今から30年ほど前までは、病院の食事は「まずい」「冷たい」「早い」と言われていました。

それが、今では「(意外と)美味しい」「適温」「適時」と言われています。そんな病院食にまつわる話を綴っていきます。

その種類は約60食種。

病院の規模にもよりますが、ベッド数が900くらいあり全診療科を備えている大学病院の場合、食事の種類は60種類ほどあり、175パターンくらいになります。

調理場には120人くらいの調理師が、お風呂のような大きな釜で、煮物を作ったり炒めたりしています。手に持っている木杓文字は、まるでボートをこぐオールのように大きいです。
そして、献立を考えたり栄養の管理をする管理栄養士や栄養士が合計12人ほどいるでしょう。

食事の種類には、常食と呼ばれるものがあり、その中に離乳食、幼児食、学齢食(低学年、高学年)、成人食(男性 女性)、妊産婦食、などがあります。
お粥は全粥、7分がゆ、5分がゆなどがあります。きざみ食やペースト状などの形態もあります。

また、飲み込むことが困難な患者さんの為のゼリー食やとろみがついた食事、柔らかい食事もあります。

そして、病気に合わせた食事や検査のための食事として糖尿病食や腎臓食、透析食、術後食事、低残渣食、ヨード制限食・・・etc さまざまなののがあります。
もちろんアレルギーにも対応しています。

基本メニューを少しずつ変えます

60種類もあるの??1つ1つ違うの?とびっくりした人もいるかもしれませんが、全部すべて違うと言うわけではありません。

基本メニューがあって、そのメニューをもとに少しずつ変えます。

例えば、ポテトサラダのハムをツナに変えたり、炒めるのを茹でるに変えたり、豚肉を鶏肉に変えたり省いたりして対応し、塩分やカロリー、たんぱく質量等を調節できるものもあります。

病棟のディルームなどに貼ってある献立表は普通食の献立表のことが多いです。
これを見て、「うわ~い!今日はステーキだ!」とビーフステーキを想像していたら、チキンだったり、「うわ~い!クリスマスだからケーキが出るよ~」と喜んでいたら、「糖尿病の人はケーキじゃなくてイチゴなんです。ゴメンなさい・・・」と言われたり、ということもあります。

一昔前は「マズイ」「冷たい」「早い」

今から30年ほど前までは、病院食は「不味くて、冷たくて、早い」と言われていました。

大量に調理して病室に届くまでに時間がかかるため、患者さんが食べる頃にはすっかり冷めてしまって、冷たくなっていました。
お粥が糊状になるため蓋がくっついて、蓋を取ろうとしてもなかなか外せずにひっくり返してしまう患者さんも少なくなかったです。

「冷めたクリームシチューなんて食えるか!」などと怒る患者さんもいました。

そのうえ、病院食は治療の1つだから薄味でマズイのは仕方がない、と考えられていたのだから、そりゃあまずくて当然ですよね。

そして、時間が早いのも問題でした。
30年ほど前までは、夕食がPM5時半や5時、中には4時半ごろという病院もありました。
これは看護師さんの勤務時間内に食事を提供するためでした。

日勤の看護師さんの勤務時間は、たいていPM5時か5時半くらいまでです。
患者さんの中には自力で食べることができず、看護師さんの介助が必要な患者さんもいます。食事を提供したら、それで終わりという訳には行かないので、日勤の看護師さんの勤務時間中の早い時間帯に食事を提供していました。

「お日様がサンサンと輝いているのに、もう夕食か?!」などと患者さんはよく怒っていましたね。

そして、朝食はAM8時半や8時が多かったです。
夕食から朝食までの時間がかなり空くので、夜中にお腹が空いてこっそりと病院を抜け出して食べに行く患者さんや、暗闇の中、ベッドで何やらガサゴソと音を立てながら食べている患者さんもいました。

今は、適温適時給食が当たり前に!

昭和60年ごろから盛んに「適温適時給食」を目指そう!ということが言われるようになりました。
適温=温かい物は温かく、冷たい物は冷たい状態で患者さんに提供する。適時=一般家庭と同じくらいの時間に食事を提供する、ということです。

そこで、登場したのが適温配膳車です。
配膳するときに、トレーを温めたり冷やしたりすることで適温で提供することができるようになりました。

入院した経験のある人は、トレーの右半分が温かくなっていて、左半分が冷たくなっていませんでしたか?

食事の提供時間も、看護師さんのシフトに昼から夕方までなどのシフトを組み入れるなど工夫して対応し、一般家庭と同じくらいの時間に提供できるところが増えました。

現在では夕食の時間はPM6時頃、朝食はAM7時や7時半ごろが多いようです。

それでも、現在はPM7時以降に夕食を取る家庭が増えてきて、またまた「早い」と言われているようです。

選択メニューも

近年では、メイン料理を洋食か和食か選択できたり、追加料金をいくらか払えば少しランクアップした食事が食べられたりする病院も増えました。

「まずい!」と言われていたのがウソのように、美味しい食事を提供している病院が大半です。
薄味でも美味しく!といった趣旨でレシピ本を出している病院も、ありますよね。

おそらく、50歳代以上の人で若いころに入院経験がある人がイメージする病院の食事は、「高校生の頃、盲腸で入院した時は、まずくて食べられなかった」といった感じでしょう。しかし、今はすっかり美味しくなっていますよ。

また、ベッドで食べるのではなく、歩ける人はディルームと言う部屋で食べる病院も増えました。

行事食やおやつも

病院食でもクリスマスにはクリスマス料理を作りますし、お正月はお節料理やお雑煮も可能な限り出します。
病状によっては提供できないこともありますが、普通食ならクリスマスケーキも出しています。

お誕生日やクリスマスには、メッセージカードやクリスマスカードなどをつけたりもします。
また、小児や妊婦さんにはおやつも提供しています。

一昔前は「マズイ」「冷たい」「早い」と言われた病院食も今では、美味しい物になりました。

病院では朝早くから、たくさんのスタッフが食事を作っています。

時には、疲れている時に大量のピーマンの臭いが鼻をついて気分が悪くなり、それ以来ピーマンが食べられなくなる調理師や、大量の魚の頭を切り落としていて魚を見るのが怖くなる調理師もいます。

これから寒くなると、早番のスタッフは少々出勤がつらい日もあるでしょうが、患者さんが元気に退院する日を願って調理しています。

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患者からの目線と元医療従事者としての目線とで、医療や健康に関する記事をメインに書いています。
4度の手術に膠原病でバツイチで・・・と波乱万丈の人生ですが、”人生に喜びや笑いを添付したら結果は出るはず!”という「喜笑添結」で毎日を過ごしています。

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