野島伸司さん×いしだ壱成さんによる、初となる“同窓会対談”を、Spotlight編集部が独占敢行。

さらに『野島伸司三部作』の呼び名にオマージュを捧げ、本インタビューも史上初となる“三部作”でお届けしています。

第一部では、野島伸司さんの作品でいしだ壱成さんが初主演をつとめ、放送から20年を経たドラマ『未成年』をはじめとする作品への想いや、撮影秘話に花が咲きました。

いよいよ第二部では、視聴者の方が気になっていた触れてもいいものか…な“パンドラの箱”トークを中心に、野島さんの脚本制作秘話、いしださんのちょっぴり恥ずかしいプライベートなどに迫っていきます。

“社会派ドラマ”と呼ばれて

ーーいわゆる“社会派”と呼ばれる作品で多くタッグを組まれている野島さんといしださんですが、今回の対談ではシリアスな作品からは想像がつかない程、軽快な掛け合いに驚かされました。普段からプライベートで頻繁に会われていらっしゃるのですか?

野島:ないよな?

壱成:ないですね。数える程ですよね、食事とか…。

野島:たまたま何かの会の後に流れて、みたいなことはありますね。

ーーでは、お二人が会われる時は現場で…。

野島:僕、現場行かないんです。物書きはひとりでやってるじゃないですか、部屋でね。現場行くとみんな楽しそうで腹立つから、あんまり行きたくない(笑)

野島:自分が若い時は凄くピリピリしてたんで、“現場にあんまり気を遣わせちゃ悪いな”っていう気持ちがあるので、行かない。

壱成:野島さんは凄い存在で、みんなこう…自然と引き締まってましたね。

ーー当時は、“社会派作品”をご一緒されていたこともあってでしょうか。

野島:やってるほうはね、そんなに社会派をやってるつもりもないんですよ。アカスみたいな事件があると腹立たしさを覚えるので、書こうと思うだけで。

ーー『聖者の行進』のもととなった、知的障がい者に対する暴行・強姦事件「水戸事件(水戸アカス事件)」が発覚したのが1995年のことでした。

野島:けっこう取材もして、現地の新聞記者の人に会うと実際はもっと酷かったりするんだけど、さすがにそこまでは書けなかった。今だったら絶対できないんで…。今は本当に、物凄いチェック厳しくて、おそらく『未成年』も放送できなかったかもしれない

そういう題材をやれた時代背景っていうのはあった。今は凄いコンプライアンス強いんで、すぐ…『明日、ママがいない』みたいにスポンサーいなくなっちゃうんで…

『明日、ママがいない』に見る、現代のコンプライアンス

ーー実は、そこを伺っていいものかと探っていました。野島さんが脚本監修をつとめられた児童養護施設が舞台のドラマ『明日、ママがいない』では、初回放送後、多くの反響が寄せられ、番組提供スポンサー全社がCM提供を取りやめる対応をとったことが思い出されます。

野島:
昔だと局に抗議がいっていたのを、今はスポンサーに直でいったりするんで全然違う。やっぱりスポンサーは慣れてないんで、凄いクレームに弱いんですよ。今、過渡期かなっていう気がしますけども…各企業に来たら対応できるくらいなシステムが出来上がればね、また変われるかもしれない。

だから、“地上派にこだわらなくてもいいかな”って風に僕は思ってますよ。BSでやったりとか、ネットでもいいし。もう歳なんで、大きな数字を取ったとしても特に自分的には意味がないし、いいソフトを残したい。でも番組が当たればみんなが喜ぶから嬉しいんですけども、物書きとしてはその分何か喪失感があるんだったら、観る人少なくてもね、ネットとかでやるほうが遥かに楽しい

ーー我々Spotlightもインターネット媒体なので、野島さんのネット参入に期待したいところです。

野島:ぜひお金を出していただいて…(笑)。

(一同笑)

