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11月13日、120人以上の犠牲者を出す大惨事となったパリ同時多発テロ。ISによる犯行と断定されたこの事件は、今後の世界を大きく変えそうです。メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では、予想される各国の動きを詳細に解説しています。

「パリ同時多発テロ」で何が変わる?

皆さんご存知のように、フランス史上最大、最悪のテロが起こりました。今日は、これについて考えてみましょう。

何が起こったのか?

時事通信11月15日に、「何が起こったのか?」がよくわかる記事がでています。

わずか33分の間に、7か所でテロ。メチャクチャ組織的であることがわかります。フランスのオランド大統領は、「イスラム国の犯行だ!」と断定しました。そして、「イスラム国」は、「犯行声明」を出しています。

動機」は何なのでしょうか?

「フランスが、シリアに介入したことだ」とテロリストは語っていたそうです。

というわけで、

犯行=イスラム国

動機=フランスがシリアに介入したこと

(※フランスは、2014年9月からイスラム国への空爆に参加している)。

パリ同時多発テロ前の状況

以上、13日に起こったことを見ました。

しかし、状況をもっと深く理解するために、テロリストがいっている「シリアで何が起こったのか?」を知る必要があるでしょう。

中東、北アフリカ諸国で2010年ごろから「アラブの春」と呼ばれる革命運動が活発になりました。実際にいくつかの国で、独裁政権が崩壊しています。

2011年末、独裁者アサドが支配するシリアでも、「革命運動」がおこってきた。ロシアは、事実上の同盟国であるシリアのアサド現政権を支持

一方、欧米は、「反アサド派」の支援を開始しました。もちろん今回テロがあったフランスも。この辺は、皆さんご存知ですね。

イスラム国」は当時、欧米が「民主主義を求める善の勢力」と定義した「反アサド派」に属していました。長くなるので、ここでは詳細に触れませんが、「イスラム国」【驚愕の正体】については、こちらの記事をご一読ください。

ロシアは絶対悪なのか。シリア空爆の驚くべき「裏側」

欧米対ロシアの「代理戦争」と化したシリア内戦は激化していきました。

「なかなかアサド政権は倒れない!」

業を煮やしたオバマは2013年8月、「シリアを攻撃する!」と宣言します。しかし、翌9月、「やっぱシリア攻撃やめた!」と戦争をドタキャン。世界を仰天させます。

プーチンの説得により「化学兵器破棄」に同意したアサド。誠実に約束を守り、政権を延命させることに成功しました。

アメリカの熱意が衰えてきたことで、「イスラム国」は「反アサド派」の枠にとどまらない活動を開始します。

2014年1月、「イスラム国」は「独立」を宣言しました。同6月には、「カリフ宣言」。そして、彼らは外国人を片っ端から捕まえ、身代金を要求。「公開処刑」の動画をネット上に公開し、世界を震え上がらせました。

2014年8月、オバマは、「イスラム国」への空爆開始を宣言。同年9月、今回テロがあったフランスが空爆参加を表明。「有志連合国」の数は、どんどん増えていきました。

しかし、アメリカを中心とする空爆は、どうも「本気」が感じられません。1年間空爆をつづけている間、「イスラム国」は弱くなるどころか、逆に支配領域を広げていった

ロシアは、欧米の空爆について、「本気ではない。イスラム国をアサド政権打倒のための武器として使っている」と考えています。

長びくシリア内戦。支配領域を拡大していく、残虐な「イスラム国」。結果、新たな大問題が起こってきました。それが、「大量難民」の問題です。テロが起こる前、欧州のメディアは、毎日「難民問題」がメインでした。

2015年9月30日、ロシアがシリア空爆を開始。「共通の敵イスラム国を打倒するため」という建前ですが、本音は、親ロシア・アサド政権を守るため。それで、「イスラム国」と「反アサド派両方を空爆しています。

「イスラム国をアサド打倒のために利用したい」欧米の「なんちゃって空爆」と違い、ロシアは本気。1か月半の空爆で、アサド政権は元気を取り戻しました。アサド軍は現在、着々と失地を回復しています。これが、「パリ同時テロ」が起こる前の状況です。

「パリ同時多発テロ」で何が変わる?

次に、「パリ同時多発テロ」で何が変わるかを考えてみましょう。

フランス

まず、テロが起こったフランス。オランドさんは、「イスラム国」に逆襲せざるを得ないでしょう。つまり、いままでとは違って、真剣に「イスラム国」を空爆しなければならない。ここでやめたら「イスラム国に屈した」ことになります。

欧州全般

欧州はどうでしょうか?欧州は、今回のテロを、「難民受け入れ拒否」の口実として使うでしょう。というのは、テロリストの中に、「難民が含まれていた」という報道があるからです。

検察は会見で、サッカー場で見つかった自爆テロの容疑者1人の遺体の近くから、シリアの旅券(パスポート)が見つかったと述べた。

旅券の人物はシリアで1990年9月に生まれ、現在は25歳になる。だが容疑者が旅券の所有者本人かどうかは不明。

ギリシャ政府は会見に先立ち、この旅券の所有者が10月3日、トルコ国境に近いギリシャ東部レロス島で難民として手続きをとった記録があることを明らかにした。ギリシャは指紋などのデータをフランスに送った。

出典朝日新聞デジタル11月15日

実際、「難民の中にイスラム国メンバーが混ざっていること」は大問題です。「便衣兵」(=敵を欺くために私服を来た軍人)を大量に入れているようなもの。

というわけで、欧州が今回のテロで、「難民を規制しよう」となるのは、当然の流れですね(難民が欧州に来なくてもいいよう、シリアの安定化が急がれます)。

ロシア

あまりよくない言い方ですが、事実として、「パリ同時テロ」で楽になるのがプーチン・ロシアです。

皆さん思い出してください。「クリミア併合」で、プーチンが「世界の孤児」なったのは、1年8か月前です。今、「ウクライナ問題」を思い出す人は、ほとんどいません。

ロシアのシリア空爆は、当初「反アサド派を空爆している!」と非難されました。しかし、批判の声はどんどん小さくなっています

「パリ同時多発テロ」を受けて、プーチンはこんな声明を出しました。

◇ロシア

ロシアのプーチン大統領は14日、オランド仏大統領に弔意の電報を送った露大統領府によると、プーチン氏は「野蛮なテロ」と非難し「この悪との戦いには国際社会の真の協力が必要なのは明らかだ」と訴えた。

シリア空爆を巡り、ロシアが欧米諸国と対立していることなどを念頭に置いた発言とみられる。

出典毎日新聞11月15日

いつの間にか、「クリミア」「ウクライナ」問題は忘れ去られた。そしてプーチンは、「欧米と共に、共通の敵イスラム国と戦う同志」になりつつあります。1年前には、「ヒトラーの再来」と呼ばれた男が、見事ですね。

そして、「ロシアが欧米と和解にむかう」のは、RPEが3月に予想したとおりです。

アメリカ

「パリ同時多発テロ」前、アメリカは影響力の低下に悩んでいました。

3月、「AIIB事件」が起こり、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、イスラエル、オーストラリア、韓国などが、アメリカを裏切り、中国側についた。

世界は現在、「米中覇権争奪戦」を軸にまわっています。しかし、勝敗は、「その他の大国がどっちにつくのか?」できまる。

アメリカにとって特に痛いのは、味方だと思っていた欧州諸国があきらかに米中間で揺れている。むしろ「中国側」に傾いている

今回のテロで、アメリカは、「イスラム国との戦い」を名目に、欧州への影響力回復につとめるでしょう。

「敵の敵」は味方。「イスラム国」という「共通の敵」を利用し、アメリカ、欧州、ロシアの連帯を構築しようとすることでしょう。

しかし、アメリカは、この連帯を、最大の脅威である中国に対抗するために使うかもしれません。

2001年9月11日、アメリカで同時多発テロが起こりました。そして、世界は大きく変わりました。2015年11月13日、「パリ同時多発テロ」が起こった。今回も、世界は大きく変わるはずです。

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