記事提供:TOCANA

「ルクテープ」――それは、いまタイで爆発的に広まりつつある人形だ。大切に所有し、人間同様に扱うことによって幸運がもたらされると信じられている。

タイ語で「子どもの天使」を意味するその名の通り、この人形には子どもの魂が宿るとされ、本物の赤ちゃん用の服を着せたり、食事を与えたりと、家族同然に扱われる。

しかも、実際にルクテープを持つことによって成功したという芸能人や、宝くじが当たったという人が続々と現れはじめている。今回は、この謎に満ちたルクテープ現象にまつわる数々のエピソードを紹介しよう。

ルクテープ人形

■ルクテープ人形とは?

ルクテープは、さまざまな容貌のものが販売されているが、大きさは生後数カ月の赤ちゃんくらいで、いかにもタイ人的な顔立ちをしているものが多い。価格は日本円にして4,000~80,000円と、種類によって幅広い。

ルクテープの購入後は、仏教の僧侶に祈祷を依頼する人が多いが、この手順を踏むことによって人形に魂が宿るという。

高名な僧侶に祈祷してもらい、ルクテープの背中に魔除けの呪文を書いてもらう状況を紹介する動画も数多く公開されている。ただし現地では、仏教の僧侶がこのような民間信仰的・呪術的現象に加担していることを好ましく思わない人々も少なくないようだ。

いずれにしても、ルクテープには本物の子どもの魂が宿るとされるため、決して粗末に扱ってはいけない。たとえば飛行機に搭乗する際も、荷物と一緒に預けたりすることは厳禁で、持ち主と一緒に座席につくことになる。

ルクテープ人形

■世界からも注目されるルクテープ

今年に入り、とあるニュースがきっかけとなって、このルクテープが世界的に知られるようになった。1月27日、タイ民間航空局が「ルクテープを人間とみなすことはできず、離着陸時は座席の下か頭上の棚に収納するように」と異例の警告を出したのだ。

出典 https://www.youtube.com

ルクテープを愛する芸能人・DJボッコ

すると、タイの各航空会社にはルクテープを持つ乗客たちからの不満の声が殺到し、さまざまな施策を講じる必要に迫られた。

特にタイ・スマイル航空では、乗客が持ち込んだルクテープ人形のために、なんと1人分の座席を確保してシートベルトや軽食まで提供するというサービスを開始した。

さらに、子どもの乗客に準じて、非常口近くの座席には座らせないことも決定。流石にやり過ぎの感もあるが、ルクテープの持ち主にとっては大真面目な話なのだろう。

また、ルクテープは別の面でも問題を引き起こしている。1月25日、チェンマイ国際空港の駐車場にルクテープが入った黒いキャリーバッグが放置されていたが、人形の内部を調べたところ、覚せい剤200錠が見つかったという。

さらに、中国からルクテープを模した人形が密輸入されるケースもあるという。

■ルクテープ誕生の経緯

さて、タイでは社会現象化しているルクテープだが、そのブームのきっかけは1人のタイ人女性にあった。首都バンコクの近郊に暮らすマナニャ・ボーンミーさん(49)こそ、今から3年前に初めてルクテープ人形を作った女性だ。

出典 http://bangkok.coconuts.co

もとは、性格に問題がある息子の身代わりとなる人形を作ったのが始まりで、それが評判を呼び、ほかの人々のためにも人形を作るようになったそうで、現在では自宅を工房にして多くのルクテープを製作・販売している。

出典 YouTube

彼女は、作り上げたルクテープ人形に販売する前から名前をつけ、あらかじめ「魂」を込めているという。そして、完成した日を誕生日として年齢もカウントするというコダワリようだ。

それが、芸能人をはじめとする著名な人物へと広まり、彼らが次々と所有し始めたこともルクテープの人気に火がついた要因のひとつだ。ルクテープに良い服を着せて食事を与えていたら仕事で成功したと主張するDJや歌手もいる。

■ルクテープで宝くじ当せん!?

では、タイの一般市民はルクテープからどのような恩恵を受けているのか?筆者は本記事のためにタイ人の妻に情報収集を依頼し、某SNS上で、とある女性とコンタクトすることに成功した。

仮にAさんとするが、彼女はルクテープが金運と幸運をもたらすものと信じて疑わない。「ルクテープは、子どもや友人同然だ」と言い切った。

そんなAさんの話によると、宝くじが大好きな彼女は日頃からルクテープに願をかけて大切にしていたが、これまでに2回も当せんを果たしたという。

1回目は5,000バーツ(約17,000円)が当たり人形のおかげだと喜んでいたが、そのうちに再び当たり、なんと45万バーツ(約150万円)を手にしたという。タイの物価を考えれば、これは300~500万円くらいの価値はあるだろう。

Aさんに宝くじ当せんをもたらしたルクテープ

■ルクテープ、その神秘の力

ルクテープに何らかの不思議な力があることを示す光景は、以下の動画で見ることができる。これは、YouTubeで公開された複数の映像をまとめた動画だが、1:58からが実に興味深い。

出典 YouTube

ある家の床にルクテープが立っているが、犬たちはそれに向かって吠えるばかりで決して近寄ろうとはしない。

どうも、ルクテープに怯えているようなのだ。動画内で繰り広げられている会話を妻に通訳してもらったところ、「新しく買った人形に対して犬たちが吠えているが、こんなことは今までなかった」と不思議がっているという。

犬は、動物の中でも霊的存在に対して敏感に反応するといわれている。筆者の妻も同様のことを話しており、タイでも同様の認識があることは間違いないようだ。

■ルクテープには、何が宿っているのか?

ところで、人形には古今東西さまざまなミステリーがつきものだ。

たとえば、著名な霊能者だった故・宜保愛子氏の著書『物にやどる霊』(主婦と生活社)では、人形に憑依した霊の恐ろしい実例を紹介している。

宜保氏の知り合いの女性が、フランスで購入したアンティークの人形を家に飾ってから、誰もいない部屋で変な声がしたり無人の廊下で足音がするといった怪奇現象が起き始めた。

そしてついには、真夜中に廊下を歩く人形そっくりの少女の姿を見たという。そこで宜保氏が人形を霊視すると、以前の持ち主が10歳くらいで交通事故によって死亡し、事故の瞬間に人形を抱えていたという事実だった。

ルクテープ人形

このように、人形とは何らかの念や霊が取り憑きやすい存在でもあり、それが引き起こす現象を軽視することはできない。

ルクテープの持ち主たちは、本物の人間の霊が人形に取り憑いているわけではないと考えているようだが、霊による憑依現象と異なるならば、その力を一体どのように捉えるべきなのか。

タイは国民の95%が仏教徒だが、その一方で、物に「ピー(精霊)」が宿るといった土着の民間信仰も根強く残されている。

ルクテープの力の源泉が、このピーに由来するものなのかは定かではないが、いずれにしてもタイにおけるルクテープのブームは、そのようなアニミズム的信仰が残る国らしい話ではある。今後の成り行きが注目されるところだ。

百瀬直也(ももせ・なおや)

超常現象研究家、地震前兆研究家、ライター。25年のソフトウエア開発歴を生かしIT技術やデータ重視の調査研究が得意。ブログ:『探求三昧』、Web:『沙龍家』、Twitter:@noya_momose

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