『スクラップ・アンド・ビルド』で第153回芥川賞を受賞した羽田圭介氏。

その後出演したテレビ番組では、歯に衣着せぬ発言と個性的なキャラクターが人気を集め、今や同時受賞した又吉直樹氏を凌ぐほどのテレビ出演本数を誇る。

年末・年始も毎日のようにテレビ出演が決まっている羽田氏に、今回Spotlight編集部が独占インタビュー。絶え間無く続くテレビの仕事についてどう考えているのか、彼の本音に迫った。

――芥川賞受賞後、テレビでよく羽田さんをお見かけしています。『情熱大陸』にも出演される(※20日にすでに放送済み)ということで、また知名度が上がりそうですね。あれは何時間ぐらい密着されたんですか?

羽田:100時間ぐらいですね。

――あの番組は、対象者の本質に迫るべく密着する取材スタイルを取っていると思うんですが、実際取材されてみてどうでしたか?

羽田:4~5年前の何もない暇な時だったら「情熱大陸に出られたらいいな」とか思っていたんですけれど、いざ出るような忙しい人間になると意外と鬱陶しい番組なんだなと思いますね。

――(笑)。現在もテレビのオファーがひっきりなしだと思うんですが、その内の五分の二は断っているとか。理由は何かあるんですか?

羽田:宣伝にもならないものとか、面白い経験にならないものは割と断っています。でもギャラが安くても、真面目なBSの番組だったら雑誌インタビューと同等の金額で取材を受けたりします。

ネット媒体は警戒している

――なので今回、このインタビューを受けてくださったのは少し驚きがありました。あまりWebでインタビュー記事を見ない印象があったので。

羽田:インターネット媒体は警戒しているところがありますね。

――それは良いように編集されてしまうからですか?

羽田:規模が小さいと思っていても残ったりするので。気軽にできる分、それをたたき台に何かを作ってこられると面倒くさくなりますし、勘違いもされやすくなるんですよ。

例えば物語ありきで「大きな決断をして安定から抜けだした。そして鳴かず飛ばずの期間が苦節◯◯年あり成功を掴んだ」と美談のように作られるとか。そうではないですから。それには本当に怒っています。

――確かに、苦労話を求めたがる風潮はありますね。

羽田:やっぱり方法論の違いだと思うんですけど、自分がやろうとしていることとは正反対の表現方法なので。最初からストーリーありきでそれに当てはまる人を探しているだけで、こちらの話を聞いてない感じにとても腹が立って。

「芥川賞をついに掴みとった」と言われてもそんなに目指してなかったし。大ざっぱに監修されるところにすごい抵抗があります。それならまだバラエティ番組に出て笑われたりするほうがよっぽどマシですね。

芥川賞以上にテンションが上がった出来事

――テレビで羽田さんを知った人は、白塗りの“聖飢魔IIメイク"を浮かべる人も多いかと思います。普段からもっとテンションが高いのかと思ってたんですが…。

羽田:あんなはっちゃけないですよ(苦笑)。あの時はたまたまです。

――そうだったんですね(笑)。

羽田:高校生の時に書いた作品が最終候補に残ったと電話が来た時にテンションが上がりましたけど、それが人生で起こったあらゆる出来事の中でも一番かもしれないですね。嬉しいことはそれ以外にないと思います。その後、実際にデビューするわけなんですが、そちらのほうがちょっと劣るんですよ。芥川賞の受賞もそれには全然かなわない。"0が1になる瞬間”っていうのは感動が大きくて。

芥川賞なんてデビューして丸12年経ってからだから、いずれこうなるだろうなという思いはあったので。高揚感はあるんですけれど、嬉しいんだかどうだかよくわからない感じですね。

小説家を目指すのは辞めたほうがいい

――羽田さんのこれまでの歩みについても聞かせてください。高校在学中に17歳という若さで書いた『黒冷水』が文藝賞を受賞し小説家デビュー、その後は執筆活動と平行して大学に通い、卒業後は会社員に。ですが一年半で辞め、その後は小説専業になりました。これには何かきっかけがあったんですか?

羽田:最初から小説家になる気持ちがあったので、会社員はとりあえずやってみたという感じですね。だから別に会社員から専業になるのも大きな決断をしたのではなくて、むしろ就職したほうがいいんじゃないかという軽い気持ちです。

――会社員という経験が小説に生かせるという考えもあったのでしょうか?

羽田:というよりも、私立の学校に付属校時代から10年間通っていたので、いきなり学歴に関係ない職業に就かなくてもいいんじゃないかという。「新卒」というチケットは一回しか無いので、使っておかなきゃなという感じです。

――羽田さんのように作家になりたいという人も多いと思います。

羽田:辞めたほうがいいですよ。書店でも文芸書コーナーはどんどん縮小して書店の奥の方へ行っていますから。

――でも芥川賞を受賞するとステータスはもちろん、売上げも印税が多く入ってかなり夢のある話かと…。

羽田:半年間受賞作が売れるというだけですから。今は芥川賞を取っても平均6万部とかしか売れないらしいですよ。まあ取ったことによって大学の先生になれるとか、関係ない利権にありつけるというメリットはあるんでしょうけど。

そもそも少子化で、いまタレントみたいな先生を外から大学に持ってくる余裕はどんどん無くなって、利権に食いつくことも出来なくなって。だったらサラリーマンをやっていたほうがいいと思いますよ。

テレビ出演を続ける理由とは…

――例えば100万部が売れたとしたら相当印税が入るわけじゃないですか。その時に生活をガラッと変えて贅沢な暮らしをしたいと思いますか?

羽田:しないと思いますよ。

――では今テレビに出演する理由というのはお金のため、もしくは自分を多くの人に知られたいという自己顕示欲から?

羽田:どちらも違います。もう反射的な構図ですよ、“本の売上げ促進”という。本を出したら売らなきゃという感じですね。

つまり、差し引きした結果、メリットが多いと思っているからテレビに出ている。イジられたりとか、デメリットのイメージだけで頭ごなしにナシと判断するのは短絡的なんじゃないかと。他の作家がやってないことをやったほうが、小説にも生きるし経験としていいかなと。

――当初はテレビの進行の仕方に戸惑いもあったのではないですか。

羽田:番組の打ち合わせではこういうことをやりますとなっていたのに、いざ本番になったら台本とかVTRがぜんぜん違うものが出来上がっていて。MCとか他の演者さんはそれをやると準備しているので、自分が「話が違う」とギャーギャー言って途中で止めることは出来ない。

そうした"だまし討ち”はテレビに出始めた頃にあったので、後々ストレスでPTSDになったり、帰還兵のようにボロボロになったりするのかなと思っていて(笑)。最近は嗅覚というか勘が研ぎ澄まされて、そういう仕事は事前に断れるようになりました。

――では今後もテレビ出演が続きそうですね。

羽田:結構断ってるし、ずっと続くとは考えてないです。今は部外者が捨て身でやっていることが、誰かの需要に当てはまっているだけなので。オファーが来たらまず一度冷静に考えて、小説のためにメリットがあるんだったら出る。そういうスタンスですよ。

――本日はお忙しい中ありがとうございました。

最後に

ここまでテレビに露出していると、浮足立ちそうなものだが、“全ては小説のため”という揺るぎない思いがある羽田氏にはその心配は無用だった。

「口で伝えられることは、小説に書かない」


芥川賞受賞会見でこう語っていた彼が、今後どういった作品を届けてくれるのか楽しみに待っていたい。

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