11月22日に放送された『誰も知らない明石家さんま 史上最大のさんま早押しトーク60th Anniversary』(日本テレビ系列)では、明石家さんまさんの数々の逸話が紹介された。

過去に世間を賑わせてきた女性スキャンダルの検証や、さんま若かりし頃の純愛を芥川賞作家・又吉直樹さんの脚本で描いたドラマまであって、笑いあり涙ありの見どころ盛りだくさんの番組だったように思う。

番組の中で、筆者が特に心を揺さぶられたエピソードが二つあった。

ひとりのファンが想いを乗せた「千円札の奇跡」

これは、これまでも何度もメディアでも登場しており、「さんま伝説」の中では割と有名なエピソードだと思う。

30年前、さんまさんが手持ちの千円札に目をやると、こんなメッセージが書かれていた。

「さんまさん!いつかあなたの手にとどくことをねがってます。大好きです。」

このメッセージは、東京で生活する女性が書いたもので、人から人へと流通し、なんと、さんまさん本人の手元に本当に届いたのである。

まさに「奇跡」と言えるが、こんなことが起きてしまうのは、やはりさんまさんが「持ってる人」に他ならないだろう。ただ、さんまさんに届くまで、流通過程において、誰ひとり「阻む」ことがなかったのもすごいことだ。もちろん、メッセージに気づかなかった人もいることだろう。でも、手にした人のほとんどが「さんまさんに届くように」と大なり小なり願ったことが、この奇跡を生んだと思わずにはいられない。

30年間、財布に入れて持ち続けたお札はボロボロに

しかし、届いた奇跡より、不覚にも感動をしてしまったことがある。

それは、さんまさんがずっとそのお札を財布に入れて持ち続けていたことだ。今回の番組で、メッセージを書いた本人と初対面を果たすまでの間、さんまさんはそのお札を使うことはなかった。その期間、実に30年。30年といえば、生まれた子どもが成長して大人になって、その子どもが生まれるくらいの長い年月だ。そのお札は擦り切れてボロボロになっていた。

なかなかできることではない。番組では、さんまさんの「神対応」と称される言動も紹介されていたが、このお札のエピソードには、ファンを大切にする姿勢が体現され、凝縮されていると言える。

「ヤンタン一生やります!」亡き恩人への誓い

そして、もうひとつ、心を揺さぶられたエピソードが、MBSラジオの看板番組『ヤングタウン』を降板させられかけた事件。

事件の概要は以下の通りだ。

その事件は、さんまが番組パーソナリティーに抜擢されて間もないころに発生したという。さんまは当時も大きな人気を誇っており、毎週水曜の公開収録には多くの女性ファンが詰めかけたそうだ。

当時、さんまはラジオ局に出入りする美人の広告代理店スタッフと交際していたそうで、あるとき多くのファンが出待ちする中、このスタッフとタクシーに同乗するという行動に出たという。

ところが、番組の創設プロデューサーである渡邊一雄さんはこの事実を知り、翌日さんまを喫茶店に呼び出した。渡邊さんは「ファンが見ている前で女とタクシーに乗るなんて、何を考えてるんやオマエは!」と一喝し、「ファンがいてこその君やろ!」「10万人のファンとひとりの女性、どっちが大事なんや!?」と、さんまに説教を始めたという。

ところが、さんまがそこで「ひとりの女です」とウケ狙いで答えたため、渡邊さんはついに激怒。タイミングが悪いことに、渡邊さんはその直後、さんまが銀座のホステスと密会しているという週刊誌の記事まで発見してしまったのだ。渡邊さんは怒りが頂点に達し、ついにさんまの番組降板を決意したが、ふたりのディレクターが必死に説得して、最悪の事態を何とか収めたという。

出典 http://news.livedoor.com

降板を逃れたさんまさんは、その後、必ず番組収録で毎週大阪を訪れは、渡邊さんの机に置き手紙を残すことを欠かさなかった。

その中に、こんなメッセージがあったという。

「ヤンタン一生やります!」

2010年、渡邊さんは肺がんで帰らぬ人となったが、さんまさんは今も『ヤングタウン』に出演している。その番組を、ラジオというメディアを、本当に大切にされていることがリスナー側にも伝わってきていたが、今回の番組を見て合点がいったところだ。

こんなに律儀でおもしろい「最低男」はいない

さんまさんは、笑いの、しゃべりの天才であることは誰も異論がないだろう。

しかし、何十年にもわたって第一線を走り続けているのは、その恵まれた才能に加え、ファンを愛し、仲間を気遣う、その人間性があってのことだと思う。それが無ければ、どんなに才能があっても、どこかで道を誤ってしまう。実際、そんな人も少なくない。

さんまさんには、それがない。軸を保ち、お笑いに対し、また、自らの役割や使命に対し、ぶれずに真摯に向き合い続ける。昔、『いいとも!』で『日本一の最低男』というコーナーをしていたが、こんなに律儀でおもしろい「最低男」はいないだろう。

男から見てもカッコいい男だ。今回の番組では、「芸人・明石家さんま」という枠を超え、その人間性の輪郭までもが浮かび上がっていた。もはや追悼番組のようでもあった(笑)

ただ、ひとつだけ気になることがある。さんまさんは常々、「テレビに感動はいらん!」と公言している。今回は、どちらかというと「感動」の側面も多い番組構成だった。

「この番組をやるにあたっても、もしかしたら男気あふれるエピソードがあるのかも」と勘ぐりつつ、次回の放送を期待したい。いつまでも、さんまさんをテレビで見ていたい。そう思った夜だった。

この記事を書いたユーザー

marlgoro このユーザーの他の記事を見る

公式プラチナライター。ライター歴、約10年。現在、関西を拠点に活動中。大のテレビっ子です。たまに、ちゃんと取材した記事も寄稿しています。

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス