Spotlight編集部が独占敢行した、野島伸司さん×いしだ壱成さんによる、初となる“同窓会対談”。

『野島伸司三部作』の呼び名にオマージュを捧げ、史上初となる“三部作”でお届けしている本インタビュー記事も、いよいよ最終章へ突入します。

第一部では、野島伸司さんの作品で、いしだ壱成さんが初主演をつとめたドラマ『未成年』をはじめとする懐かしい作品への想いや撮影秘話に花が咲き…。

ついに第二部では、かつてメディアが踏み込めずにいた、触れてもいいものか…な“パンドラの箱”に迫ることに成功。野島さんの脚本制作秘話や、今、野島さんがいしださんに“書きたい”役、そしていしださんのちょっぴり恥ずかしいプライベート談までたっぷりと伺うことができました。

最終章となる第三部では、野島さんが、この春開校する俳優養成スクール「ポーラスター東京アカデミー」を立ち上げ、総合監修もつとめるに至った真意や、日本のエンターテイメントへの懸念、そして野島さんといしださんの、お互いに向けた胸中が露となっていきます。

今、“俳優養成アカデミー”を立ち上げた真意

ーーコンプライアンス強化を機に、地上波からネットやBSへと“書きたい”媒体が変化しただけでなく、近年は、ドラマ『明日、ママがいない』『アルジャーノンに花束を』で“脚本監修”という立場を取られたり、漫画原作、作詞、舞台脚本などにも携わられている野島さんですが、新たな分野へ進出されるに至った心境をお伺いしたいです。

野島:自分に子どもがいるのが大きいですね。

歌や漫画といった、子どもが一番先に触れるものをやろう
という風に、今はパーソナルな想いが強まっていったのかもしれないですね。

ーーお子さんの存在が関係されていたことに心が暖かくなりました。さらに昨年末、野島さんが、4月1日に開校する俳優養成スクール「ポーラスター東京アカデミー」を立ち上げ、総合監修をつとめられることも発表になりました。その真意はいかなるものだったのでしょうか。

野島:この国は、エンターテイメントを受け入れる素養が本当に足りていないんですよね。たとえば海外だと、映画とかドラマの撮影でカーチェイスが始まると、みんな普通に「あ、撮ってるんだ」って分かって、エンタメが現実とは別次元のファンタジーとして存在しているんですよ。

でも日本の場合は、まだそこまでいけていなくて、「これはロケなんだ」って言っても「何でこんなところでロケするんだ」「早く通して」みたいになってしまう。国民がエンタメを楽しむという文化が全然成熟していないんで、変えていきたいなとは思ってるんですよね

一番早い方法で変えるのは、役者、俳優がもっと一般の人からリスペクトされること僕らが、“レジェンド俳優”をどんどん作っていかないと、国民にエンターテイメントを受け入れる素養が育たないんですよね。

壱成:(聴き入っている)

ーー確かに海外においては、“役者=スター”として確立しているように感じます。

野島:そうですね。別次元になることによって、一般の人たちのリスペクトを得て、エンターテイメントが確立される。現実とファンタジーを混同してしまうと良くないのかもしれない。

壱成:(納得の溜息)

ーーこのタイミングで始動されたのには、きっかけがあったのでしょうか。

野島:これまでだったら多分やらなかったでしょうね。ただ、今は凄いコンプライアンスが強くなってきてるんで、もう地上波に対するこだわりもないし、物書きとしてはあとはネットやBSで作品をソフトとして残せていければいいなという部分があって。

そんな“一周回ったかな”っていう感じの中、新たなモチベーションが欲しいと考えていて、最終的にアカデミーをやることにしました

“俳優は、人とは違う風に生きていって死ぬべき”

野島:別次元を生きる役者の人たちは、私生活がどうであったとしても、“いい芝居をする人が素晴らしいんだ”っていう風にリスペクトされる職業であるべきだと思うんですよね。それが作られたら、日本のエンタメはもうワンランク上にいけるとは思うんですけどね。

リスペクトされることが一番大事で、俳優たちは本来、好感度とか親近感を欲しがってはいけない。あとは、バラエティのタレントと俳優は、全く違うんだということですよね。バラエティでは好感度があるほうが仕事は増えるだろうけど、俳優の世界は関係ないんで、プライベートも一切見せる必要もないし、謎めいて欲しいしね

