普段、イギリスで日本語教師をしている筆者。日本語って奥が深いと毎回思うのと同時に自分が日本人で本当に良かったと実感することもしばしば。外国の生徒さんに「日本語で何が一番難しい?」と聞くとやはり「敬語」「漢字」。特に敬語は、丁寧になればなるほど元の言葉とは全く違う言葉に変えて表現するというのが英語ではあり得ないこと。

あとは擬音語、擬態語は英語ではあまり使いません。というよりあまり存在しないのが事実。例えば、雨が降る音は日本語では「しとしと」とか「ザーザー」と表現しますよね。でも英語ではそれに代わる形容詞はあっても、「しとしと」や「ザーザー」に匹敵する言葉が存在しないのです。

そんな風に、翻訳できない日本語でしか表現できない言葉、というのがあるのです。今回はみなさんも知っている日本語の5つの言葉をご紹介しましょう。

「わびさび」

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英語だけでなく外国語に訳せない日本語の代表的言葉というのがこの「わびさび」です。日本の美意識の一つでもあるわびさびは、質素で静かなものー簡単にいうと「茶の湯の精神」ということで日本人には実にわかりやすい表現なのですが、実はこのわびさびにはもっと奥深い意味があるのです。

さびは、見た目の美しさについての言葉です。この世のものは、経年変化によって、さびれたり、汚れたり、欠けたりします。一般的には劣化とみなされますが、逆に、その変化が織りなす、多様で独特な美しさをさびといいます。一方、わびは、さびれや汚れを受け入れ、楽しもうとするポジティブな心についての言葉です。つまり、さびの美しさを見出す心がわびなんです。

出典 http://courrier.jp

日本の情緒溢れる文化を表現したわびさびを外国語で翻訳するのは一苦労。なぜなら、一言で言い表せる単語がないからです。わびさびを理解してもらうためには、まず茶の湯の精神から説明し、千利休、更には千利休が説いた茶道の心得、そしてわびとさびの違い…などなど、説明が長くなってしまうのは否めません。

「もったいない」

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環境分野で初のノーベル平和賞を受賞したケニア人女性、ワンガリ・マータイさん。マータイさんが、2005年の来日の際に感銘を受けたのが「もったいない」という日本語でした。

環境 3R + Respect = もったいない

Reduce(ゴミ削減)、Reuse(再利用)、Recycle(再資源化)という環境活動の3Rをたった一言で表せるだけでなく、かけがえのない地球資源に対するRespect(尊敬の念)が込められている言葉、「もったいない」。
マータイさんはこの美しい日本語を環境を守る世界共通語「MOTTAINAI」として広めることを提唱しました。

出典 http://mottainai.info

私達日本人が日常何気なく使っている言葉「もったいない」が、実は外国人にはこんなにも感銘を受ける言葉だったのにも驚かされますが、なにより「もったいない」に匹敵する外国語がないということにも驚きです。それだけ日本語は奥が深いということなんですね。

「初心」

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「初心」を一言の英語で、と調べてみるとinexperiencedと出て来ます。これだけだと微妙にニュアンスが違うので、やはり一言では表現は難しいということですね。

日本では「初心忘るべからず」「初心に帰る」という言葉をよく使いますが、これは本来「仏教で初めて悟りを求める心を発すること。またその人。」という意味が含まれていて、仏教国である日本人には非常に理解しやすい言葉ですが、外国人からすると一言では表現できないということになるのでしょう。

アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏は、初心という言葉を「日本にある素晴らしい言葉」と褒めたたえたそうです。普段日本人の私達が当たり前のように口にしている言葉が、外国人には素晴らしい意味を持つ言葉だということがわかりますね。

「可愛気のない」

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この「~気のない・ある」も日本語から英語にするのは結構ハード。「可愛くない」とも意味が異なる「可愛気のない」は、見た目ではなく「可愛いと思わせる部分が無い様子」のこと。悲し気や嬉し気、淋し気という言葉は、英語では副詞として表現できるものの「可愛気のない」は一番難しい「~気」の言葉といってもいいでしょう。

「切ない」

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女性なら一度は口にしたことある言葉「切ない」。これも外国語に翻訳するのは難しいです。(ここで筆者がいう翻訳は一言で言い表す、の意味です。)「切ない」は悲しいや寂しいと似たニュアンスですが、胸の奥がぎゅっと締めつけられるような感情を表現したい時に使う言葉。これを英語の一言で表現するのは難しいです。

日本語にはこのように、人の感情の奥深くを表現した言葉が一言で存在します。英語はその点、ボキャブラリー数が日本に比べて少ないので日本語のような微妙なニュアンスを持つ単語の表現は難しいということになるのでしょう。

あと、一人称の呼び方も日本では「私、俺、僕」など数通りあるのも日本語独特の表現ですね。ある日、筆者の生徒さんが「日本では今でも拙者という言葉を使いますか?」と真剣に聞いてきたことがありました。内心面白いと思ったのですが、生徒さんは真剣。一人称にどうして色々な呼び方があるのかが理解できなかったのです。そして時代や身分、男女によって変化することも困惑させる原因ですね。

日本ではごく普通に使っている言葉や表現でも、海外からすれば珍しく、不思議な言葉となるのでしょう。でもそれだけ、日本語が奥深く神秘的で美しいということを再確認できるので、やっぱり日本人で良かったと心から思う筆者です。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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