藤教授(※)って人が書いた本で、世界一押しが弱い日本人みたいなタイトルだったんですけども、ざっくり言うと、日本人っていうのはフィジカルが遺伝子的に一番弱い民族だ、みたいなことを書いてるんですね。

※『声に出して読みたい日本語』『雑談力が上がる話し方』等でも有名な齋藤孝教授のこと。

※正式な書名は『日本人は、なぜ世界一押しが弱いのか?

例えば、人類が生まれたアフリカで生まれた黒人の方が一番フィジカルが強くて、次に白人の人。アジアの中でも中国や韓国の人は、日本人よりも平均身長とかが凄く高いんですよ。

なので彼の仮説で言うと、争い事が嫌いでフィジカルが弱かった人たちが逃げて逃げて最後に行き着いたのが東の島なんじゃないか、っていうちょっと悲しい仮説なんですけども。

ただこの間のワールドカップの予選とかを見てると、確かにフィジカルの弱さっていうのはどうしても感じるんですよね。

でもそのフィジカルの弱さっていうのも実は強みに変えることができて、例えば今パリでは『超熟』(※)っていう凄い柔らかいパンが大ヒットしてるんですよ。

フランス人はフランスパンってのは物凄い固いんですけど、日本人はやっぱあれはきついってことで凄い柔らかいものを作ったんですよね。

人間ってのはやっぱ易きに流れるってところがあって、一回あのフワッフワ感を堪能すると、もう戻れない人も結構出てくるんですよ。

※『超熟』を作っている『敷島製パン株式会社』の本社は名古屋市内なので、イベントの開催場所に合わせてあえてこの例を挙げていると考えられる。こういう配慮は本当に素晴らしいと思う。

ウォシュレットなんかも同じ発明で、あれはマドンナが来日するときに「ウォシュレットに会いに来た」って言うくらいファンも居たりするんですけども。

お尻を洗うってのも画期的なんですけど、何が凄いって言うと、「便座を温めよう」っていうそれはもう繊細なフィジカルの感覚を持ってないと、ああいう発想っていうのは思いつかないんですよね。

多分白人の方は、便座を温めようなんて思ったことないと思うんですよ。

でも、イノベーションってのはテクノロジーから生まれるものなんですけど、日本はもちろんテクノロジーも強いんですけど、そういう感覚・フィジカル、人間中心のイノベーションってのもあるんですよね。

それはパンが柔らかくする・ウォシュレットみたいなものがあるんですけど、そういう才能が凄い日本人にはあると思っています。短所の裏側は長所になるんですね。

ここからが僕が今日一番話したかったことなんですけど、僕は今日ここに来たのは、皆さんの未来に対するアングルを変えてみたいなと思って、今日この資料をわざわざ用意したんです。

今未来ってのを考えるときに、日本ってのはやっぱりどうしても閉塞感があったり、漠然とした不安感があるんですよね。

今日本に希望があるって人はちょっと大丈夫か?みたいな感じが僕もして、やっぱ直感的に今この国に未来があるなって言いづらいんですね。

その原因ってのが、少子化・高齢化・エネルギーとかって、課題が山積みなんですよ。「世界有数の課題先進国」なんですね、日本というのは。

でも、これはまたチャンスと捉えることもやっぱできて。っていうのは今日本が直面している課題っていうのは、必ずいつか世界が直面する課題なんですね。

世界の誰よりも先に、その課題にトライアル出来る・チャレンジ出来るってことは、実は凄いアドバンテージになる可能性があるんです。

環境問題の課題でトヨタ自動車がプリウスっていうハイブリッド車を作ったように、

例えば誰も向き合ったことのない課題に向き合ったときに、日本の新しいアイディアとかソリューションとかイノベーションが生まれてくるきっかけになる可能性がある、っていう風に僕は思っています。

課題こそ日本の資源である、と思ったほうがいいと思うんですね。

さらに2020年のオリンピックが始まるんですよ。否応なく、6年後に日本ってのは異常に世界から注目を受けるタイミングがやってくるんですね。

そのタイミングであらゆる課題に対するソリューションをプレゼンテーションできたら、日本の未来ってちょっと変わっていくと思うんですね。ソリューション先進国になる可能性も実はあるんです。

そのときに一番必要なものがあるんですけども、それっていうのが、「考える人」ですね。そして、「挑戦する人」ってのがいないと、この問題は解決していかないんですね。

僕はTEDに凄い期待しているのは、こんな日曜日にわざわざこのプレゼンを聞きに来るとかユーストで見るとかサイトで見るって人は、やっぱ意識は僕は凄い高い人だと思ってるんですね。

