出典私の撮影とイラスト

記事提供 がんばれ熊さん

先輩が譲ってくれた注文だけで自力で注文が取れなかった1カ月

若い頃、公衆宣伝販売の会社に勤めていました。会員さんを会場に集めて、講師の人が商品説明をしてアシスタントがお客さんから注文を取るという営業スタイルです。扱う商品は健康食品や健康器具でした。

なぜこの会社を選んだのか?それは口下手だけど営業がしたい。ここなら講師の人が商品説明をしてくれるから、後は注文を聞くだけだから簡単そうだなと思ったからです。しかし、先輩社員はどんどん注文を取るのに対して私は全然取れませんでした。

どうして先輩は注文が取れるのに私は取れないんだろう?

私にはこの仕事は向いてないのだろうか?そんな私に先輩が「この注文は熊君の注文だよ」と言ってきました。「え?でも僕は聞いてないんですけど」先輩は「いや、熊君に注文したいとお客さんが言ってるから熊君が担当だよ」と注文を譲ってくれました。

その会社には、新人に自信を付けてもらうために先輩が後輩に注文を譲ってくれる伝統がありました。しかし、入社して1カ月が過ぎても自力で注文が取れなかった私。商品の良さは充分に伝わっているけれど、高額な商品のため簡単には注文が取れなかったのです。

それを簡単に取ってくる先輩が不思議で仕方がなく、自分はこのままこの会社にいてて注文が取れるのだろうか?それともこのまま注文が取れなくて辞めさせられるのか?と不安な気持ちでいっぱいになりました。

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私が注文を取れなくても上司が怒らなかった理由

そこの営業所の所長はとても厳しい人で、私よりも先輩の社員が注文をあまりとってこないと「やる気はあるのか?」「ちゃんと見込みはあるのか?」と責めていました。しかし私には注文をまったく取ってこないにも関わらず所長は怒りませんでした。

後で聞いた話ですが所長は私の事を社長に相談していたそうです。私が入社して1カ月も注文が取れなかったことをです。すると社長は「あいつが1カ月、2カ月注文が取れないぐらいでカリカリするな。絶対あいつを辞めさせたら駄目だ。あいつはそのうち絶対に化けるから」と言ってくれたそうです。

所長は社長のことを神様のように崇めて尊敬していました。

絶対的な存在の社長の言葉があったから所長は私に1カ月結果が出なくても責めるようなことをしませんでした。頑張っても結果が出ない私を「注文が取れるかどうかはちょっとしたボタンのかけ違いだから」と励ましてくれました。

しかし怒られなくても結果を残せない状態はとても居心地が悪かったです。そんな私が入社して2カ月ほどした時、相変わらず注文が取れずに気持ちも腐りかけていたころ、社長が講師として営業所にやってきました。

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社長は商品の説明に入る前に、私のことを話始めました。

「彼は私と同じ母子家庭で育ちました」
「彼の将来の夢は母親に家を買ってあげることだそうです」
「自分を女手一つで育ててくれたお母さんに恩返しをしたいんだそうです」
「そんな彼は、お客さんからも養子に来てほしいと言われるほど優しい男です」
「早く仕事で一人前になってお母さんを安心させてあげたいそうですが不器用な性格で職を転々として、それでも営業をしたいと言う気持ちでうちに来ました」

このような話をされ私はとても恥ずかしい気持ちになりました。私の話はどうでもいいから早く商品の説明をしてほしい。そんな私の気持ちとは逆に長い時間社長は私のことを話しました。

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恥ずかしさで顔が真っ赤になりました

それを見て社長は「お前、何を赤くなっているんだよ。営業は馬鹿になってなんぼだぞ」「よし、熊君、ペンギンの物真似をしてみろ」私は「ペンペンペン」と言いながらお客さんの前をピョコピョコと飛びました。お客さんはそれを見て笑ってくれました。笑われるのは嫌いではありませんでした。

私の話で大きく盛り上げる社長。商品の説明はほんの少ししかされませんでした。しかし、その後、私にお客さんからの注文が集中しました。仕事で一人前に早くなってお母さんを安心させてあげたい私に対する温かい応援のようなものを感じました。

そして私はこの時、営業所で一番多くの注文を取ることが出来ました。

これには先輩社員はみんな驚きました。2ヶ月間、注文が取れなかった男がいきなり営業所でトップの成績を取った。もちろん私は何も変わっていません。私が凄いのでは無く社長が凄いのです。社長に魔法をかけられたように注文が私に集中したのでした。

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社長に魔法をかけられたのはこの時の1回だけです。

しかし社長の魔法とはいえ、営業所でトップを取ったことは私の心の中に、こんな僕でも注文が取れるんだという気持ちが芽生えました。自分は駄目だと決め付けてはいけないという気持ちです。

実際にお客さんから注文が集中したという経験は私の心の中に注文は取れるもんだという感覚のようなものが生まれました。それまでは、こんな僕に注文なんて取れるのかと不安に思ってただけに大きな気持ちの前進でした。気持ちが変われば行動が変わる。

私はどんどん、注文をとるコツやノウハウを身につけて行きました。

そして数ヵ月後には、所長から随分成長したなと褒められました。そして結果が悪い時は所長から「やる気があるのか?」と怒られるようになりました。

怒られるのは辛いけれど、認められた証拠だと思いました。私はこの会社で営業というものの仕事の魅力を大きく学びました。それまで訪問販売や賃貸不動産の営業の会社に勤めたことはありましたが、すべて短い期間に辞めていたのです。

特に訪問販売の営業は早く結果を求められます。入社して1週間まったく結果が出なければとても居心地が悪いと感じました。営業には沢山のコツやノウハウがあることも知らずに短い期間でいくつもの会社を辞めてしまいました。

しかし、この会社では社長が長い目で私を見てくれました。今まで私が経験してきた会社のように、早く早くと結果を求めることがなかったために、沢山のコツやノウハウを学ぶことが出来ました。

長い目で私を見てくれた社長の器の大きさが私を成長させてくれたのだと、とても大きく感謝をしています。


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