早生まれと遅生まれの違い

早生まれと遅生まれの区切りをご存知ですか?

早生まれ:1月1日~4月1日の間に生まれた人
遅生まれ:4月2日~12月31日の間に生まれた人

皆さんご存知の様に、どの月に誕生したかによってクラスの中で年齢が違う人が重なって存在する事は普通なことです。極端な話、4月1日生まれの人と、4月2日生まれの人は、同じ学年でも年齢が丸々一年違うという事になります。小学校入学時、4月1日生まれの人は6歳になったばかり、そして、2日生まれの人は7歳になります。成長してくれば、一年の違いというものは大して問題でもなくなりますが、小さいころの一年の違いというのはとても大きなものです。

このことについて、一橋大学の川口大司教授らは論文の中で以下の様に述べています。

同じ学年に属する児童・生徒であっても誕生日が異なると日単位で計った実年齢は異なる。この違いは児童の年齢が低いうちは精神的・肉体的発達度合いの異なる児童・生徒が同一学年に在学することを意味する。 この実年齢の違いが成績などに与える影響を相対年齢効果という。 実年齢差と実年齢の比率は, 児童が年齢を重ねるに従い無視しうる小ささに収束していくため, 相対年齢効果は大人になるまでに消失するというのが一つの考え方である。 しかし, 仮に年齢が低いうちに取った成績が, 親や教師の児童に対する評価や児童自身の自己評価を決定し, またその後のやる気や自信に影響を与えるとすると, 相対年齢効果は永続的なものとなりうる。

出典 http://www.jil.go.jp

つまり、小学校1年生の学習面や身体面、精神面などの差が如実に表れる期間に、周囲から受けた評価や、自分自身に対する「自分は人より出来ない」といった評価・認識は、その後の人生に大きな影響を与える可能性があるという事です。

海外では普通に認められている『就学猶予』

日本では、重い病気や障害があるなどの特例を除いては認められていない『就学猶予』という制度、筆者の住むオーストラリアや、先進国の多くで認められ、実践的に取り入れられています。


所謂『早生まれ』の、クラスでも若いグループと、誕生日が4月にくる大きな子供たちのグループでは、まるまる1年の差がでることがあります。
幼い子供たちにとって、1年の差はとても大きなものです。体の大きさも、学ぶスピードも、質も、あらゆる面でハンデとなり得ます。また、医療の発展に伴い、超未熟児の状態で誕生する子が増え、早生まれな上に、他の子よりもぐんと体も小さく、いろんな面で発達が遅れている子供たちもいます。しかし、もしこれらの子供たちに、「あと一年」の猶予が与えられればどうでしょう?子供たちは、一年の間で驚くほど成長します。

この成長面での『差』を考慮して、親や幼稚園教師が、児童の精神的、身体的、情緒的発達が
十分でないと判断する場合、就学を1年遅らせる事が出来るのが『就学猶予』です。


就学すると、今までの遊びが中心だった毎日から、学びが中心の、今まで以上に規律正しい学校生活というものがはじまります。ひらがなや足し算引き算からはじまって、いろんな科目を勉強し、集団行動を学び、子供たちにはノンストップの学びの毎日が待っているのです。突然の環境変化のなかで、この『個人差』というものは、その後の学校生活にも、そして人生に於いても大きな影響を及ぼす可能性があると懸念されています。

「早ければ早いほど良い」という神話

今の時代、どんなことも早く始めれば早く始めるほどいいという考え方が蔓延しているように思います。勉強も、早い子では3歳に達する前からひらがなや計算をはじめ、ピアノ、バレエ、英会話、水泳、お習字、絵画、テニス、ゴルフ、など、多い子では週に4つ以上の習い事を就学前の時点からはじめていたりします。子供の将来を思い、習い事をさせる事は素晴らしい事です。しかし、子供の年齢が低すぎる場合には、過度のアクティヴィティは、逆に有害となり、健全な精神・身体・情緒発達を阻害することにもなり兼ねないのです。

今の子供たちから奪われつつある、

『子供が子供でいられる時間』

というものは、子供たちの成長発達に於いて、とても重要な役割を果たすといわれています。自分で物事を考え、行動出来る「イニシアティブ」や、想像力を働かせ一人遊びをすることで発達していく「クリエイティヴィティ」を育てる時間を十分にもつということが、豊かな人生を送るうえでの大切なキーとなるのではないでしょうか?

ケンブリッジ大学で幼児の認識発達を研究するホワイトブレッド教授は次の様に述べています。

「子供たちは、少なくとも7歳に達するまでは「遊びを土台にした学習」に取り組むべきである。遊び中心の幼児教育を長くうけた子供は、長期的にみたときに、あらゆる面で有利な結果を得る事が実験に於いて証明されている。学術的にも寄り良い成績を残し、感情面でもより幸福感を得る事ができる。」

自信を持って人生の第一歩を踏み出す事

幼稚園のクラスの中でも、『幼い子』と『しっかりしている子』、『落ち着きがある子』、『いつもちょろちょろしている子』、『なんでもできる子』『苦手が多い子』、色々と千差万別ですよね?でも、この『差』というのは、少し時間をかけてあげれば縮まるものもいっぱいあります。

時間が経って、幼かった部分が成長し、情緒面や心理面で落ち着きが出てくれば、集中力があがったり、理解力がぐんとのびたりします。もちろん、1年たてば、出来なかった事が上手に出来るようになってもきます。

就学して、必死で全力で頑張って周りについていくことは大事なことかもしれません。早生まれの子も、何年か経てば、どこかの時点で他の子に追いつき追い越していくもので、早生まれの成功者が社会でも結構活躍しています。筆者自身も、小さなころ、自分よりも1年近く早くに生まれた子達についていくために毎日必死でした。でも、学校生活に於いては、サバイバルの様な毎日よりも、のびのびと自信をもって、学び、楽しみ、そして成長していくことの方が大事な気がしませんか?自分に自信を持てる事は、どんな状況に置かれても強く生きていくためには必要な条件であると思います。逆に、頑張ってどんなに良い学校に入れても、良い会社に入れても、自分に自信が持てず、イニシアティブを発揮することも、クリエイティブな発想を生み出すことも出来ずに躓いている人はいっぱいいます。この部分を、子供のころにしっかりと確立しておけたら・・・と思うのは妥当な考えではないでしょうか?

本当の成功とは?

良い学校に行くこと、良い会社に入ること、お金持ちになること、有名になること、すべて人生における成功です。そうなりたいと日々努力する事は素晴らしいことと言えるでしょう。しかし、これらの成功をおさめた人すべてが「幸せ」であるとは限りません。何もかもを手にしても、どれだけ物質的に豊かな人生を歩もうと、「内なる幸福感」というものが得られなければ、その人生は本当の意味で「成功」と呼べないのではないのでしょうか?

自己を肯定し、自らの能力に自信を持ち、自らが本当に望む事を知り、周りの評価に囚われず生きる事、自分らしく、のびのびと人生を謳歌すること、こういった意味での「成功」を子供たちに望むのであれば、私たち大人は今こそ立ち止まって考えなければいけないのではないでしょうか?

「子供が子供でいられる時間」を守り、人と競争して駆け抜ける人生ではなく、一日一日を最大限に大切に生きられる毎日を考えてあげる事。全てがものすごいスピードで進化する社会の中で、私たちが私たちの意思で立ち止まり、今一度「本当の幸せ」の意味を考え直すことこそが、子供たちの将来を明るい未来に変えていく小さな一歩なのかもしれません。

まとめ

日本でも既存しているにも関わらず、ほとんど知られていない『就学猶予』という制度、自治体職員でさえもよく知らない人が多いと言われています。母親や両親がいくら働きかけても、これだけ認知度が低ければ、実際に適応される事はとても難しいでしょう。実際に子供と関わる教育者や、医療関係者が声をあげ、『何が本当に子供たちのためになるのか』という事が考えられる社会に変わっていく事を願います。

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オーストラリア在住。息子が生まれて一年半後、夫はアスベストが原因の悪性中皮腫という、これといって有効な治療法もない、強烈な癌を発症。そして、二年の闘病を経て他界しました。今は、5歳になった息子と二人、夫の眠る地で、毎日を大切に生きています。中皮腫の闘病記・アスベストの事・死別後の息子との二人三脚の毎日をブログに綴っています。http://ameblo.jp/maria1428

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