その代わり、マリリン・モンローじゃないけど、悲劇的な部分もプライベートで背負うと。「俳優って、自分たちとは違う風に生きていって死ぬんだ」っていう見方をされるような次元にならないと、やっぱりダメだと思うんですよね。

アカデミーで教えるのは、演技だけじゃない

ーー「ポーラスター東京アカデミー」が掲げる、“本物俳優主義。”というフレーズに惹かれました。いかにして“本物”と呼ばれる俳優を育成されていくのでしょうか。

野島:
芝居を作るというよりは、俳優としての生き方を教えたい。俳優になるんだったら、極端な話、“プライベートは不幸であっても、その代わり芝居は圧倒的であれ”とね。だから好感度を求めるなと。

それで、一番いいときに消えればいい(笑)


(一同笑)

野島:そういう“レジェンド”は、昔だったら高倉健さんとかの世代はまだあったかもしれないね。

ーーおっしゃるように、日本でも往年の役者さんは、“スター”と呼ばれていましたね。

野島:そうですよね。それがどこからか「好感度が大事だ」っていう風になってしまった。その境界線を物凄い曖昧にしちゃったのは、僕ら作り手側にも責任が凄くある。

ーーアカデミーでは野島さんが自ら、指揮を執られるのでしょうか。

野島:講師は秦秀明くんっていう優秀な彼と、他の講師陣もいて、普段の講義は覗こうとは思います。けれど僕が一番やらなくちゃいけないのは、生徒、彼ら彼女たちに仕事を与えるということですよね

野島:お金が欲しくてやるわけではないんで、僕の各局の知り合いないし、実際に番組持っているプロデューサー、現役でキャスティング力のある人間にどんどん見せて「誰かを引き上げるんだ」という風に、僕は“売ってあげること”をしようと思ってるんですよ。

テクニカルな部分とかは教え方のうまい講師がいるので、僕は生徒たちをまず最初、どうやって売ってあげようかという部分ですよね。

“壱成に講師になってもらうこともあるかも”

ーーいしださんと、アカデミーの授業でタッグを組まれるビジョンもあるのではとワクワクします。

野島:壱成は物腰柔らかいから、子どもには好かれるかもね。うちの子も壱成の膝の上には座るし

(一同驚)

野島:そういう意味では、壱成には“両性具有感”があるんで、導く的な教え方はできると思うんですよね。やがては壱成にもやってもらうこともあるかもしれません。ただ、壱成自体はやっぱり天才肌なんで、どうなるのかは未知数だけど…。

ーー近年、野島さんが初の漫画原作を担当されたNOBELU -演-』(ノベル)では、苦難が立ちはだかりながらも子役を目指す少年少女たちが、事務所のトレーナーから“無人島”で過酷な演技試練を受けたシーンが描かれていました。

同じようなトレーニングが行われる可能性があるのでは…と想像してしまいます(笑)。


野島:(笑)。どうしよう?

壱成:どうしようかな…。

野島:壱成に教えてもらおうかな。

壱成:(焦)。

野島:実際は、子どもを預かる場合はケガとかいろんな心配な部分もありますし、自分の生徒になると自分の子どもに近いんで、やっぱり責任を感じますね。

どういう授業をするかは講師たちが考えていきますけれど、その生徒たちそれぞれにどうやったら伸びるのかっていうのは種類があるんで、みんな同じようにやっていくのもダメなんですよね。経験で上がってくる子もいるだろうし、あまり教えるといいことがない子もいる。

それを講師たちに出してもらって、僕はさじ加減を仕分けするっていうんですかね。実際見て、世の中に出す時期もこのぐらいがいい、今出すと家族も引っ括めておかしくなっちゃう、とかいろんな責任を背負うとは思います。

野島:実際こっち側に来たときに、たとえば大抜擢をしちゃったりすると、その子、人間の人生を変えちゃうことがありますからね

“4歳の桜井幸子”が舞い降りた

ーー現在「ポーラスター東京アカデミー」では、第1期受講生を募集しています。1月30日(土)には「特待生オーディション」として、なんと野島さん自らオーディションに出席し、審査を行われることが公表されました。

「特待生オーディション」では、どのような方に出会われたいとお考えでしょうか。たとえば、野島さんが世の中全体で注目されている未来のスターがいらしたら、ぜひお伺いしたいです。


野島:アカデミーの入学案内とかにいろんな方が来るじゃないですか。その中でひとり、まだちっちゃいんですけど…。

ーーちなみにどのぐらいの…。

野島:4歳。

(一同驚)

野島:その子は、桜井幸子っぽいんですよ。独特の仕草とかがあって…女の子なんですけど、まだ4歳だから男の子っぽかったりもする。

ーー可能性を感じられる子は、そんな小さいながらも滲み出ているものなんですね。

野島:そうですね。若ければ若い程分かりやすいんですよ。子役のオーディションをすると、何百人会っても、芝居をさせると圧倒的にうまい子がいるんですよ。本来はワークショップとかで訓練していくと、経験値でうまくなっていく役者もいる。

ただやっぱり、いわゆる天才子役といわれる子たちは、もうその瞬間にうまいんですよ。走るのが速いとかと同じことですよね。

ただ「ウサギとカメ」じゃないけれど、どっちが役者として長く続けるかっていったら、どっちともいえないんですよね。やっぱり俳優って才能も大事だけど、一方でテクニカルな部分、訓練や経験も凄い大事だと思います。

壱成さんも興味津々。野島さんの“好きなタイプ”とは

ーー直球なのですが、野島さんの“好きな俳優のタイプ”を伺えたらと…。作品を拝見していても役者の方に共通している雰囲気が感じられて、ひょっとしたら先ほどの“4歳の桜井幸子”さんにも通ずる部分があるかもしれないのですが、あえてタイプを言語化していただくとするならば…。

壱成:あぁ、それ聞いてみたいですねぇ。

野島:品のある人ですね。それは上品とか下品とかいう、分かりやすい育ちとかじゃなくて、やっぱりその“人品(じんぴん)”。人品の高い人というか、大袈裟にいうと“魂のレベル”の高い感じ

そういう役者は、画面をノーブルにするっていうか、引き締めるんですよね。どこか静謐(せいひつ)な空気をもたらすんで、そういうものを持ってそうな人が好きですね。

ーーうっ…品と伺って、我々Spotlight編集部は身に詰まされます(笑)。

出逢いから23年。互いへの胸中が露に

ーー1993年、『ひとつ屋根の下』で運命となる出逢いを果たされた野島さんといしださん。23年の時が経った今、初となる“同窓会対談”に、私たちもただただ胸いっぱいの想いに尽きます。

お二人の、お互いへの愛がたくさん詰まった対談の締め括りとして、最後に、今改めて、野島さんにとってのいしださん、いしださんにとっての野島さんの存在をお話しいただけますでしょうか。

野島:“今までで一番印象に残る役者、いしだ壱成”。

今のところ、壱成を覆す役者には出逢っていないです


『未成年』の頃の、あの圧倒的な輝き


あの時の壱成は、圧倒的だった。だから今、壱成はもう1回、ステージに立たないといけないと思いますね。

壱成:(聴き入っている)

ーーでは最後になりますが、いしださんにとっての、野島さんの存在をお伺いさせてください。

壱成:お父さん、ですかね。

こう…会ってなくても…うん。

“繋がっていてくれている人”だな、と想います。

fin.

野島伸司さんといしだ壱成さんが、運命となる出逢いを果たしたのは、23年前のこと。そして野島さんの作品でいしださんが初主演をつとめた、“壱成の圧倒的な輝き”と野島さんが言葉を紡ぐ『未成年』から20年の時を経てー。初めてとなる野島さんといしださんの対談を敢行し、“三部作”のインタビュー記事を通してお届けしてきました。野島さんといしださんお二方の、ひとつひとつの言葉、そしてお互いへの想い。記事からも溢れ出るほどに、野島さんからいしださん、そしていしださんから野島さんへの“でっかい愛”が、そこにはありました。

<取材・文/Spotlight編集部、写真/長谷英史>

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