記事提供:まぐまぐニュース!

ゲームや漫画に登場する釘バットですが、そんな「武器」に、有名漫画家、レイヤー、メイドカフェの女の子が次々とドハマリしているのだとか。

メルマガ『「まちめぐ!」吉村智樹の街めぐり人めぐり』では、おそらく日本で唯一の釘バットアーティストとその作品を紹介しています。

Feel so BAT!おそらく日本唯一の「釘バットアーティスト」

釘バットをかまえるこの男の正体は、いったい…。

今回は今年(2015年)2月と10月、ともに名古屋で開催された「釘バッ展 名古屋」「釘バッ展 名古屋2」の模様をお届けしたい。

「釘バッ展」とは「釘を打ちこんだバットの展覧会」のこと。ちまたでは日々さまざまな美術展が催されているが、これほど凶暴性をおっぴろげに可視化したエキシビションはそうそうないだろう。

開催場所は、2月は大須。場所は築古木造の美容室の屋根裏部屋にある、その名の通りおどろおどろしいムードが漂う怪奇雑貨画廊「化け猫屋敷」

商店街のはずれの、さらに2階部分が会場。

ギャラリーがある「化け物屋敷」へはいったん美容室に入らねばならないというハードルの高さ。屋敷内は壮観なる地獄ぶりで、ぜひ取材をさせてほしかったが、残念ながら撮影禁止。

10月は名古屋駅前の歓楽街。妖気から打って変わってご陽気に、刺身や鍋など和食もいただける奇特なメイドカフェ「PaletteMaidcafe(パレットメイドカフェ)」

ガレージ感の漂う呑み屋街に唐突なメイド服。

天然真鯛の刺身や鍋料理など割烹なみに和食が味わえるユニークなメイドカフェ。メイドさんとのフォトは、ムール貝の白ワイン蒸しと同じ値段。「釘ラーメン」は、釘バットの作者自らが腕を振るう釘バッ展開催期間の限定商品。

両極端ではあるが、どちらも一瞬、足を踏み込むのに戸惑いをおぼえるという点では共通する。近寄りがたいまでに変貌を遂げてしまったバットを展示するには、どちらも格好のバッターボックスだ。

陳列された「釘バット」の数々には、「う…」と固唾を飲んでたじろがずにはおれない。釘バットはよく「Spiked bat」の名で海外の不良格闘ゲームのバトルアイテムとして登場するが、現物を見たことがある人はきっと少ないはず。

化け物屋敷の2階に展示された釘バットの数々。

作品には実際に触れることができた。

戦慄の釘バットコレクション2015

まのあたりにすると、静物であるはずのバットが、釘を打たれることで痛みとともに命を宿して獣性を帯び、どくどく怒張しながらもんどりうっている錯覚をおぼえる。

なんてバット、いやバッドテイストな。

「これで頭にジャストミートされたら、僕の脳みそは左中間を駆け抜けるな」と、とびきり危険な珍プレー荒プレーを想像してしまう。

メイドカフェの壁に釘バット。緊張感がすぅぃつ(はぁと)な雰囲気を一変させる。

釘バットが「お帰りなさい。ご主人さま」と出迎えてくれる。

釘バットともにすごすティータイム。

こちらのメイドさんたちは、有事に備えたなんらかの訓練を受けている模様。

反面、これほど鬼気みなぎるオブジェでありながら、どこか懐かしく、とぼけたユーモアもまとっている。

夕焼け映える河川敷で学園の番長どうしが対峙し、10円ハゲの子分たちが手に手にかまえる、脅しの効果こそあっても実効性の薄そうな駄兵器。

そんな昭和学園マンガのワンカットのような、牧歌的な茶目っ気も魅力の一面だと思えた。

そういえば、ジャンルは違うけれど、ギャグ漫画「ダメおやじ」でオニババが夫のダメ助を殴る際に使う武器こそが、僕が初めて見た釘バットだった(夫を殴る武器、という設定もいま考えたらすごすぎるが)。

