イギリスに20年以上住んでいる筆者ですが、イギリスのフラット(日本でいうアパート)を賃貸するには、通常は不動産を通すか直接大家とのやりとりになります。イギリスではこの大家に問題があるケースが非常に多く、日本人の筆者からすると考えられないような対応をしたりします。

例えば、筆者の相方が友人と住んでいた時に起こったことですが、契約をきちんと交わしているのに黙って住居に入って来たり。これはもう不法侵入で犯罪です。大家だからというだけで貸している家に勝手に出入りしていいはずがありません。それでも平気で鍵を開けて入って来られた時には、「プライバシーの侵害」「不法侵入」で訴えてもいいのではと思ったほど。

こういうことをされると、女性が借りている場合はレイプ事件など起こりやすくなるので非常に危険です。イギリスの法律は日本とはもちろん違うのですが、「基本、一ヶ月前など余裕を持って店子に知らせるべきだが、家賃を週単位で支払っている場合は1週間前に出て行くように店子に行ってもいい。そして店子の荷物がまだ運び出されていなくても、鍵を変えてもよい。」という法律があるのです。

これはあまりにも大家よりの法律ではないでしょうか。1週間前に「出ていけ」と言われた店子は当然急いで次の家を探さなければいけません。法律も大家味方し、大家に権力があるために、店子は突然追い出されても文句を言えないのです。

もちろん極端な場合、大家が罰せられることもあります。例えば「家の修理を怠る」「勝手に電気、ガスなどを止める」「スペアキーを勝手に使う」「脅迫、身体的暴行をする」など。相方の大家による不法侵入は、その時に相方が訴えれば立派に犯罪として成立したのです。

筆者も、過去に大家に勝手に水道を止められたことがありました。これも本来なら違法に当たります。筆者が相方と旅行に出ていた間に、階下の店子が出て行ったために改装工事をした大家。その際に水道を止めたのです。そしてそのまま大家は帰宅し、元に戻さなかったために戻ってきた筆者たちは水がない状態。

すぐに大家に連絡するも、「忘れていた。今忙しいので急には行けない。明日行けると思う」と言われ水がないことの不便と対応に対する不満を述べたところ、なんと大家は「水が出ないなら友達の家にでも泊めてもらえば?」と言ったのです。

そう言われたので「では、あなたのせいで家を出なければならないのだから家賃は引いてもらえるのか」と聞くと「そういうことにはならない」と言うのです。大家の非により、水が使えないという不便さを強いられ、筆者と相方は急きょホテルに宿泊。その宿泊代を支払えと言ったところ、半分だけ小切手が送られてきて呆れました。

古いボイラーが壊れてもすぐに修理を呼んでくれるわけでもなく、寒い日が続く冬のイギリスで暖房なしの生活。凍える思いで過ごしたことも。お湯が出ないということは当然温かいシャワーさえ浴びることができないのです。

この大家は本当に最悪でした。でも正直、店子は1度や2度ぐらいのこういう問題をわざわざ裁判にする人は少ないのです。なぜならば時間もお金もかかるからです。

例え1年の契約でも、できるだけ仲良くしたいと思うのが店子。その足元を見たかのように全く店子をケアしない大家がイギリスには大勢いるのです。ただあまりにも酷い場合は市役所の市民課に相談することができます。

その場合は、市民課は大家に連絡するので、店子が市民課に苦情を言ったのが気に入らなければなんらかの理由をつけて「出ていけ」という権利が大家あるのです。つまり、店子にとって、非常に面倒くさいことになるのです。どうも不公平だと思う筆者。

臨月の身重妊婦がいきなり大家に追い出された

出典 http://metro.co.uk

店子にとって借家の苦情を言うのは、契約上お金を払っている限り当然の権利といえるでしょう。19歳のリリー・シモンズは来月出産予定という身重な身でありながら、なんと大家に追い出されてしまったのです。

クリスマスももうすぐだというのに、身重の体でどこに行けばいいのか。実家に帰るには遠すぎる、赤ちゃんも生まれるから家が必要。妊婦をこの寒空に放りだす大家はいったいどんな極悪非道なのだ、と思ったらなんと大家は「牧師」だというから驚きです。

人に親切にするのが仕事では?

Licensed by gettyimages ®

大家が牧師ということで、今イギリスではこの大家のことが話題に。「なんという酷い牧師」と批判が相次いでいるとか。そもそも、シモンズさんはもうすぐ生まれて来る子供のことを考えてカビが発生している壁の掃除と壊れた家具などの修理を頼んだのです。

ところが牧師が修繕しなかったために、シモンズさんは市民課に苦情を申し立てました。そのことが大家に発覚し、逆に追い出されてしまったのです。

この牧師の言い分としては「追い出した時にはまさか彼女が妊娠してるとは知らなかった。夜遅くにでも電話をかけてきて鍵を失くしただの何だのよく言ってきた。ガス供給のためのカードにもお金を入れてなかったり勝手に持ち出したりと、色々と問題があったので追い出した。」だそうですが、世間からはもうすぐクリスマスなのに牧師という立場にありながら、身重の10代に情けをかけるどころか薄情にも追い出したと非難殺到。

「もうすぐ生まれるのに…」

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シモンズさんとしては当然大家の対応に不満があるとし、またも市民課に訴えました。とにかく住む場所を探さなければいけないということで、市民課にも相談しましたが生活保護者を援助している市民課が斡旋しているフラットは、待っている人があまりにも多くすぐには空かないとのこと。

市民課はシモンズさんに、子供も生まれるし今はとりあえず実家に帰るように指示したそうですが、なんだかこのままでは泣き寝入りのような感じがする筆者。双方に言い分があるのでしょうが、もうすぐ生まれる赤ちゃんのことを思うと牧師の大家がとった対応は非情ではないでしょうか。

イギリスで「良い大家さん」に出会うのは宝くじに当たるような確率だとみんな言います。筆者は今のところ、その宝くじに当たっているので平和ですが、今度引っ越す時が憂鬱です。とにかくシモンズさんが来月無事に実家で出産できることを願う筆者です。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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