ーーそのような「今だったら絶対にできない」作品にこそ、当時いしださんを抜擢し続けていた真意が気になります。

野島:『聖者の行進』は『未成年』のあとだったので、「次も壱成でやる」っていうのは僕と(元TBSプロデューサー)伊藤(一尋)さんの中で決まっていて、何をやるかっていう題材の部分で「水戸アカス事件」が起こったので、そこを壱成でいくという流れでしたね。

ーー役者さんが決定してから、脚本を書かれるスタイルだったんですね。

野島:僕の場合は多いかもしれないですね。特に伊藤さんとやってた時は、壱成、あとは引退しちゃったけど桜井幸子を決めてから書くことが多かったですね。

“でっかい愛”が散りばめられた「文通」

ーー野島さんがいしださんを描きながら書かれたという台本をいただいた時の、いしださんの想いをお伺いさせてください。

壱成:まずは、アッという間に読み終わっちゃう。たとえば…他の台本と比べるのはちょっとアレなんですけれども…他の台本に1時間掛かったとしたならば、20分間ぐらいでサーッと1回読んでしまう。“どうなるんだろう”っていうのもあるんですけれども、“のめり込み度”があって。

1回目、2回目、3回目、4回目と読んでいくと…だんだん嘘みたいに、新しい関係性だったり、“ここでこういうこと言いたいのかな?”とか出てきて、ワクワクしながら“早く来ないかな”って、凄く楽しく。準稿は出来上がってるんでだいたい分かるんですけれども、“決定稿が来た!”っていう喜びがありました。

壱成:節々に“でっかい愛”を感じるんですよ、野島さんの。キャラクターに対する愛だったり、もしかしたらそれぞれ個々の俳優に対する愛なのかもしれないんですけれど…。頭の中に「こうしよう」「ああしよう」みたいな絵がポンポンポンポンポンって浮かぶ瞬間が、凄く僕は大好きで。

壱成:普段、野島さんはあまり現場にいらっしゃらなくて、たまに来てくださるんですけれども、こちらがバタバタしていてお話しする機会もないので、なんだか“文通”でもしているような…気持ちですね。

ーー素敵です…。野島さんは脚本を書き終えたら、あとは現場の方を信じて疑わずに、託されていたのでしょうか。

野島:「餅は餅屋」っていうかね、物書きは物書きで、現場は現場で。書いたら自分はもうしょうがない。変えようがないっていうか、直しようがない。読み直してもう1回書いたら全く違うものになっちゃうので、フィーリング先行で、言葉もどっちかっていうと“音の響き”で選ぶ

たとえばセリフをそのまま心地良く流したい時は、心地良い言葉を順列で考えてから話せるようにして、ノイズを入れたい時は、その言葉の単語と逆のノイジーな単語を考えて、会話するように作ってるんで。

壱成:(聴き入っている)

野島:ただやっぱり予めキャスティングが決まってれば、顔は浮かんで外見まで想像してるんで、そのまま普通に会話させてる。勝手に喋り出してる時が一番いいですよ。

ーー以前、といっても“1991年”のものなのですが、野島さんが「いいラストシーンをまず最初に考える。とにかくそのラストシーンを書くまでは終えられない。一番書きたいのもその結末だ」と話されていたインタビュー記事を拝読しました。

野島:(笑)。そうですね、構成を決めないで、描きながら構成するんで、着地だけ考えてあとは好きにいく。っていうかね、デビューした頃はまだ凄い若くて、連ドラの作家はいわゆる「人生を知らない若いヤツがやるものではない」的な職業だったんで「代わりはいくらでもいる」って言われるような物凄くタイトなスケジュールで、たとえば「3日で書け」とか。ちゃんと考えて構成してる時間がないんですよ、物理的な。

壱成:(感心の溜息)

野島:だからもうとにかく、書きながら考えるっていう癖がついたっていうのは大きいかもしれないですね、訓練として。最初フジテレビでデビューした時、2クールぐらいは、ずっとワープロの前に向かってたんですよ。それで寝る時は期日だから、起きたら頬にキーの跡が付いてる。“これは死ぬな”と思って(笑) 。

