海外では日本では想像できないような出来事が起こる。先日、アジアでトップの大学であるシンガポール国立大学(NUS)の近くまで行く用事があった。

ついでに学内のレストランで食事を摂ってきたのだけど、その店には身体が少し不自由だと思われる店員さんが勤務していた。彼の働きぶりを見ていて「仕事をする上で大切な事」を改めて気づかされた気がした。

他の店には真似できない空気が流れていた

出典 http://xinsg.hatenablog.com

SAPORE ITALIANO
NUS University Town, 1 Create Way,#01-06 (UTown), Dover, 138602

一見すると、いかにも正装した店員さんが丁寧だけれども画一的な接客をしていそうなレストラン。しかし、ここには日本の古き良き田舎の近所付き合いのような空気が流れていた。

ポロシャツ、ズボン、ポーチを身にまとい、あたかも山登りにでも行くような格好をして、ニコニコしながら接客してくるおばちゃん。

注文したカルボナーラに手を付けようとしたとき「その麺作りたてだから美味しいよ」と声を掛けてくれたシェフ(オーナー?)のおじさん。

「おや!この店は普通の店とは違うな」と思った切っ掛けを作ってくれたのは、この二人だったが、ひと際目立っていたのは客席のソファーに座っていた男性店員さんだった。

彼は頭をくるくる動かしたあと、こちらをギラりと見つめた。一瞬ギョッとしたが、いわゆる身体が不自由な方(五体満足だが行動に違和感がある程度)だという事は、様子を見てすぐに分かった。少し観察してみる事にした。

身体の不自由な店員さんの仕事

見た限りでは、彼の主な仕事は二つ。入ってきたお客さんを席に案内すること。空いた食器をさげること。テキパキとこなしているように見えた。

周りとの関係も良好に見える。彼は、シェフのおじさん、山登りの格好のおばちゃんと共に、他店では到底まねできないような、ほわんとした空気を作り上げていた。なによりみんな笑顔が絶えない

俗に言う3K(きつい、きたない、きけん)と言われる飲食業なのに、何故このような事が可能なのか?もう少し観察してある事に気づいた。

ほわんとした雰囲気をつくるには・・・

男性店員は、基本的に客用ソファーに座っている。必要がある時だけ、皿を下げに来たり、入店客を案内するため動いていた。

日本の飲食店であれは「ゴルァアアー、なにお客様用ソファーでくつろいどんじゃアホォォー、仕事なめとんがぁーヽ(` Д ´ )ノ」と言われるところだろう。だが、山登りおばちゃん店員も、料理人おじさんも全く指摘しない。

かと言って、その男性店員が怠け者なのかと言うと、そうではない。むしろ動く必要がある時は、直ぐに行動している働き者にも見える。

彼の仕事ぶりは「力を入れる所は力を入れ、抜くとこはとことん抜く」というシンガポールの仕事のスタイルをそのまま体現しているように思えた。

普段は座っているから、肉体的負担も掛からない。座ってる事について指摘もされないから、精神的負担もかからない。体力を消耗する必要のない時に、できるだけチャージして動く時に動く。3Kの飲食業でも、こうする事で余裕が生まれるのだと実感させられた。

健常者に比べて少しディスアドバンテージがありそうであるにも関わらず、無駄のない動きをする。そんな彼の賢さもさる事ながら、彼が座っている事について指摘しない、山登りおばちゃんとシェフのおじさんの対応もあっぱれだ。

彼らのマネージメントの結果、今の彼らの笑顔がある。この店は客にとって居心地が良い空気が流れていたのだ。

実際このあと、若い金髪のアンモー(欧米人)客が現れたが、この男性店員に案内されると、アンモー男性もニッコリとなった。基本的にアンモ―はサービスレベル要求度が高いにも関わらずである(もちろん個人差はあるが)。

シンガポールと香港の違い

自身は仕事の関係でたまに香港人とコミュニケーションをとる機会がある。いつもいつも香港人について思うのことがある。「きゃつらは仕事中、何故そこまでヒステリックなのか?」ということ。

シンガポールと香港。ご存知のように両国ともタックスヘイブンで近年経済成長が目まぐるしい。経済レベルは「同等である」であることは誰もが知っているだろう。

なのに、何故「No worry, okay lah...」と言いながらマイペースで仕事をしているシンガポール人の国と、がむしゃらにストレスを抱えながら仕事をしている香港人の国の、経済レベルが同じなんだ?

その答えを、その男性店員が教えてくれているように思えた。

「格好なんて気にせんでええ。力を抜くところはとことん力抜いて、必要な事にアクセントをおいて仕事をしたら、それでOKや。それでみんなハッピーになれる。」

決して彼が関西弁で上のように語りかけてきたわけではないけど、彼の行動が、このような事を自分に語り掛けてきているように感じた。

長居してしまった

一通り料理を平らげお腹は一杯で飲み物も飲めなかったが、居心地がよかったのでビール追加注文。ゆっくり、まったりとした時間を満喫していた。

特に印象的だったのは、このような店が東大をも凌ぐアジアトップの超名門大学の中にあるということ。名門大学内にある、今までの常識の枠に捕らわれない経営のレストランでは、美味しい料理を楽しむだけでなく、新たな気づきも与えてくれたのだった。

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シンガポール在住5年目に突入しました。ブログ(http://www.sinlog.asia/)書いています。海外旅行、語学学習、お笑いに興味がありますが、雑多にまとめていこうと思います。

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