そういう人達に、未来を創る側に行ってほしいなと思って、僕はもうコピーライターなので、今日皆さんのためにスローガンを書いてきました。

そのスローガンがこれです。

※ちょっと笑っていいところだと思うんだけど、会場ではまったく反応なし。

“Think different.&JUST DO IT.”っていう、これは僕のコピーでもなんでもなくて、“Think different.”っていうのはアップルの有名なコピー、“JUST DO IT.”っていうのはナイキの有名なコピーなんですけども、

この2つを合わせた精神っていうのが多分これからの日本にとって凄く大事だと思ってるんですね。

それは「人と違うことを考える」ってことと「さぁすぐやろう」っていうその2つの気持ちを持ってる人が、どんだけ日本に増えるかっていうことがこれからの日本の未来を変えていくと思っていて、

できれば皆さんにこのスローガンが似合う人になってほしいなという風に思っています。

ちょっとまた別のアングルのことを話したいんですけども、たまたま僕TED名古屋のスタッフの方にですね、スピーカーの人は今日朝早い集合なので「宿泊しますか?」って聞かれて、僕は「宿泊します」って答えたんですね。

ちょっと前日に名古屋に入って、味噌カツ食べて友達に会おうみたいなことでワクワクしてたんですけども、取っていただいたホテルが三河安城(※)だったんですよ。1個手前の駅だったんですね。

※ちょうどこの駅ができた近くに住んでた。当時の駅前には本当に何もなかったけど、今は栄えたのかなー?ちなみに名古屋駅までは在来線で30分くらいかかる。

「嘘だろ…」みたいな「じゃあ当日来るよ」みたいな一瞬思ったんですけど、さすがにそれを一生懸命やっている学生には言えなくて。

でも、例えば人生のアングルを変えて見てみるってことが大事で、それは今日昨日で言えばすごく腹の立つ話だったんですけど(笑)、人生長い目で見たときに一生で三河安城に泊まる機会って1回かもしれないんですよ。

そんなことがなかったら二度と泊まらないかもしれないんで、実は凄く貴重な夜かもしれないですとか。

例えばTEDのこのスピーカーも僕は上手くやっぱ喋りたいと思うんですけど、失敗してもいいと思ってるんですよね。

それは例えば10年後に10年前の7月6日何してたかなを考えたときに、多分家にいたら思い出せないんですよね。

TEDにこうやってチャレンジしてれば、少なくとも自分の中に濃密に残る時間にはなるんですよ、記憶に残る時間には。

仮に失敗したとしても、凄い恥ずかしい思いは当日するんですけども、アフターパーティーも出ないで帰ったりするかもしれないんですけど、でも10年20年30年ってスパンで見たときには必ず忘れられない時間になってるんですよね。

忘れられない時間に共通していることが1個あって、それは心が動いたときにしか人は記憶に残らないんですよ。

心が動くってのはドキドキするとかハラハラでも何でもいいんですけど、それってのは僕は生きてるってこととほぼ同義語だなと思っていて。

そういう自分の中でずっと残っていく時間みたいなことを、例えば1日でも1時間でも増やしていくってことを少し意識して、生きてくってこともとっても大事だなと思っています。

そのときに1つ重要なポイントがあるんですね。

これはもう皆さんスピーカーの方はみんな言ってたことなんですけど、例えばちょっと人に会うの面倒くさいなとかこのイベント行くの面倒くさいなとか、なんかちょっと怖いからOB訪問行くのアレだなとか、

億劫になる瞬間ってあるんですけども、そういうときにやっぱお腹にちょっと力を入れて一歩踏み出すってことがとっても大事なんですよね。

ちょっとしたことでいいんですけど、「なんか今日…イベントがあるけどまぁ行かなくてもいっかぁ」みたいなことってあると思うんですけど、

でも思い切ってそこでちょっとこう力を入れて一歩踏み出す、っていうことを出来るか出来ないかってことは結構人生を大きく左右すると思ってるんです。

僕はやっぱり何か迷ったときに、ちょっとお腹を力入れて一歩踏み出せる勇気ってのを、やっぱりみんなが持った方がいいと思ってるんですね。

最後に、僕がクライアントさんに結構無理なプロジェクトをプレゼンするときの口説き文句ってのを、皆さんに教えて終わりにしようと思います。

それはですね、「成功すればヒーローになれます。でも失敗してもチャレンジャーになれます」ってことを言うんですね。

要は、一歩踏み出して損することは1個もないんです、ってことをいつも言ってます。

皆さんもぜひ、ちょっとしたことでいいんで、まず一歩踏み出すって勇気を持ってください。僕からのスピーチは以上になります。

出典 YouTube

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