夫との死別や離婚で、シングルマザーとなった女性が子供を養うために、フルタイムで働くというのは世界中どこにでもあることですが、エジプトのルクソールで「男」に姿を変えて43年間働き家族を支えて来た1人の母親が、国から表彰されたという出来事をご紹介しましょう。

妊娠6カ月の時に夫が逝去

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ルクソール在住のシサ・アブ・ダオさん(65歳)は妊娠6カ月目に夫に先立たれてしまいます。子育てのためにはお金が必要。そこでシサさんは、男の姿で働くことを決意したのです。

何故、男の姿に変えたのか?

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当時、エジプト社会では女性が働くということは容易ではありませんでした。宗教上の理由により、女性は黒いニカブを着用しています。当然「女性」の象徴であるためにこのままだと仕事が見つからず、子供も養ってはいけない。そう思ったシサさん。

「女」を捨てて「男」として働くと決めたのです。そして髪を剃って男性用の服を着て、街中に仕事に出て行ったのです。

ある程度年を取ってきてからは、靴磨きの仕事をしていたシサさんですが、最初の仕事はレンガを造る作業というまさに男の仕事でした。当時、まだ21歳だったシサさんに家族は再婚を強く薦めましたが、シサさんは男として生きる道を選んだのです。そんなシサさんに家族は同情どころか怒りを露わに。

では、再婚を拒否するほどご主人を愛していたのかというと、実はそうではないのです。親同士が決めた結婚だったために、シサさんは夫を愛してはいなかったそう。それでも子供ができるということで、子供を育てていくために働くことを選んだのです。

容易ではないことにチャレンジしたシサさん。きっとどの女性よりも自立心があったのでしょう。好きでもない人とまた再婚させられるぐらいなら、男として働いて子供を守るという意志が強かったのだろうと想像します。

男尊女卑や女性に対するセクハラも経験することなく、男の恰好をして仕事をしているシサさんを、当然誰もが男だと思っていました。働き続けて43年。生まれた娘が成長し、結婚してシサさんには孫ができました。

ところが、不運なことに義理の息子の体調が悪く働けないということを知ったシサさんは娘家族を養うために、自分が代わりに働き続けたのです。

読み書きができなかったシサさんはただひたすら働き家族を支えた

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今ではシサさんが女性だということを知っている人も多くなったそうですが、今でも娘家族のために靴磨きの仕事をしているというシサさん。(写真はテレビのインタビュー時)

大統領から「最も献身的な母」として表彰された

出典 http://www.theguardian.com

そんなシサさんの姿がメディアの目に止まり、なんとシサさん、大統領から表彰されました。シサさんのことを知った地元の自治体がシサさんを「最も献身的な母親」に選んだのです。

これからも男として仕事をして生きて行くというシサさん。43年間、夫に先立たれてから自分を犠牲にして男として働いて、必死で子育てをしてきました。娘のホダさんには自分と同じ辛い道のりを歩んで欲しくない、だから自分が代わりに働き続けるのだとシサさんは言います。

読み書きができなくても、性別を変えてまで体を張って仕事をし続けて来たシサさんの、まさに子供を想う献身的な愛情は何ものにも勝るでしょう。もう今は女性であることを隠す必要もなくなりました。

それでも、朝が来れば、またシサさんは男の恰好で靴磨きの仕事に出かけるのです。こんな素晴らしい母親に育ててもらったホダさん、きっと死ぬまで感謝を忘れないでしょう。65歳になったシサさんですが、これからはちょっとゆっくりペースで生きて行くのも悪くないでしょう。43年間、ずっと頑張り続けてきたのだから。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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