このように、ここに列する釘バットの数々は殺気とほのぼのの両面が見てとれるスイッチヒッターな芸術なのだ。

そしてなにより「バットに釘を打つから釘バット」という圧倒的な制約があるにも関わらず、すべての作品の表情が異なるという、作者の創意工夫の快打製造ぶりに驚かされる。

木製があれば金属バットもあり、ハロウィンカラーなど色あいもとりどり。

叩きこまれた釘のタイプも多種多彩で、15メートルにも及ぶ有刺鉄線を巻きつけたよりいっそうデラックスアウトなものまで。

釘とバットの組み合わせで、これほど飛距離の異なる表現ができるのかと感動しきり。

ハロウィンカラーがほどこされた逸品(間違っても渋谷の交差点では使用するべからず)。

しかもこの釘バッ展にひしめく造形作品は、観覧者がグリップ部分を実際に握って「体感」できる。

ずしんと手のひらに沈むヘヴィなタッチの釘バットは地獄の鬼の鉄棒を思わせ、そうかと思えば軽やかでシャープな作品を握ると聖剣を手に入れたかのような万能感が胸の内から湧いてくる。

見た目だけではなく、つかんだ際に芽生える感情が異なるのも、不思議にときめいた経験だった。

そもそもどうして釘バットを作り始めた?

作者の名は「釘バットさん」さん(釘バット「さん」までがアーティストネーム)。

年齢は不詳だが、4月44日生まれという和風オーメンな生誕月日だけは公表されている。

そんな釘バットさんさん(以下、釘バットさん)はバットに釘を打ちこんでアート作品にするという行為を、いつ、なにがきっかけで始めたのだろう。

作り始めたのは2004年です。きっかけは、むしゃくしゃしていたから。その当時、mixiの日記に「こんなにむしゃくしゃするんなら釘バットでも作ってやろうか(笑)」と書いたんです。

僕が大好きなパンクバンド「QP‐CRAZY」のボーカリストであるザ・クレイジーSKBさんがヴィジュアルのシンボルにしていたのもあって、以前から釘バットには興味はあったんです。

するとまわりからの「やれやれ」という反応がすごくて、じゃあ実際にやってみようと、バットを買いにホームセンターへ行くところから始めました。

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店員さんに「金属バットですか?木製ですか?軟式野球用ですか?硬式ですか?」って訊かれたんで、「いや、どっちでもいいです。釘バットを作るんで」と。そのときの店員さんのけげんな表情は面白かったですね。

そして6種類のサイズが異なる釘を打ちこみ、mixiに「釘バットができるまで」のセルフリポートを書いたら、これもまたドカンと反応があったんです。それから今日まで11年ですね。

素材を手に入れる行きつけは「コーナンプロ」というホームセンターで、もう僕の庭です。

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むしゃくしゃしていたからという初期衝動から開幕戦を迎え、マイミク(←懐かし!)からの声援に応えるためにアートの打席に立ち、以来11年にも渡り精魂込めて何十本ものバットに釘を打ちつけている釘バットさん。

釘1本にもこだわりを貫き、専門業者からわざわざ取り寄せることもあるのだとか。

11年間で1本たりともバットが割れたことがないというから、その品質と、ものづくりに向かう姿勢に背筋が伸びる。

作家であり、かつ職人としても、釘バット界の第一人者なのだ(と言っても、この人ひとりしか知らないのだけれど)。

6タイプの釘を打ちこんだデビュー作品。パンクな初期衝動が伝わるピュアな形状。

あこがれのボーカリストであり、レーベル「殺害塩化ビニール」の社長、ザ・クレイジーSKBも釘バットさんの作品を手にした。

遂に殺害塩化ビニールとのコラボ作品が誕生。

手にしてみると、釘の形状へのこだわりや、打ちこむ配置の工夫がよりいっそう理解できる。

それにしても、こんなに硬いバットに、よく釘が刺さるなあ。木製はまだわかるが、金属バットにいったいどうやって釘をパンチするのだろう。

金属バットは、重さ900グラムある金づちで、力ずくで打ち込みます。火花が散りますよ。

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火花が!これら釘バットは、そんな凄絶な状況下で生まれていたのか。もはや釘バット界の芥川賞作家だ(と言っても、この人ひとりしか知らないのだけれど)。

金づちで打ち金属バットを貫通させた、まさに「力量」が試される渾身の一作。

「取り扱い注意」の警告札に折れた釘と血糊。「使用後」を演出したとりわけホラー色が強い名作。

そうかと思えば、こんな雅で愛らしい作品も。

釘バットを発明したのは日本人捕虜だった!?

