日本一貧しい大統領として有名だったムヒカ大統領。2015年5月に任期を終えて惜しまれつつも退任、現在も田舎の農場の小さな家で、奥さんと愛犬と共に、変わらずつつましく暮らしています。

「国を治める者の生活はその国の平均でなければならない」

ムヒカ大統領といえば、給料の90パーセントを福祉団体に寄付して残りの10%で暮らしていた事でも知られていますが、その理由は、10パーセント分の給料というのがウルグアイの国民の平均月収とほぼ同じだから。大多数の人の支持で大統領になった者は、その大多数と同じ暮らしをするものだという考えでした。

インタビューでは「国民の生活レベルが上がれば、自分もちょっとだけ上げる」といたずらっぽい笑顔で語っていたのが印象的です。

唯一の個人資産は愛車のフォルクスワーゲン・ビートル

世界中を駆け巡った「ヒッチハイクの男性を乗せてあげた」というニュースでも登場した、このフォルクスワーゲン、なんとアラブの大富豪から100万ドル(約1億1600万円)で売却を打診されたのだとか。

ムヒカ元大統領は「これは友人からの贈り物だから、売ったら友人を傷つける事になる」と売却を断り「私が生きている限り、車は車庫で眠り、時々散歩に出かけるのさ」と地元のメディアに語りました。

4度の投獄、2度の脱獄、そして13年の牢獄生活

若い頃は、政治を変えたくてかなり過激なゲリラ活動に参加していたムヒカ元大統領。「50年前の私たちは、富を平等に分配する事によって、世界をよりよくできると考えていたんだ」

「でも今になって気がついたのは、過激な思想では世界は変わらない。文化そのもの(それぞれの人間の意識)を変えないと、何も変わらないということだ」

そうして、政治家への道へと進む事になります。

その思いがリオ会議でのあの伝説のスピーチに

その経験から生まれる確固たる思いが、消費社会を痛烈に批判するあの伝説のスピーチとなるのです。

「貧乏な人とは、少ししかものを持っていない人ではなく、無限の欲が あり、いくらあっても満足しない人のことだ」

「発展は幸福を阻害するものであってはいけないのです。発展は人類に幸福をもたらすものでなくてはなりません。愛情や人間関係、子どもを育てること、友達を持つこと、そして必要最低限のものを持つこと。これらをもたらすべきなのです。幸福が私たちのもっとも大切なものだからです」

出典 http://hana.bi

そして印象的なこの言葉に考えされられます。

「私たちは発展するために生まれてきているわけではありません。幸せになるためにこの地球にやってきたのです。人生は短いし、すぐ目の前を過ぎてしまいます。命よりも高価なものは存在しません」

そんなムヒカ元大統領が日本のインタビューに答える

2015年10月11日の「Mr.サンデー」で、ムヒカ元大統領のインタビューが放送されました。その中で、実は幼少期から日本人との交流があった事、人生における様々なタイミングで日本人の影響を受け、日本の文化に強く心を惹かれてきた事などを語りました。しかし、当時と今とでは、日本人への気持ちに変化が生まれている様です。

「ペリー提督がまだ扉を閉ざしていたころの日本を訪れた時の話さ。時の日本は『西洋人は泥棒』って思っていた時代だね。あれは間違いではなかったけど、賢い政策で対応したとは思うよ。

西洋にある進んだ技術に対抗できないことを認め、彼らに勝る技術をつくろうと頑張ったんだ。そしてそれを成し遂げてしまった。でもそのとき日本人は魂を失った。」

「そのとき日本人は魂を失った」

「人間は必要なものを得るために頑張らなきゃいけないときもある。けれど必要以上のモノはいらない。幸せな人生を送るには重荷を背負ってはならないと思うんだ。長旅を始める時と同じさ」

「長い旅に出る時に、50kgのリュックを背負っていたら、たとえ、いろんな物が入っていても歩くことはできない。100年前150年前の日本人は私と同意見だったと思うよ。今の日本人は賛成じゃないかもしれないけどね。」

幸せな人生を送るには重荷を背負ってはならない

私たちは両手いっぱいに荷物を抱え込み過ぎて、大事な何かを抱きしめる余裕がなくなってはいないだろうか?ムヒカ元大統領のいう「必要以上のもの」に囲まれて暮らしているのではないのか?

