『鬱』は自殺の原因ではなかった?

『今を生きる』、『パッチアダムス』、『グッド・ウィル・ハンティング』そして、近年では 『ナイトミュージアム』など、シリアスなものからコメディまで、どんな映画に於いても、素晴らしい演技力で世界中の人々を魅了してきたハリウッドを代表する名優ロビン・ウィリアムズは2014年8月、自らの命を絶ちました

当初、自殺の原因は長年彼が苦しんでいた鬱病であると言われていました。妻のスーザンも、死の翌日、彼が鬱病、パーキンソン病、そして不安神経症を患っていたとメディアに語っています。

しかし、解剖の結果、彼は全く別の病気を患っていたことが明らかになったのです

本人も妻も病気の事を知らず、症状に苦しめられていた

ロビンの死後15カ月が経ち、妻スーザンは雑誌のインタビューで解剖後に明らかになった事実を語りました。

ロビンを死に追いやったのは鬱ではありません。鬱は、山ほどあるこの病気の症状のほんの1つに過ぎませんでした・・・知らなかったんです。ロビン本人も知らないまま亡くなりました。」

ロビンの死後明らかになった疾患『レビー小体型認知症』

生前、鬱症状やパーキンソン症状に悩まされたロビンは、様々な検査をうけてはいましたが、結局、死後の解剖によって、「レビー小体型認知症」であったことが明らかになりました。

レビー小体型認知症とは

日本ではアルツハイマー型認知症や脳血管性認知症と並び三大認知症と呼ばれている。進行性の認知機能障害に加えて、特有の精神症状とパーキンソン症候群を示す変性性認知症である。

出典 https://ja.wikipedia.org

妻によると、2013年の終わりごろから、ロビンの身体に顕著な症状が見られるようになっていったといいます。彼の身体にはパーキンソン病にも似た硬直がみられ、極度の不安でパニックアタックを起こしたり、距離感がはかれずにドアに、怪我をするほど頭をぶつけたりすることもあったそうです。また、時計」を失くすことを常に心配して、靴下の中にいくつも時計を隠してみたりするなど、行動にも特異な変化がみられました。そのほかにも、胃痛、便秘、排尿障害、睡眠障害、ひきずり歩行、失神、そして、遂には声を出す事も困難な状態に陥っていたと言います。

CTやMRIなどの検査でも異常が見つけられず、原因がつかめないまま、更なる精密検査を予約していたその週に、ロビンは自らの命を絶ちました。


最初の症状が出てから、病気の進行は急速で、数か月の間に様々な生活上での困難が生じるようになりました。後になって、ロビンを診ていた医師の一人は、


ロビンは自分の身体に起っている変化をよく理解しており、徐々に崩壊していく自らの様を絶望的な思いで受け止めている様だった。」

と語っています。

診断が難しい疾患であるということ

この疾患は、認知症で代表的な症状である「もの忘れ」がほとんど見られないのが特徴です。それよりも、「注意力の低下」「鬱」「睡眠障害」が初期に現れます。そして、かなり「顕著な幻視」(動物や子供の姿が見えたり、いない人が見えるなどの訴えが聞かれるようになります。)、目の前に見えているものが認知できない「視空間障害」もみられ、失くしていない物を失くしたと騒いだりすることも出てきます。

また、「パーキンソン症候群の症状」が出ることもわかっており、進行すると、震えや硬直、歩行障害、転倒などが問題になってきて、介護が必要となります。

CTやMRIなどでも、年相応の正常画像となるため、画像診断がつけられないというのも、病気の発見を遅らせる大きな要因です。また、幻視や妄想などの症状が、「統合失調症」と誤診されることもあり、この場合、治療で抗精神薬を投与されると過敏反応を示し、症状が急激に悪化する危険も指摘されています。


以上の症状を比べてみてみると、ロビン・ウィリアムズが悩まされていた症状のいくつかがぴったりと当てはまっている事がよくわかります。

この疾患についての知識がほとんどない医師も多く、誤診されたり、全く診断がつけられないという例も多くあります。これらの症状がみられた場合は、家族・患者が自ら訴え出る事も大事なのかもしれません。近年、アリセプトという薬剤が、この病に有効とされ、治療を受けて劇的に軽快している症例も出てきています。早期発見、早期治療を可能にするためにも、この疾患が広く世に知られる事が望まれます。

まとめ

長年の鬱病と薬物・アルコール中毒から生還し、八年間完全にシラフな状態を保つことに成功し、三度目の妻スーザンと幸せに暮らしていたロビン・ウィリアムズ、死亡時も体の中からは薬剤やアルコールは一切検出されなかったそうです。強い精神力を持って、苦しい中毒から生還した彼が、自らの命を絶つほどまでに追いつめられ、苦しめられた、この「レビー小体型認知症」、どれほど孤独で過酷な闘病であったのか想像するだけでも胸が締め付けられる思いです。  

遺されたスーザンさんは、雑誌の取材にこう締めくくっています。

「とても特殊な病です。この疾患で苦しむ何百万の人々と、その御家族のためにも、私たちの症例が、この疾患「レビー小体型認知症」の存在に、少しでも光を当ててくれることを祈ります。だって、私たちは知らなかったんですから。ロビンも知らなかったんです。」


この記事を書いたユーザー

Maria このユーザーの他の記事を見る

オーストラリア在住。息子が生まれて一年半後、夫はアスベストが原因の悪性中皮腫という、これといって有効な治療法もない、強烈な癌を発症。そして、二年の闘病を経て他界しました。今は、5歳になった息子と二人、夫の眠る地で、毎日を大切に生きています。中皮腫の闘病記・アスベストの事・死別後の息子との二人三脚の毎日をブログに綴っています。http://ameblo.jp/maria1428

得意ジャンル
  • 話題
  • 社会問題
  • 育児
  • 感動

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス