人と人とをつなぐシステム

今と昔と比べて違う事ってなんでしょうか?IT技術の急速な発達によりネット社会が広まり、全く知らない人や、遠い外国に暮らす人とも容易に繋がることが出来るようになりました。同じ趣味やライフスタイルを共有する人がネット上で集まり、情報交換をしたり、共に楽しんだりできるようにもなり、その恩恵は数え上げたらきりがありません。しかし、一方で、現実世界での人と人との繋がりがどんどんと希薄になってきている事も事実です。

老人の孤独死や母子家庭の餓死など、深刻な事件が後を絶たず、効果的な解決策がみつけられないまま、それでも社会はどんどんと発展を続けています。

『おっさんレンタル』や『レンタルフレンド』というビジネスが成り立つのは、社会が人と人との繋がりを求めている事の何よりの証明ではないでしょうか?

代理祖父母というサービス

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筆者が住むここオーストラリアでは『代理祖父母』というサービスがあります。それほどメジャーなものではありませんが、ちゃんとニーズがあります

実家が海外にある移民の人々や、国内でも遠くてなかなか帰省が叶わない人々、また、子供はいるが海外に住んでいるなどの様々な事情で孫に会えない祖父母がいます。子供がいない人、孫がいない人、祖父母が亡くなっている核家族、また、周りに家族がいない片親家庭など、理由があってこの『代理祖父母』サービスを求めている人がいます。

これらの人々を繋げるサービスが『代理祖父母』サービスです。

しくみ

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インターネットのウェブサイトを通じての登録制です。

家族側
祖父母を必要としている家庭は、1年間の登録で60ドルを支払います。まだまだマイナーなサービスで、登録者数が少なく、運営費用を捻出するための最低限の費用がこの値段となるということです。登録が済んだら、名前や住所などの連絡先、家族紹介文を書き込みます。

祖父・祖母側
祖父母側は無料登録で12カ月間情報が掲載されます。子供と接することになるので、警察の無犯罪証明書を提出することが義務付けられます。また、救命救急の講習を受ける事も任意の義務となります。祖父母は、両方そろっている必要はなく、祖母・祖父それぞれ個人で申し込みが可能です。45歳以上で、健康で日常生活に問題のない人であれば誰でも登録できることになっています。


両者ともに、ペットの有無、喫煙・禁煙の有無、運転免許や公共交通機関の利用の可否などを記入する欄があります。

登録が終わったら、あとは、自分の地域に住む祖父母・家族を検索し、メッセージを送り合う事が出来るようになっています。その後、代理家族としての関係を続けていくのか、定期的に交流を持つのかは個人個人に一任されます。

サービスを利用している人々【祖父母側】

このサービスは、介護者を探すものでも、ベビーシッターを見つけるためのものでもありません。双方が持つ自由な時間を使い、共に楽しく有意義な時間を持つためのサービスです。

【代理祖母希望グレンさん】
シニア向けのマンションに一人で暮らすグレンさん、子供は三人いましたが、一人を癌で亡くし、その5年後ご主人も他界しました。孫は4人いますが、みんな遠く離れて暮らしているため、会う事さえも難しく、今一度母になり、祖母になり、家族との時間を楽しみたいと、このサイトに登録しました。

【代理祖母希望ナレレさん】
独身で50代半ばのアクティブなナレレさん。姪っ子や甥っ子はいるものの、みんな遠く離れて暮らしているため、ほとんど会う事が出来ません。日常の生活に、継続性のある人との繋がりを持ち、家族の一員として迎えられることを望んでサイトに登録しました。

【代理祖母希望ニーシーさん】
すでに二人のお孫さんがいるニーシーさん。お金持ちでもないし、大きな家があるわけでもないけれど、子供が大好きで、片親家庭のお母さんをサポートして、おばあちゃんのいない子供たちのおばあちゃんになって支えてあげたいと希望してこのサイトに登録しました。


代理祖父希望ジェームズさん
50代後半独身のジェームズさん。政府関係の仕事から最近引退したばかりです。子供たちが人生に於けるポジティブな経験をすることを助け、支えになれたらと応募しました。ボランティアとして、小学生の子供たちの相談役にもなっているジェームズさんは、それぞれの子供たちの年齢にあったアクティビティを一緒に経験させてあげたいと希望しています。

