その日、終点の駅から数えて2つ手前の駅は、丁度、大学生の帰る時間帯と重なり、軽い通勤電車内のように混み出していました。

そんな中、私の前に二人(男女)の大学生が並んで立ちました。

私のすぐ前には髪の長い、清楚な服装と笑顔のかわいらしい女の子が、その隣には女の子と話すのが嬉しくて、嬉しくて仕方がないというようにテンション高、高の今時の男子大学生くんが立ちました。

これは、私の勘ですが、この(男子)大学生くんの嬉しそうな笑顔&声の高さや大きさに加えて微妙な語尾のうわずり具合から・・、どうやら大学生くんの方は、目の前の笑顔がかわいい女の子に興味がある=恋している?ような感じです。

初めは、インドから来ている留学生のことを話題に話が盛り上がっていましたが。次第に今度の休みの日に京都に行こうと大学生くんが誘い出しました。

女の子の方も、どうしょうかな…、行こうかな…、と迷っているようでしたが。
どうやら話の盛り上がりに気分も盛り上がってきたのか、行ってもいいかも的な受け答えになって、(見ていて微笑ましい・・、)とってもいい感じ。

私も内心、聞くとはなにし聞きながら・・。あと、もう一押し、頑張れ!大学生くんと、心の中でエールを送っていました。

ですが、丁度それは、その不幸な・・というか、残念な場面は、次の駅に着いたときに起こりました。

楽しそうに、二人で次の日曜日に京都に行こうと話が盛り上がっている中、駅に着き扉が開くと、私の隣に座る人が降りる為に席を立ったのです。

それ自体はよくある電車の中の風景ですが、次が・・いけなかったと私は思う。

信じられないことに大学生くん、嬉しそうに笑い、彼女に話しかけながらスルリと身体を半回転させて、自分の目の前で空いた席にストンと座ったんです。

彼女に、「どーぞ」とも、「座っていい」とも、聞かずに、ほんとぉ、〝ボクの前が空いたんだから、当然、ボクが座るね〟というようにスルリ、ストンと座ったのです。

これは、女心が分かっていない以前の問題ですと、目の前の大学生くんに突っ込みそうになりながら「ハイ!終了」と、私の頭の中で、彼女との楽しい会話の終わりを告げるゴングが、カーーンと大きな音を立てて鳴り響きました。

が、大学生くん、楽しい会話が終わったことに、自分で終わらせたことに気づかずに、はち切れんばかりにニコニコと、下から彼女を見上げて嬉しそうに話し続けます。

ですが、もう…、彼女の顔からはかわいらしい笑顔は消え、ついでに言葉も消え、目には小さな怒りとも、軽蔑とも言えない光りが鋭く表れて・・なに?こいつ!・・みたいな冷たく凍った目線が…テン、テン、テン、と大学生くんをとらえて見下ろしている。のに、気がつかないで喋り続ける大学生くん。

人間、肝心なところで詰めが甘い行動は・・、気配りなしは命取りです。


これは、この行動は百歩譲って友達同士でも・・アウトです。(と、私は思う。)

なにも言わないで、さっさと座ってしまうのは、ちょっといけないことですよ。
親しき仲にも礼儀ありです。

まして、今からデートに誘おうとしている相手に、女性に、ひと言の声もかけずに堂々と自分が空いた席にスルリと座るやなんて・・・それは、「ないわ~」です。

いやいや、まず、男なら、そこはスマートに、さりげない気配りと優しさで、彼女を座らせてあげてよ。それでもって、この楽しい会話を続けて、より高得点を稼いで欲しかった。
なのにわざわざ、自分からマイナス何百点して、どないしますのん?大学生くん。

空いた席に座ったのが悪いんじゃ無いんです。

楽しく会話している相手が、まるでそこにいないかのように「空いたよ、座る?」とか「座ってもいい?」とか、目の前の相手と楽しい会話を続けられるための〝会話〟をすること無く・・動いて・・

自分だけが「ラッキー」と座ってしまったことが=相手をイヤな気持ちにさせ、傷つけてしまったことに気がついていないことが問題なんです。

それは、言い換えれば、楽しい会話は「これでおしまい」と、自分で終了ゴングをカーンと鳴らしてしまったことと同じだということです。
だから、もう、彼女の気持ちは戻りません・・・多分。(私は、彼女の一瞬にして変わった表情からそう読んだのでした。)


案の定、彼女は先ほどとは打って変わって、その瞬間から、ひと言も喋りませんでした

流石に、大学生くん、終点の駅に着く30秒前くらいになって、やっと彼女の異変に気づき…。
(目の前に立つ彼女の何とも言えない雰囲気漂う全身オーラに、どうしようと人ごとながらドキドキしていた私は・・、ちょっと、遅いやろぉ~と、大学生くんに突っ込みたくなりましたが、)

大学生くん、〝これは、おかしい、どないしたん?〟というような顔で、彼女を見上げていましたが、どうやら自分の犯した過ちが、いまだに理解出来てない様子。

そして、電車はゆっくりと駅に着き、ドアが開くと。

彼女は、無言でクルリと大学生くんに背を向けて、さっさと降りる人の波に乗ってひとりで電車を降りていきました。

その姿に慌てた大学生くん、すぐに立って彼女の後を追おうとしましたが、逆に座っているが為に人の波に乗れずにモタモタ。

と、彼女の姿が目の前から消え。慌てた大学生くん、人の波をかき分け私の前を必死になって出て行きました。

その姿に、イジワルではなくて。
なんで、それほど必死になって彼女のあとを追いかけるくらい彼女が好きなら、一声かけて彼女を座れてあげるという、小さな思いやりの行動が出来なかったんですかね…と、人の波をかき分けていく大学生くんの背中に心の中で語りかけてしまいしたが。

でも・・、きっと、彼女は見つからない。

人の波にまぎれて。
足早に出て行った彼女が、ホームのどこかで手を振って、笑顔で大学生くんを待っていてくれているということは・・まずない・・と思ったから。

私が車外に出ると、人の流れに逆らって、大学生くんがホームをウロウロしながら、彼女の姿を探しているのが見えました。
が、彼女の姿は何処にも見えず、そこから消えていました。

そこは・・、
目の前に丁度、階段とエスカレーターがあり、彼女がそのどちらかを使って中2階改札口から出たのか。或いは、そのまま真っ直ぐに歩いて3階改札口から出たのかは、ホームに溢れる人の数と、流れるように歩く人の波が早すぎて分からない。

分からない。から、これは私の想像ですが。

多分、今頃、彼女は前半の会話が楽しすぎた分、最後の大学生くんの行動に急降下で落ちた心は〝二度と会いたくないヤツ〟と思ったか。

或いは〝信じられない!〟と心の中でモヤモヤした気持ちを持ったまま、今頃早足に家路を急いでいるだろうなぁ~、と思うのでした。

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知らないことが知りたくて、メンタル、カルマ、礼法に漢方スクール…etc.とお勉強。で、ですね、人を動かしているのは無意識、でも、この無意識を味方につけるとスゴいんだ~と気づいたら…、なぜか、「えっ?!そうくるかぁ~」と、色んな場面に遭遇しれしまう…という面白いことが起こりだすのでした。

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