野島:それで『101回目のプロポーズ』の頃から、もう1日3時間以上仕事しないと決めて、まだ余力があったとしても、もうやらない。そのあとは完全にリセットして、寝る時に続きを想像する。

ーーそうしてまた朝から…。

野島:意外と夢で、続きを見たりする時があるんでね

壱成:へぇぇ…。

野島:今はもう完全に、1時間ドラマでいうと、ロールがCM挟んで3から4つ、って時はCMを跨がないで終わる。1日にロール1つしか書かないっていう感じですね。「CM」って指定して書いたら、もう今日はやらないと。だから2、3時間ぐらいしか1日にやらない、それでも実際には(1話分を)3日か4日でできる。CMがあったらね。

壱成:凄い…凄いです…。

野島:そういう意味では、僕はシナリオ教室では教えられない。そのやり方をしちゃ(シナリオ技法としては)本当はいけないんだよね。大箱から中箱、小箱にして、そっからセリフ。凄い緻密な、数学みたいな仕事なので、そういう風に慣れて、1話で書くことがあまりにも分かっちゃうとドキドキしないんだよね。自分にとっては良くない。ドキドキしながら自分で楽しんで、着地はアバウトに“あの辺だな”って思いながら好きなほうにいく。

「今、地上波で壱成でやるとしたら…」

ーー今、お二人がタッグを組んでどんな世界観でも描けるとしたら、野島さんはいしださんに、どのようなキャラクターを書かれてみたいですか。

野島:壱成は…やっぱり普通ではないので、普通じゃない役をやるのがいいとは思います、1回この歳で。それでまた歳取ってから普通に戻るといいような気はしますね。「あんなことやったのが、いいおじいちゃんの役やってる」っておしゃれだと思うんで。なるべく高貴的なね。

壱成には特殊な“危うさ”があって、そういったものを引き寄せるタイプはなかなか少ない。なんとなく不安定だったり、危うい感じが壱成独特の雰囲気としてあるんで…今、地上波で壱成でやるとしたら、“とことん虐(しいた)げられたお父さん”の役がいいと思うね

ーーいかがですか?

壱成:虐げられるのは、好きなんで…いいと思います(照笑)

(一同笑)

野島:そのお父さんはどこまでいったらキレるんだろう、でもどこまでいっても粛々と
キレない。そういう意味では何かが欠落してるのかもしれない、みたいな。優しい顔と、そういう危うさがあるっていう棲み分けをするのがいいと思うね。

ーー観たいです!では、いしださんが演じてみたいキャラクターや、入ってみたい野島さんの世界観はどういったものでしょうか。

壱成:
『アルジャーノンに花束を』の現場に野島さんがいらした時に、似たようなことを話して「気が狂った役、いいよなぁ」とか。野島さんの書く気が狂った役って一体どんなだろう…ただウヮーッて気が狂ったことではないことだけは確かで(笑)。そうなると四重、五重にも折り重なって、いろんな事柄にぶつかっていくと思うと、“あぁ、凄そうだな”と。

やっぱり…基本自分…虐められるのが好きだったりしますね…。

ーーあくまでも役の上で、ですよね(笑)。

壱成:はい、まぁ…。

野島:えっ、プライベートでも?

壱成:ええまぁ、嫌いじゃないですけれども(照笑)。

(一同笑)

壱成:まぁサディストというよりは、マゾフィストだと思うんですね。なので…そういう、とことん痛めつけられて「でもどうしたの、それが何?」みたいな役。でもある時に、ピーンと張り詰めたものが爆発しちゃう…とか。そんなような役ができたら凄いな、とは思います。

かつてメディアが踏み込めなかった“パンドラの箱”に、迫り込むことを成し遂げたSpotlight編集部。野島伸司さんといしだ壱成さんの神髄に、また一歩辿り着くことができた第二部のトークでした。第三部では、野島伸司さんがこの春開校する俳優養成スクールで総合監修をつとめるに至った真意や、お互いへの胸中が露となっていきます。

この記事を書いたユーザー

Spotlight編集部 このユーザーの他の記事を見る

Spotlight編集部の公式アカウントです。

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス