出典Andre van der Hoeven 氏

Andre van der Hoeven (以下「アンドレ」) が宇宙に魅了されたのは、1981 年にケネディ宇宙センターで打ち上げられた最初のスペースシャトルを見たのがきっかけだった。その後、彼は航空宇宙エンジニアの訓練を受け、今ではオランダで天文学を教えながら、遠距離天体写真の撮影に勤しんでいる。

NASA の Hubble Hidden Treasures (ハッブル宇宙望遠鏡の秘密のお宝) コンテストで準優勝したことをきっかけに、彼はプロやアマチュアの天体写真をまとめた写真集を監修している。Polarr の取材班として Emily von Hoffmann (以下「エミリー」) がアンドレの学んできた技能やノウハウについてインタビューしてきた。

エミリー: 宇宙に興味を持ったのはいつ頃ですか。

アンドレ: 初めて宇宙に興味を持ったのは 4 歳の時です。あの時に見た最初のスペースシャトルの打ち上げのことはまだ覚えていて、当時の新聞の記事が今でも家に残っています。

それから私は宇宙に没頭していましたが、(ちょうどエンジニアとしての勉強を初めた)18 歳になってからは、もう趣味という感じではなくなり 2010 年までこの分野からは離れていました。その年に私は学校で宇宙についての授業を任されることになり、資料を集めていたら、またその熱が戻ってきたんです。

そしてネットで情報を集めながら次々と目の前に映る美しい写真を見て、こういう写真を自分で取りたいという気持ちが湧いてきました。それからすぐ初めて望遠鏡を買って、天体写真の撮影について学び始めたんです。

出典Andre van der Hoeven 氏

エミリー: それまで他のジャンルの写真の経験はあったのですか。

アンドレ: 若い頃 (15 歳くらいのとき) から写真が好きな連中のコミュニティーに入っていました。写真はずっと自分の趣味の一つだったんです。特に風景写真ですね。

実は望遠鏡を買ったときに、旧型ですが天体写真用の CCD カメラもついてきたんです。そこで私はある晩、初めて M51 (通称「子持ち銀河」) を撮ってみることにしました。そして自分のコンピュータに表示された渦状腕を見て感動し、撮影を続けることにしたんです。

天体撮影の勉強中に、チェコのプラハにある技術系大学で 3 ヶ月働くことになり、そこでランドサット衛星 (地球資源探査衛星) の画像を扱いました。そのときに複数チャネル画像の裏にある様々な技術について学んだんです。これは天体写真の画像処理と共通する部分が多いため、この知識が後に大いに役立ちました。

「たまに悪天候が続いて撮影していた被写体が見えなくなり、天気が良くなってからも見当たらないことがあるんです。こうなってしまうと予定していた写真を揃えるのに少なくとも 1 年以上かかってしまいます。」

エミリー:普通の写真を撮るとときと比べた天体写真の物理的な難しさって何ですか。

アンドレ: 一番の難点は時間と天候ですね。天体写真を撮るのって時間がかかるんです。被写体が放つ光量がとても小さいことが多いので、どうしても露光時間が長くなります (露光時間が 30 分ってことだってあります)。

それはまぁ良いとしても、ノイズの少ない写真を撮るには、デジタル信号を増強しつつ、同じ写真をたくさん撮る必要があり、そこに物理的な問題が生じます。

というのもそれらに必要な機材を安全に長時間設置できて、なおかつ空を遮る物のない場所に置いて、夜通し動き続ける被写体を捉え続けなければならないんです。そのため撮影中に被写体が空のどこにあるのかを確認して、慎重に撮影時期や場所を選びます。

そこが普通の写真とは違うところですね。

出典Andre van der Hoeven

もう一つの問題は天候ですが、たまに悪天候が続いて撮影していた被写体が見えなくなり、天気が良くなってからも見当たらないことがあるんです。こうなってしまうと必要なデータをすべて集めるのに少なくとも 1 年以上かかってしまいます。

また我々のようにモノクロ CCD カメラを使う場合、それ以外の色調の写真を撮るには前面に色フィルターを設置します。

そのため 3 つの色 (RGB) のデータ全てと、場合によっては (宇宙に存在する光り輝く水素ガスの雲によって放出される Hα線のような) 特別な狭帯域の色のデータも取れるように、いつどのフィルターで撮影するのかをあらかじめ決めておく必要があります。

ちょうど 3 つのうち 2 つの色を撮り終えたときに、雲が出てきてしまいそのまま数週間撮影できなくなってしまうと、この上ないフラストレーションが溜まります

エミリー: これまでの経験によって学んだ天体撮影で有効なテクニックは何ですか?

アンドレ: 遠距離天体画像を撮るとき、私は専用の CCD カメラを使います。このカメラはノイズをできるだけ小さくするために、マイナス 20 度まで冷やしてあるんです。

私が使っているブランドは QSI というやつで、この種のカメラを専門で作っている会社です。

このカメラの更にすごいところは、内臓されているフィルターの制御や切り替えをコンピュータでできることです。それと私自身が天体撮影で使う最も重要な技術は「重ね (stacking)」と「引き延ばし (stretching)」ですね。

出典Andre van der Hoeven

「重ね (stacking)」は同じ場所の写真をいくつも撮ることです。写真には必ずカメラや背景 (空) によって作り出される何らかノイズが写り込んでいるものです。

それらの写真を重ね合わせて平すことで、(全ての画像で同一の) 信号を増強し、 (画像ごとにランダムに発生する) ノイズを減らすことができます。これは夜間に静止した物体を撮影するときにもとても有効なのですが、あまり知られていない技術のため、あまり使われていません。

もう一つの技術は「引き延ばし (stretching)」です。天体写真では被写体の信号がとても弱くてヒストグラムの下部に埋もれてしまっている場合がよくあります。その部分の明るさをトーンカーブを使って徐々に増やしていくことで、隠れていた多くの信号を可視化できます。

この手順を私たちは「引き延ばし (stretching)」と呼んでいて、これによって最終的な仕上がりが大きく変わるんです。

「目の前に映る 1000 億もの星々にそれぞれ独自の惑星があるというのは驚くべき事実ですよね。私はいつも、もしあの銀河系の人が同じように私たちの銀河を見ていたら、どんな風に見えるんだろうなんて考えています。」

エミリー: 撮影する宇宙の風景や出来事はどうやって見つけるんですか。突然シャッターを切らなければならないこともありますか。それとも毎回必ずシャッターチャンスがいつ来るのか分かっているんですか。

アンドレ: たいていの場合は、前もって撮影準備ができます。望遠鏡に映る映像をシミュレーションできるプログラムがコンピューターに入っているので、それで被写体を選びます。

選んだら、今度は同じプログラムでその望遠鏡での見え方を確認するんです。またこのプログラムを使えば、カメラを向ける方位や角度の最適な組み合わせがわかるので、そに合わせてカメラをセットします。

この種の写真を撮るための機器の準備にはだいたい 30 〜 45 分くらいかかるんですが、いったん問題なく作動してくれれば、基本的には放っておいてもコンピューターに任せておけば全部やってくれます。

出典Andre van der Hoeven

たまに彗星のように寿命が短い物や空を高速で移動する物もあります。こういう被写体を撮るときは気を抜かず、迅速に行動しなければなりません。また天候のせいで思い通りにいかないことはよくあります。

エミリー: 今まで撮った写真の中で最も気に入ってるのはどれですか。

アンドレ: 一番気に入っているのは M31、つまりアンドロメダ星雲の写真ですね。天の川銀河に最も近い銀河系がこれで、私としてはとても印象的な光景なんです。それぞれに惑星を持った一千億もの星たちを見ていると思うと、とても感動します。

私が使っている望遠鏡 (わずか 9 cm という小型の屈折望遠鏡) でも、この銀河系を包んでいる球状星団を識別できるんです。私はいつも「あの銀河系にいる誰かが同じように私たちの銀河を見ていたとしたら、どんな風に見えるんだろう」なんて考えています。

出典Andre van der Hoeven

2 番目に好きな写真は去年の夏に撮った天の川銀河の写真です。この写真を撮影しているときに、流れ星がきれいに跡を残して視界を横切ったんです。

これは珍しいことではないのですが、それから一週間後に誰かが流れ星の軌跡の写真を Facebook にアップしているのを見たんです。それでもう一度自分の写真を見てみると、その人の写真に写っている流れ星の軌跡からきらめく塵の加減と一致していたんです。

そして私が今まで気づかなかった物に目を向かせてくれ、これがどれだけ印象的な瞬間なのかを示してくれた特別な写真となりました。

エミリー: 将来的に撮影したい珍しい (あるいは面白い) この宇宙の物体って何ですか?

アンドレ: 1999 年にフランスで見た皆既日食に大きな衝撃を受け、それが今でも私の将来取りたい物リストの上位にあります。

2017 年にアメリカで起こるときか、または 2026 年にスペインで起こるときには、ぜひ現地で見られると良いなぁと思っています。

私は皆既日食って、一生のうちで目にできる最も美しい物の部類に入ると本気で思ってるんで、皆さんにも人生に一度は見てみることをお勧めします。

インタビュアー: Emily von Hoffmann from Polarr 〜誰でも使えるプロ補正アプリ〜 (Polarr の Twitter はこちら、Polarr フォトエディタはこちら)

訳: 写真・翻訳家TAKUMA

元の記事 (英語): https://medium.com/vantage/the-art-of-space-photography-ca6547c08639#.qdss44e3c

※この記事は Pixel Magazine 様から許可を得て、翻訳・公開されています。

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