日本ではあまり馴染みがありませんが、ここイギリスやアメリカなど欧米では不妊治療後の一つの選択肢として、また、子供がいる家庭でも養子を迎えたりと人種を超えた多様化したファミリーの形態が存在するのが事実です。

今回、この「養子縁組」もしくは「養子制度」について触れたいと思ったのは、あるニュースを見ていて一人の少女の養子縁組がなかなか決まらないことを知ったからです。誰も引き取り手がいないその少女は、近づいてくるクリスマスを目前に一緒に祝う家族がいないのです。

3歳のグレースちゃんは新しい家族を探している

出典 http://www.mirror.co.uk

今は「フォスターケア―」と呼ばれる人達に引き取られているグレースちゃん(3歳)。このフォスター(里親)は一時的に子供の面倒を引き取って見る人達のことで、養子縁組先ではありません。

イギリスでは、子供が里親に引き取られている間に養子縁組の手続きをし、正式に養子に決まった場合に引き渡すシステムになっています。当然、子供の養子縁組をするには厳しい審査が何度もあります。

筆者の友人は9年もの間不妊治療をしていましたが、子供を授かることができなかったために、今養子を迎える準備をしています。イギリスでは、養子を引き取る親に対する審査はとても厳しいですが、親になる立場の人達からのリクエストー例えば「女の子がいい」「イギリス人がいい」といった希望は受け付けられません。

でも、子供に障がいがあったら?

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障がいのある子供を育てるということは、自分と血の繋がった子供であっても容易なことではありません。だから養子縁組をする際に「この子はこういう障がいがあります」と前もって伝えられると親になる側はNOという権利があるのです。

今3歳になるグレースちゃんは、脳性小児麻痺の障がいを持って生まれました。そのため、引き取り手が誰もいないのです。里親として面倒を見ているジルさんとポールさんは言います。「グレースは本当に良い子で思いやりもある子なんです。」

今は特別な靴のおかげで、なんとか歩けるようになりました。ただ、脳性麻痺を患っているために他の3歳の子供と比べると言葉の発達が遅いのです。更に今後、どんな問題が起こるかわかりません。だからグレースちゃんが生まれた時から誰一人として、養子にしたいという引き取り手が現れないのです。

ただ、新しい家族と幸せになりたいだけなのに

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どんな事情でグレースちゃんに親がいないのかはわかりません。今イギリスには約4000人の子供が養子縁組を待っていると調査で明らかになっています。そのうち、1歳から4歳までが引き取られる割合は約74%、5歳から10歳までの子供が引き取られる割合はたったの21%だそう。誰もが、新しい家族を待っていて幸せに暮らしたいだけなのです。

欧米では、日本よりも遥かに養子縁組が進んでいるとはいえ、子供が障がいを持っていたり、何らかの事情により引き取り手が現われなかったりと全ての子供が新しい親に引き取られ幸せになっているわけではないので、現状は決して良いとはいえません。

欧米の養子縁組の目的とは

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実親が何らかの事情により我が子を育てられない場合には、その子供が新しい親を見つけて、永久的に家族ができることを最優先として里親から養子縁組というステップで子供の幸せの方向を考えて行きます。

では日本はどうかというと、親に捨てられた子供の約90%が、施設に引き取られているのです。養子縁組の比率で言うと、オーストラリアが93.5%、次いでアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアが来ます。日本はたったの12%という割合。いかに養子縁組が少ないかおわかり頂けるかと思います。

日本の児童養護施設はここ10年で48か所増に

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全国に約590か所あるといわれる児童養護施設には、約3万人の子供が暮らしているそうです。更に赤ちゃんの場合は、乳児院という所になんと年間3千人もの赤ちゃんが預けられ、そのままほとんどの赤ちゃんが施設送りになるとのこと。乳児院もこの10年間で16か所も増えているということがわかっています。

国からの手当てがない養子縁組

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里親の場合は、一時預かりなので国からの援助がある一方、養子縁組となるとその援助が全くありません。そのため厳しい経済状況にある日本では、欧米よりも引き取り手が少ないのが現状です。