代理祖父希望ブレットさん
最近引退したばかりの元警察官のブレットさん、妻との二人暮らしで、ご自身の娘さん、お孫さんがいます。子供たちと時間を過ごし、人生を分かち合いたいとサイトに登録しました。地元の集まりにも積極的に参加し、DIYでいろんなものを作るのが得意です。

サービスを利用している人【家族側】

【メラニー一家】
母一人、子(五歳)一人の母子家庭で、メラニーさんの家族はみんなドイツで暮らしています。一人っ子で、親族もいない娘の人生に、彼女の声に耳を傾け、時には一緒にお茶をしたり、散歩したり、喜びを共有する自分以外の大人がいてほしいとサイトに申し込みんした。

【サビーン一家】
離婚後シングルマザーとなったサビーンさんは3歳の息子との二人暮らしです。離婚後に引っ越してきた土地で、家族も知り合いもなく、新しい一歩を踏み出したばかりです。楽しく、元気で明るい二人、共に喜びを分かち合える繋がりを求めてサイトに登録しました。

クリスティーン一家
40代の妊婦で、事情があり一人で子育てをしていくことになるクリスティーンさん、両親は近くにいるものの、生まれてくる子供に少しでも多くのサポートがあってほしいと願いサイトに申し込みました。

エマ一家
夫と離婚して、2歳のダウン症の娘を一人で育てる40代のシングルマザーです。家族はイギリスにいるため、娘の人生に、自分以外の大人が存在してくれることを望んでサイトに申し込みました。一緒に公園で遊んだり、散歩をしたり、シンプルな楽しみを分かち合える人を探しています。

ビアンカ一家
母が他界し、父は再婚して遠くへ引っ越してしまったビアンカさん。ご主人と二人の子供たちとの四人暮らしですが、子供たちに祖父母がいてほしいとサイトに申し込みました。

ローレン一家
もうすぐ一人目の子供が生まれるご夫妻。互いの両親は地方で暮らしており、関係は良好です。ただ、子供の人生のお手本になり、共に支えてくれる人がいたらと望んでサイトに申し込みました。

このシステムを知って感じる事

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人の良心と誠実さを信じる気持ちと、人と人との繋がりを大切にしたいという思いがベースにあって成り立つシステムです。昔は、こういうシステムなどなくても、近所の人が一緒になって子供を見守っていました。両親以外の人から教えられたり、叱られたりが日常的な風景でした。でも、今はそうはいきません。そういう社会を悲しいとも淋しいとも思うのは筆者だけでしょうか?

ここでは、一人暮らしの老人や、片親家庭だけではなく、両親がそろっている家族も、すでに孫がるという人たちもサービスを利用しています。お年寄りは、自分たちが若い世代にしてやれることを考え、また、若い世代は、年配者の存在の大切さを認識し、子供を見守ってくれる第三者の目を尊重しています。若い人の子育てを批判したり、口うるさいと義両親の言葉を撥ねつける人も多い中で、こういうシステムが成り立っている事を知ると、なんだかほっとしませんか?

まとめ

夫が不治の病で他界し、海外で、家族や周りのサポートもなく、突然4歳の息子との二人暮らしになった私自身もこのサービスに登録しました。やっぱり、息子の人生に、自分以外の大人が存在してほしいと思います。どんな便利な社会になっても、やっぱり人と人との繋がりはとても大切です。たとえば、そういう他者との繋がりを大切にする環境で育てていくことは、先々でのいじめや引きこもりを防ぐ一手となったり、また、祖父母側となる老人にとっても、鬱や孤独死を回避する一つの手段となり得るのではないでしょうか?

この記事を書いたユーザー

Maria このユーザーの他の記事を見る

オーストラリア在住。息子が生まれて一年半後、夫はアスベストが原因の悪性中皮腫という、これといって有効な治療法もない、強烈な癌を発症。そして、二年の闘病を経て他界しました。今は、5歳になった息子と二人、夫の眠る地で、毎日を大切に生きています。中皮腫の闘病記・アスベストの事・死別後の息子との二人三脚の毎日をブログに綴っています。http://ameblo.jp/maria1428

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