いつの時代もどこの国でも、何らかの事情があり我が子を手放さなければいけないという親が存在します。何十年かの後にその子供が「自分を生んだ親のことを知りたい」と思った時、実際にどれぐらいの割合で「生みの親」探しをするでしょうか。

現代にはSNSなどの情報網が溢れているとはいえ、自分が子供を産んだことを隠しておきたいという親もいるでしょう。過去の出来事に遡って一人の人物を探すことほど大変なことはありません。まして国が違えば尚更。

でも、それを成し遂げた青年がいたのです。彼はニュージーランドからロシアまで自分を生んだ母親を探す旅に出たのです。

アレックスの育ての親はオープンであった

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ニュージーランドで育てられたアレックス・ギルバートさん(23歳)は、育ての両親に物心ついた頃から自分たちは生みの親ではないということを聞かされました。それでも実の両親と変わらないほどの深い愛情を注いで育ててくれた両親にだからこそ、アレックスさんも正直に「生みの母を探したい」と話すことができたのです。

育ての両親から、生みの親はロシア人だということを聞いたアレックスさん。SNSを頼りに早速調べ始めました。でも、名前しかわからない一人の人間をインターネットだけで探すのは並大抵のことではありません。調査に4年もの月日がかかりました。

ロシアのソーシャルネットワークでヘルプを得た

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地道に一つ一つのことを調べながら辿りついたロシアのSNS。英語とロシア語という言語の壁があり、そして自分が生まれた23年前の過去の出来事を遡るということは、決して簡単なことではなかったものの、あるコミュニティサイトで「Tatiana Guzovskaya(タチアナ・ガゾブスカヤ)」という名前を聞いたところ「その人、知ってるわ!」という奇跡の返事があったのです。

ところが、生みの母であるタチアナさんは自分が息子を23年前に産んだことを周りに話してはいませんでした。知り合いだという人の協力を得ながらもアレックスさんは「果たして母に会ったところで自分はどのような反応をされるだろうか。」という不安がありました。

「それでも…会いたい。」

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ずっと長い間、そうすることが人生の中での目的だと思っていたというアレックスさん。不安ではあったものの、2013年、「母に会いに行く」という一大決心をしました。育ての両親は広大なロシアに、アレックスさんがたった一人で行くことに対して心配をしましたが、息子の気持ちを誰よりも理解していた両親はアレックスさんを快くロシアへと送り出しました。

「ロシアの人は優しかった。」

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人口400万人のニュージーランドと比べロシアには1億4千万人以上もの人が住んでいます。その中から果たして自分を生んだ母親を見つけることができるのか…アレックスさんの不安に、現地のロシアの人々は親切に対応。

「家族の繋がりを何よりも最優先させるお国柄なんだということがわかりました。」とアレックスさんは後にロシアの印象をそう語っています。ついに、タチアナさんの友人を通して生みの母と運命の出会いを果たしたアレックスさん。その心の中には様々な思いが。

時間が経つごとに打ち解けていった二人

出典 http://www.mirror.co.uk

初めて会った時、言葉も国籍も違う生みの母に戸惑いを隠しきれなかったアレックスさんでしたが時間が経つにつれて「居心地よく」接することができたそう。これまで23年間自分が育ての両親と過ごして来たニュージーランドでの生活と比べ、実母のタチアナさんの暮らしはアレックスさんが想像していたものとはかけ離れていました。

18歳の時に恋に落ちた兵士の子供を身籠ったものの、一人で育てることができず施設に預けたという事実が判明。狭いアパートで、自分とはあまりにも違うタチアナさんのライフスタイルにショックを受けたアレックスさんでしたが、更にショックな出来事は、実の父親の連絡先をタチアナさんが知っていたことだったのです。

自分に息子がいたことさえ知らなかった父親

出典 http://www.mirror.co.uk

アレックスの存在を20年経ってミヘイルさん(60歳)に知らせたタチアナさん。これまでタチアナさんが身籠ったことを知らずに生きてきたミヘイルさんは、突然の息子の出現に驚きつつも感動を隠せませんでした。

彼には今新しい家族がいて、アレックスさんは半分自分と血の繋がった妹にも会うことができたそう。今回の一人旅は生みの母に会えただけでなく実の父親にも出会た特別なものとなったのです。

「自分がしたことを後悔はしていません。」

出典 http://www.mirror.co.uk

子供を育てていけない人たちの事情は他人からは計り知れないもの。過去のことを遡って今更どうして、と思う人だっていることでしょう。それでもアレックスさんは「生みの親に会うことで自分という存在が完成された」と語ります。

「短い時間であってもロシアまで行ったことを後悔していない、ずっとそうしなければいけないと思っていた」というアレックスさんは、今では言葉の壁を乗り越えて実の両親と頻繁に連絡を取り合っているそう。

アレックスさんをリスペクトし、彼がしたことを受け入れた育ての両親も実に立派な人たちだと思う筆者。常に正直にかつオープンにアレックスさんに接してきたことが伺えます。そして何より親としての愛と想いに満ちている育ての親、マークさんとジャニスさん(写真右側の男女)の人としての器の大きさに頭が上がりません。

アレックスさんの「自分がどこから来たのか」という存在ルーツの旅は終わりました。でもこれからは、実の両親そして育ての両親と共に新たな良き関係を育んでいくことでしょう。一人の青年の「生みの親に会いたい」という願いが、海を越えて叶えられた奇跡の出来事に心を動かされた筆者でした。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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