そしてここ数年の間に、親が誰だかわからない捨て子の数は2倍に増え、親がわかっていても置き去りにされた児童の数は4~5倍になっています。これは育児へのネグレクトも含まれます。

なぜ、日本では養子縁組は一般的ではないのか

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最近では、我が子への虐待数も増えています。養子を迎えることができる親不足が一番の原因。養子を育てるのに適した親がいないのです。また、施設側も経験のない両親が初めて養子を引き取ることに躊躇するという態度があるため、なかなか実現しないのも事実だそう。

更には養子縁組において、カウンセリングを一切しないために、どういった子供を迎えるのか前もって知らされないことが原因だと考えられています。

日本は個人主義よりも団体主義が一般的

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この「団体主義」というのは「家族単位」のことです。欧米では個人主義が主流なので、わかりやすくいうと恋人と別れても、恋人の母親とは仲良く関係を保つ。問題があって別れたのは恋人なので、恋人の家族は関係ないといった考え方です。

でも日本では、そういうことがあると家族単位で考えるのが一般的なので、わざわざ別れた恋人の母親と今後も連絡を取り合っているという人は少ないでしょう。そういう日本のあり方が更に核家族化したことによって、「血の繋がった家族」を大切にし、血縁関係のない者や、また国という部外者も介入が難しくなるのでしょう。

「親権」問題が大きく立ちはだかる日本

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日本には「親権」に対しての法律がとても厳しく、「実親が子供に何年も会っていない場合でも、親権者の承諾が得られない限りは養子縁組ができない」という決まりがあります。つまりは、子供を捨てた親がどこかへ行ってしまっても、その子供は一生捨てた親の親権の下で人生を生きなければならないということなのです。

これは残酷以外に考えられません。勝手な都合で産み落として、捨てて、その子供が幸せな家族に引き取られることさえもできないなんて、子供の人権はいったいどこにあるのでしょうか。日頃、日本の法律は犯罪に対してつくづく甘いと筆者は思っていますが、子供の養子縁組に対しても改めるべきではないでしょうか。

どんな子供でも幸せになる権利がある

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日本の施設制度は「国家レベルの児童虐待」とも言われているそうです。でも我が子を捨てる親が後を絶ちません。「赤ちゃんポスト」と呼ばれて知られる熊本県の慈恵病院にも障がいのある子供が預けられているそうです。育てられないから、要らないからという理由がほとんどで子供を捨てる身勝手な親。

でも子供にとれば、新しい親が見つかるということは、自分の人生が大きく変わる瞬間なのです。障がいがある子供でも、親がどんな親であっても、子供は幸せになる権利があります。幼い時の心の傷が成長していていく過程でトラウマになっている人もたくさんいます。そんな人が少しでも減る社会になればと思う筆者。

筆者の知り合いにも実子と養子を育てている人がいます。今11歳になる養子の少女は自分が養子だということを知っているそう。でも幼いころからその家庭に引き取られたので、実子の男子とは本当の兄妹のようです。親は少女に「養子」と真実を告げてはいるものの、なんの分け隔てもない無条件の愛情を注いで育てています。

イギリスでは、養子を引き取れば小学校に上がる年齢になれば既に親が子供に「あなたは養子だ」ということを告げている親が多いと聞きます。隠して育てて後で知られるよりも、恥ずかしいことでも何でもないのだから先に知らせておく、といった感じでしょう。そうすることで「今、自分は幸せだ」と子供が感じとってくれればという親の願いもあるのではないでしょうか。

血の繋がりのない子供を引き取って面倒をみることは、決して生易しいものではないでしょう。でも血の繋がりだけが全てではないということを筆者もイギリスで友人、知人を見て実感しています。子供は愛されて育つ必要があるのです。イギリスのグレースちゃんも、いつか彼女を育てようと思ってくれる素敵な家族に巡り合えますように。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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