そういった真摯な作品づくりが同じクリエイターの胸に共鳴し、他の作家とともに制作された貴重な釘バットもある。それが、グリップ部分が鞭になっているというツーウェイシステム(?)な作品。

鞭を手作りしているマッドスタースパイダーさんっていう作家さんがいるんですけど、これはその方とコラボした作品です。見た目こそ恐ろしいですけれど、実際はバットの部分も鞭の部分も使いにくいという(笑)。

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ふたつの悪意が結びついた、「ハイドとハイド」と呼ぶべきこの凶悪な釘バットは、SMプレイにおいてはひと振りで二度おいしい便利なツールのようであるが、

実用できないゆえにピュアなアート作品に結実していた(むろん、すべての釘バットがアート作品なので、すべてが実用不可だが)。

埼玉県の奥地に済む鞭作家マッドスタースパイダー氏とのコラボ作品。劣悪な環境で独特な進化を遂げた深海魚のようだ。うしろでバイクにまたがる女子たちもイイ味してる。

こうして作品を鑑賞していると、根本となるバットそのもののヴァリエーションも豊かで、球史ミュージアムのごとき楽しさがある。このいいあんばいなバットたちは、いったいどこから入手するのだろう。

新品と経年劣化したものの両方ですね。古いバットは風合を出すために雨晒しにしたり、敢えて傷つけるなどして、その味わいを活かします。

たとえば、ニスを塗ってみたらいい感じにおどろおどろしくなったので、上からいわくありげなお札を貼ってみたり。もちろん本物を貼ると本格的にヤバいんで、デザインを変えて、それらしいお札を作って。

中古のバットの入手先ですか?けっこうネットオークションに出るんですよ。それで、なんでもいいから10本セットを買い、そこからいいものをチョイスします。そうすることで珍しいバットにめぐりあえることもあるんですよ。

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確かに、なかには少年用を超えて幼年用と呼びたくなるほどサイズの小さな珍バットも。よく見るとグリップエンドには、おそらく以前の持ち主の苗字と思われるひらがな3文字が。

これ、謎なんです。出品者の名前とは違うんですよね。

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すぎの…誰?

出品者とは異なる名が書かれているというミステリアスなバット。そこに至る背景には闇のフィールドオブドリームスがありそうで、想像するだけで胸騒ぎの放課後だ。

釘バットさんはこれを「すぎのモデル」と命名し、いつくしんでいる。釘バットさんが造るオブジェには、迫力だけではなく、こころの陰の部分を見つめさせる、切ない郷愁があるのだ。

実は釘バットは日本人が発明したという説があるんです。というのも戦時中にオーストラリアで捕虜になった日本人が作ったという記録が残されているんですよ。

日本人の捕虜はおとなしいしふるまいがしっかりしているんで、野球も好きにやらせていたみたいなんです。バットはもちろん手作りです。

そして脱走するときに護身と防衛用にバットに釘を打った。それが釘バットの最初だと言われています。オーストラリアの戦争博物館には元祖釘バットがあるらしいんです。

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なんと、釘バットは我々の先祖が生みだしたものと言う説があるのか。とげとげしさを凌駕するノスタルジーを感じるのは、そのためなのかも。

釘バットを手にした女子のエロティックな写真の数々

釘バットさんの作品は、これら現物だけではない。明日をも知れぬ生きざまがにじみでた少女たち、女性たち、男たち被写体が釘バットを手に威圧するバイオレンスでエロティックな写真の数々もまた、すべてが衝撃だ。

未成熟な女子たちがいかつい釘バットで武装するさまは、誰しも人生に一瞬吹き荒れる明日なき暴走の季節を見事に活写している。

これら人物と釘バットのバッテリーは、どういうきっかけで生まれたのだろう。

プロのモデルを使って撮ることはほとんどないですね。最初は友人や知り合いを撮るところから始まったのですが、現在は応募が多いです。

東京の中野に「テクノブレイク」という店があって(フェティシズムの充溢した特殊なファッションや雑貨の販売店)、そこに釘バットを展示していたんです。

すると、その店に来る女の子たちが釘バットを持って写真を撮るってのが流行っちゃって。しまいには僕が釘バット女子アワードの審査委員長にまでなったり。

そうしてサブカル好きな女の子たちのあいだで知らないうちに勝手に僕がカリスマになっていって、「撮られたい」って娘が増えたんです。

コスプレイヤーやメイドカフェの女の子だったり、ただの学生や普通のOLさんたちが噂を聞きつけて「私もやりたい」って。

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なるほど、ここに写っている被写体の多くは、釘バットを握って写真を撮りたいと志願してきた人たちだった。

