東南アジア諸国の一つであるマレーシア。日本からもさほど遠くない距離に位置するこの国はイギリス連邦加盟国でもあり、イギリスへの移民も多くまた留学生も多いです。でもそれはクアラルン・プールなど都心に住む一部の裕福層の人達の話。マレーシアは人種も宗教も言葉も多様。民族構成が複雑な多民族国家としても知られています。

それぞれの地域に深い歴史と民族が入り交じって並存するマレーシア。華僑系住民やインド系住民、混血系住民、その他部族以外に、西マレーシアに存在する「オラン・アスリ」と呼ばれる先住民がいます。

今回、イギリスのBBCでは「オラン・アスリ」の子供たちが学校で虐待を受けていることをドキュメンタリーで放送。知られざるマレーシア先住民の悲劇が浮き彫りになりました。

「村の子供達にも教育を受けさせてあげたい」

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「部族の子供達でも教育を受けるべき」「教育を受けさせてあげたい」と思うのは親心あればこそ。でも一番近くの学校まで車で2時間ほどかかってしまい、歩いて通うには到底無理な距離。そこで親たちは、部族から遠く離れた小学校の隣にある施設に子供たちを預け、そこから学校に通わせるという手配をしたのです。

幼い子供たちにとっては親にも会えず辛い日々

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寄宿学校といえば聞こえはいいけれど何か月も親と離れて暮らす子供達にとっては寂しく辛い場所。それでも学校生活が楽しければまだ救われるでしょう。ところが、この学校から子供たちが消えるという事件が相次いだのです。

逃げた7人の子供。生き延びたのは2人だけ。

出典 http://www.bbc.com

今となってはトラウマになった学校生活がどんなものだったか、語るのも辛いという少女がようやく重い口を開きました。生き残った一人のノリーンちゃん(11歳)は学校生活だけでなく逃亡した森でも仲間が次々と亡くなっていくという辛い経験を目の当たりにしたのです。

「先生の体罰に耐えられなかった」

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学校の教師による虐待。独自の民族宗教を持っている「オラン・アスリ」たちでイスラム教徒に改宗した人は少数。マレーシア政府はイスラム教化を進めていますが反発している部族がほとんどです。

宗教は個人の自由でありながら幼い子供にイスラム教のように祈りを捧げろと強制して、それを拒否した子供たちには体罰を与えていたという学校教師。また、理由もなく炎天下に何時間も立たされ虐待を受けたという事実も判明しました。

クラスメートが体罰を受けているのを見て恐れ、逃げた

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7歳から11歳までの子供たちが学校から森へ逃げ出しました。「次に体罰を受けるのは自分だ」恐怖で森に逃げたものの、食べるものもなく固い葉を噛んではみたものの消化できず、水もない。そんな状況で飢え死にする子供たちが相次ぎました。

一緒に逃げてきたノリーンちゃんの弟は、汚い川の水を飲もうとして足を滑らせて落下。そのまま流されて命を落としました。クラスメートの女の子は「何か食べたい」と必死に訴えながら餓死。その遺体を竹の葉でノリーンちゃんは隠したと言います。

腐っていく友達の姿を見ながら過ごした時間は、ノリーンちゃんともう一人の少女にとって地獄のような日々だったことでしょう。幸いにも命は取り留めたものの、もう一人の少女は今でも病院にいるということ。

ノリーンちゃんが経験した恐怖を社会に伝えないといけない。周りの大人は「怖がらないで真実を話して」そう懇願します。学校からわずか2kmしか離れていない森林で起こった出来事。それなのに45日間もかかってようやく事件が明るみになったというのは親にとっても納得いかないこと。

不幸にも亡くなってしまった子供たちの姿は炎天下の森の中で放っておかれたために、親達はそのままの姿を見送ることもできず、ネックレスなどの遺品が残っていただけという悲惨な状態だったそうです。

マレーシアの一部の地域では、40%以上の子供たちが満足な教育を受けないまま成長していることもわかっています。学校に行かない理由のほとんどは、親が子供たちにジャングルでの果物採集を手伝わせたりなど、親の手伝いをさせられるために学校へ行けない、もしくは途中で止めてしまう子供たちが多いそう。

オラン・アスリ先住民のことをケアする立場にいるコリン・ニコラスさんは言います。「新しい教育を与え、新しい文化を教え、新しい言葉や宗教を学ばせたりすることで、もはや彼らはオラン・アスリではなくなっているのです。」

先住民の部族には恐らく代々受け継がれてきた部族特有の信念や生き方が存在することでしょう。でもそれを失ってまで子供たちを教育していくことが正しいのかというと疑問です。また、今回公になったように子供たちが命を落としているという事実は、見て見ぬふりはできない問題です。

貧富の差が激しい国では、裕福層ばかりが何事でもフォーカスされがち。ペルーでも都市リマで壁を隔てて貧困層と裕福層が分かれています。マレーシアのようなら民族国家は、国民それぞれが自分の血や宗教に誇りを持ち生きています。

だからこそ、国全体を大きく見渡せる政治力と統括者が必要なのではないでしょうか。オラン・アスリの子供たちが苦しんでいること、教育を満足に受けられない状況にあることを見過ごしてはいけないのです。

コリンさんは政府に訴え続けると話しています。せめて教育機関が村の近くにできれば子供たちは親元から通えるはずです。幼い子供の命がこれ以上犠牲にならないように、大人が考慮しなければいけないことが必ずあるはずなのです。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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