「ハロウィーン仮装100年史」「ウエディングドレス100年史」「イケメン100年史」などの動画を最近よく目にしますが、今回ご紹介するのはアメリカの家庭で食べられて来た夕食の100年史です。

ごく一般的なアメリカ人と一緒に視聴して意見を聞きました。おおむね懐かしがる向きが多かったものの、意見が分かれるメニューもありました。

それぞれの出身地は筆者の現在地ワシントン州、西海岸カリフォルニア州、五大湖のある中西部ミネソタ州とノースダコタ州、内陸南西部のアリゾナ州、山岳地区コロラド州、東海岸北東部のメイン州、南部ジョージア州です。

1915年:ローストビーフとフランケン風ポテト

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Franconiaというのはドイツのフランケン地方のことだそうで、どんな素敵な料理かと思えば、オーブンでローストビーフを焼く時、肉のまわりに丸ごとポテトを並べて一緒に出来上がるというものでした。なら単にローストポテトと呼べばいいのにとも思いましたが、ちょっと気取った名前がつくと更に美味しく感じるのかもしれませんね。

このディナー、これにサイドディッシュやサラダが付いたりはしなかったそうで、よくアメリカ人の基本の食事を「ミート&ポテト」と揶揄する向きがありますが、それを地でいっています。

1925年:チキン・ア・ラ・キング

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19世紀からマンハッタンにあった老舗レストラン、デルモニコスで考案されたレシピで、チキンのざく切りとニンジンやグリーンピースなどを煮込み、ホワイトソースで和えて米飯やパスタにかけたものだそうです。家庭で作る時はローストチキンの残りとあり合わせの野菜を刻んでスープで煮て水溶き小麦粉でとろみを付け、わざわざ別にホワイトソースを作ったりはしなかったとか。

ここで出たのは「マッシュルームみたいなファンシーなものは入って無かった」という意見でした。この映像では生を使っているようですが、あっても缶詰のものだっただろうと思います。

1935年:クリーム・チップド・ビーフとグリーンピースのバター煮

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チップド・ビーフというのは私は知らなかったんですが、薄くスライスされた牛肉ソーセージの缶詰や瓶詰めだそうです。保存食ですね。「チップド」ですから切り落としのような雑肉を使っていて、どこの部位か不明な謎の肉だそうです。今でもスーパーでは「ドライド・ビーフ」という名称で瓶詰めが売られています。

この料理はルーから作って味を整えたホワイトソースにチップド・ビーフを適当に切って混ぜ込んで煮たものをトーストした白パンにたっぷり乗せ、バターで和えたグリーンピースを添えてあります。手早く出来るので、食卓に上ることも多かったのでしょう。

ちなみにオープンサンドイッチとして手で持って食べるのではなく、下に敷いたトーストごとナイフとフォークで頂きます。パンをトーストしないのを好む人もいるそうで、柔らかいパンに暖かいソースがしみ込んでグチャッとなったのがしみじみ美味しいそうです。

1945年:スパム、ベークドポテト、ライマメ

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いよいよスパムの登場です。発売は1937年だそうです。ライマメはインゲンマメの一種で、グリーンピースとともによく食べさせられたという人と、全く食べなかったという人とに分かれました。

ちなみにこの写真のライマメと1935年のグリーンピースはきれいな緑色で彩りを添えていますが、実際はカン詰めを使う事が多く、緑の薄い灰色がかった感じだったそうです。

収穫時で新鮮なものが手に入る時も、パリパリしゃきしゃきより色が悪くなってもドロッと柔らかくなるぐらいまでよく茹でたほうが「口の中でとろけるほどクリーミー」と喜ばれたとか。筆者も実際に中西部の農家で朝摘みのインゲンマメをそうやって供され、経験しました。

そして添えられているベークドポテト。やっぱりイモがないと始まらない感じなんですね。

1955年:TVディナー

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冷凍食品をオーブンで温めて出すもので、今でも盛んに売られています。この当時の容器はアルミ製でしたが、手軽に電子レンジで温めるのが主流になるにつれ容器はプラスチックに変わって行きました。

TVディナーという名称のいわれはいくつかありますが、TVの前のカウチにみんなで並んで座り、それぞれがポータブルテーブルでこれを食べながらTVを見る習慣が付いたためだというのが一番有力です。

このころはキッチンはスウィングドアのついた別室という造りの家が一般的だったため、奥さんもTVを見られるように支度の要らないディナーが広まったのかもしれません。

ここで付け合わせになっているのはグリーンピースとマッシュドポテト、またしてもイモです。メインはターキーで脂肪分が少なくヘルシーということになっていますが、ビーフのTVディナーもよく売れていたそうですから、やっぱり「ミート&ポテト」です。

1965年:キエフ風チキンカツと蒸しニンジン&茹でポテト

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キエフ風チキンカツというのは鶏胸肉の中にハーブバターを射込み、パン粉を付けて揚げ焼きしたものです。ただし出来合いの冷凍食品をオーブンで温め焼きだったそうで、家でも作れるのにと言ったら驚かれました。

