私たちは記事を書く時、どんな写真を使ったら読んでくれる人に伝わるのか、どんな説明を入れたらいいのかと頭を悩ませます。そして何枚かの写真を選び、言葉を紡ぎます。しかし、実際には多くの言葉や、説明の為の写真などは必要無いのだと痛感する1枚に巡り合う事があります。

redditという海外の掲示板に、米フロリダに住むエイプリル・クレーマーさんが投稿した「An old dog's last ride.(ある老犬の最後のドライブ)」というタイトルの写真が、まさにそんな1枚でした。

とても穏やかな表情で、窓から少し鼻を出し目を閉じている1頭の老犬。外の世界の香りや、マズルにあたる心地よい風、そんなあれこれを楽しんでいる様にも見えます。そして何よりも、おそらく飼い主であろう撮影者の、この老犬に対する溢れんばかりの愛情が伝わってくる写真です。

この投稿には、タイトルと写真だけ。他には何の説明もありませんでしたが、写真を見た人々の心を揺さぶるのには十分でした。

この1枚に次々とコメントが

「私の家にも猫と犬がいるんだ。今、私は涙でキーボードが見えないよ」

「なんてキュートな子なの。我が家のラブラドールも年を取ってきたけど、まだ子犬のように見える時もあるわ。年老いた犬達を大切にしなくちゃね」

「涙が止まらないけれど、この子はとっても美しいわ。素晴らしい時間の共有をありがとう」

「ちょっとPCを離れて、ウチの犬達を抱きしめてくるよ」

しかし良いコメントばかりではありませんでした。実はこの掲示板では、亡くなったペットの写真を投稿する事は禁止されていたのです。その為、かなり手厳しい指摘のコメントも多数入ってしまいました。

翌日、クレーマーさんが謝罪のコメントを

『みんな、ごめんね。去年の今頃に亡くなった愛犬リブラのことを思ってとても感傷的になっていたんだ。投稿のルールを破ったり、みんなの一日を台無しにするつもりはなかったんだよ。

リブラは15歳、僕が子どもの頃からずっと一緒にいたんだ。でも病気になって、たびたび発作を起す様になり、膀胱のコントロールもきかなくなっていた。そしてどんどん体調が悪化していったんだ。

彼女が旅立つ時が来た。だから私たちは、それを手伝ってあげたんだ。とても穏やかで、幸せそうだった。この写真を見ると、私はリブラがいない悲しさが少しだけまぎれるんだ。』

そのコメントに更に多くの励ましと感動のコメントが入りました。

「ルールを破っていることわかっていましたよ。それでも、この写真を共有してくれて本当にありがとう!これは確かに悲しいことだけれど、あなたとリブラとの友情の証の1枚です。リブラは愛され、幸せだった。それが全てです。リブラを失ったあなたが早く元気になりますように」

それでもルールはルール。掲示板からリブラの写真は削除されてしまいました。けれど、その感動的な1枚は、SNSなどを通じて、世界中に広まってゆきます。

いつか必ずくる別れのために・・・

この写真が話題になり、ハフポストUS版の取材を受けたクレーマーさんはこう答えています。「それは共に育ってきた愛犬と一緒にいられる、おそらく最後の30分でした。だから彼女が旅立つ前に、最後の一枚が欲しかったのです」

現在25歳になるクレーマーさんは、8歳の時からリブラと暮らしていましたが、リブラは2〜3年前から手術不可能な肺の腫瘍の為、ずっと寝たきりの状態になってしまっていたのだそうです。そしていよいよ、リブラの体は旅立つ準備を始めてしまいました。この1枚は、その苦しみからの解放を手伝うと決めたクレーマーさんと、リブラとの大切な最後のドライブだったのです。

クレーマーさんは、この掲示板に写真を投稿した理由を、犬と暮らす人々ならばいつか向かい合わなくてはならない”愛犬を失うという悲しみや苦しみ”に対しての、何らかの手助けができたらいいと思ったと語りました。

「犬だけでなく、ペットを飼うという事は、自分が彼らより長生きする事を受け入れなければなりません。辛いことですが、彼らを先に旅立たせなければならない時が来ます。でも、この写真のリブラの表情を見て頂ければ、最後の最後まで笑顔で過ごしていた事がわかると思います」

このたったの1枚の写真から、多くの人たちがリブラの幸せな一生を、そしてクレーマーさんがその一生にどれほど愛情を注いできたのかを受け取りました。そしてその感動を、自分の大切な誰かに注いでいこう、と改めて決意したことでしょう。

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