それにしても、どの顔も、絶望と恍惚が二律背反になった、いい笑みをたたえている。釘バットを持つことで、ブドウの皮が破れて濡れた果肉がはじけるように、幕を張っていた感情がほとばしっている。

圧しこまれていたこころの飛沫をカメラが絶妙にとらえているのだ。

男女関係なく釘バットを持つとニヤつくんですよね。持っちゃいけないようなものを持つ、なんとなくのうしろめたさ。「こんなヤバいものを持ってるぜ」というイイ感じのバランスで多くの人はニヤッとするんです。

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あの(自称)超能力者も!

続々登場、大御所マンガ家先生

ニヤつくといえば、この釘バッ展は漫画ファンにとってもニヤケがとまらない目玉がある。

それが色紙。

「まいっちんぐマチコ先生」のえびはら武司さんなど、高名な漫画家たちが自身の作品の登場人物に釘バットを持たせているではないか。大ベテランから若手まで、時代を超越して釘バットのもとに集い、アンソロジー化しているのが素晴らしい。

「まいっちんぐマチコ先生」のえびはら武司さんの直筆釘バットサイン。えびはら先生はことのほか釘バットを気に入り、以来多くのビジュアルを担当してくださることに。

いったいどこでどうやって漫画家さんたちと知り合い、このようなドリームマッチがなされたのだろう。

僕は小器用だったので、ずっとパチンコ雑誌などでイラストや漫画を描いていたんです。それもあってFacebookを通じて漫画家の方々とつながりを持つようになりました。

最初は僕がお願いして描いていただいて、少しづつ増えてゆき、そして釘バット色紙の画像をアップするうちに「僕にも描かせてくれ」と言ってくださる方が現れるようになり、その噂が次第に漫画家さんたちの間で広まっていったんです。

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僕が初めて釘バットを手にしたとき、まず思い浮かんだのが先述したように「漫画」だった。

門外漢の僕ですらそうなのだから、当事者の漫画家さんたちは、アートでありながらわかりにくさがみじんもない、さわやかで一点の曇りがないほどに邪悪な釘バットには「実写化」と言える強いシンパシーをおぼえたのだろう。

えびはら先生公認の、マチコ先生がハートを狙い撃ちにする釘バット。これで殴られたら、まいっちんぐどころじゃ済まない。

「GTO」の藤沢とおる先生も参戦!

「包丁人味平」のビッグ錠先生、「名たんていカゲマン」の山根あおおに先生など、大御所も黙っちゃいない。

そして、どうしても避けられない質問をしなければならない。これら釘バットが、なんらかの法律をおかしてはいないか、ということ。

僕自身も気になって弁護士に相談したんですが、銃でも刀でもないし、あくまで造形作品であり、鑑賞以外の用途がないことが証明できれば問題ないと。

個展などでの運搬の際も展示会場まで釘で何かが傷つくことがないよう厳重に梱包しています。ただ初期の頃は職務質問をされました。河川敷で釘を打ったり塗装をしていたら「なにしてるんだ」と巡回の警察官に声をかけられたことがあります。

作品を作っているんだとちゃんと説明したら、笑って「まぁ、ここではなく、家でやりなさい」と言われました。それ以来、釘バット事務局と呼んでいるゆるいアジトのあるビルの屋上などで作っています。

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実際、釘バットを手にしてみると、獰猛になるどころか、むしろ日ごろ抑圧していた荒らかな感情が消え去り、気持ちがおだやかになるのを感じる。

有名な漫画家たちの芯をとらえ、モデルを志願する女子があとを絶たず、11年にも渡って支持されている理由は、その安打の部分にもあるのではないだろうか。

今年は釘バットをテーマとしたファッションショーも開かれました。

悪ふざけから始まった釘バットですが、「飽きるまでやりたい放題やる」という気持ちでやってきたら、いつのまにかいろんな人たちを巻き込んで、コラボ企画が生まれたり、縁ができました。

これからは全国の主要都市で個展を開きたいですね。

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2016年は、あなたの街で、釘バットさんがフルスイングした作品に出会えるかも。そして実際に手にしてみると、よりいっそうそのストレンジな魅力が伝わってくるのだと、釘をさしておこう。

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