衣に使ってあるパン粉は日本のパン粉と違い細かくすりつぶした感じのもので、カツのように揚げてしまうと油を吸ってクドい料理に仕上がります。

英語では「ブレッド・クラム(Bread Crumbs)」と呼び、日本のパン粉が食材として入って来た時には「ジャパニーズ・ブレッド・クラム」と呼んでいましたが、今では全くの別物として「ジャパニーズ・パンコ」もしくは「パンコ」だけで通じるようになりました。

1975年:チーズフォンデュ(スイス&グリュイエール・チーズ)

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当時超ポピュラーだったチーズフォンデュ、道具一式が新婚カップルへのプレゼントとして手頃だったため、70年代に結婚したせいで何個もフォンデュ・セットを抱え込んで困ってしまうということがあったそうです。

ところでこのメニュー、野菜がありません(涙)聞いても、まあこんなもんだったよと口々に言われるばかりで。なんだかすごくお通じ悪くなりそうです。

1985年:スロッピージョーとマカロニチーズ

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パンとマカロニで炭水化物だらけです…

このスロッピージョーは挽肉をソースでからめたもの。ソースは手作りも出来ますが、大抵は炒めたところへ缶詰のソースをドッとかけ、少し煮込んで出来上がりです。玉ねぎやニンジン、セロリなど刻み込むことも出来ますが、ご馳走になったことがあるものは肉だけか、野菜がはいっていてもホンの少しでした。

マカロニチーズはこの写真で見る限りはクラフト社から出ているインスタントのもの。簡単料理ですね。

スロッピージョーは、1985年よりも前からよく食べていたという意見で一致していました。ソースがトマトとウースターソースベースなので子供の口には合うものの、パンの間からダラダラ出て来てしまい、もの凄く食べにくい料理です。

1995年:タコスとリフライド・ビーンズ

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やっとレタスやトマトが出てきました!サルサは刻んだトマトやタマネギがたっぷり使われています。リフライド・ビーンズというのは、うずら豆を柔らかく煮てつぶしたのを油で炒めたもの。今どきは植物性の油で炒めますが昔からのレシピではラードを使うため、カロリーはかなり高いです。

このタコス、カリフォルニアやアリゾナでは「もっと昔から食べていた」とブーイングが。メキシコ料理ですから国境を接している州には早くから入っていたのでしょうね。

実は筆者の義理の母は中西部出身の「肉とイモ」が基本の人で、しばらく同居していた頃には真剣に野菜不足に悩まされました。ところがカリフォルニア生活が長かったためタコスはみんな好きでよく食べたので、この時とばかり挽肉をちょっぴり、野菜を山盛りにして、ようやく身体が中を掃除できたような気がしたものでした。こうして夕食の変遷を見ていると、胃腸の作りの違いを思い知らされます。

2005年:お寿司

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1995年のタコスもそうですが、2000年前後からアメリカの食卓には外国のものが普通に入って来るようになりました。お寿司もその一つです。

アメリカ人は巻物が好きです。カリフォルニア・ロールに代表される、海苔で具材が巻かれた上をご飯で巻いてあるスタイルが一番喜ばれます。この動画ではテイクアウトしてきたものを食べる形になっていますが、10年前に全米で一般的に握り系のお寿司が手に入ったか、疑問は残ります。でもお寿司が全米に知られていたのは確かですから、そこまで考えなくてもいいのかもしれません。

2015年:グリルしたサーモン、キノアのピラフとケールのサラダ

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フードネットワークという料理専門のケーブルテレビで出て来るのは、このごろはみんなこういう盛りつけ方です。メインディッシュの下に敷くのはお米でもクスクスでもマッシュポテトでも、とにかくデンプン質もの。添えの野菜は火が通ったものでも生でもいいですが、何かカリカリする食感の食材が入っている事が求められます。

このケールのサラダに使われているのはアーモンドですね。

これを家で作って夕食に出すか?と聞かれると分かりませんが、例えばサーモンはデリで買ってきたのを電子レンジで温め、ピラフはインスタント。サラダは材料が全部入ったキットが売っています。仕事から疲れて帰って来ても15分もあれば食べ始められます。

アメリカでは基本が共働き、片親で子育てしながらという家庭も多いですから、作る人に負担がかからず美味しく健康的に食べられるのは、嬉しい事です。

では、どうぞ100年の食卓の変遷を動画でご覧になってみて下さい。

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いかがでしたか?こうした見ると、アメリカの食卓は一番最初の「肉とイモだけ」から驚きの進化を遂げています。牛肉が基本だったのは贅沢とは無縁の事で、農業大国でしたし、自分の家の牛を食べていたというのが現実です。

農業に従事していたお年寄りなどは今でもステーキはウェルダンを好みます。カチカチぱさぱさで不味いんじゃないかと思ってしまいますが、昔はいくら清潔にしても衛生面で不安が残りましたから、よくよく焼く事で感染症や食中毒を防止していたのだそうです。

あまり美味しくないと思われているアメリカの食事ですが、調べてみると様々な理由があって面白いですね。

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