「今の日本についてどう思うか?」の問いには、こう答えるムヒカ元大統領。

「産業社会に振り回されていると思うよ。すごい進歩を遂げた国だとは思う。けど、本当に日本人が幸せなのかは疑問なんだ。西洋の悪いところをマネして、日本の性質を忘れてしまったんだと思う。日本文化の根源をね」

「本当に日本人が幸せなのかは疑問なんだ」

「幸せとは物を買うことと勘違いしているからだよ。幸せは人間のように命あるものからしかもらえないんだ。物は幸せにしてくれない。幸せにしてくれるのは生き物なんだ。」

「働いて、働いて、働いて、職場との往復を続けていたら、いつの間にか老人になって、唯一できたことは請求書を支払うこと。若さを奪われてはいけないよ。ちょっとずつ使いなさい。そう、まるで素晴らしいものを味わうように…。生きることにまっしぐらに。」

果たしてそんな世界は今から実現可能なものなのか?

ムヒカ元大統領の言葉は胸に刺さりますが、現実問題として、すでにこの消費社会の中で生きている私たちにとって現実的な話ではないのではないか、という気持ちがあるのも正直なところです。

「その世界は実現可能か?」を問われたムヒカ元大統領はこう答えました。

「とても難しいね…」

「君が日本を変えることはできない。でも自分の考え方を変えることはできるんだよ。世の中に惑わされずに自分をコントロールすることはできる」

「君のように若い人は、恋するための時間が必要なんだ。子どもができたら、子どもと過ごす時間が必要だし、友達がいたら友達と過ごす時間が必要なんだ。」

自分の考え方を変えることはできるんだよ

自分一人が世界を変える事は出来ない…だからと言って「どうせ変わらない」と考えるのか「まず自分が変わってみよう」と考えるのか。

ムヒカ元大統領の言う「素晴らしいものを味わう様に」毎日を過ごす事は、実はそんなにも難しい事では無いのかもしれません。

消費社会の中で忙しさ故に忘れてしまっている事を、現状の中で生きてゆきながらでも、ほんの少し考え方を変えるだけで、思い出す事が出来るのではないか。

本当に必要なものや大事なものが見えてくる、それを丁寧に大切に扱う事が出来る様になる…それは素晴らしい一歩なのではないでしょうか。

そして日本の子供たちへのメッセージが

「日本にいる子供たちよ。 君たちは今 人生で最も幸せな時間にいる。 経済的に価値のある人材となるための 勉強ばかりして 早く大人になろうと急がないで。 遊んで、遊んで、子供でいる幸せを 味わっておくれ」

「子供でいる幸せを 味わっておくれ」

大人も子供も、もっと毎日を、人生を、その一瞬を、しっかりと味わって暮らせるなら、それはとても幸せな事です。特に小さな子供達は、その素晴らしき幸せな時間を思い切り味わえる様に、大人たちが考え、してあげられる事がきっと沢山あるはずなのです。

自由は自分の頭の中にある!

「私は『最も貧しい大統領』と呼ばれていしたが、貧しいとは感じません。きっとみんな、豊かさというものを勘違いしているのだと思います」

「自由は、ここ(頭の中)に存在しています。頭の中になければ、自由などは存在していないのです」

今回、日本について語ったムヒカ元大統領。みなさんは、このインタビューから何を感じますか?

追記(2016年4月11日)

2016年 4月5日、ムヒカ氏が来日した際の、ムヒカ氏の講演やTV出演時のコメントをまとめた記事を更新しました。主に、日本の若者を前に講演した時のものを中心にまとめています。是非、こちらも合わせてご覧ください。

この記事を書いたユーザー

Mucoco このユーザーの他の記事を見る

愛犬と一緒に、海を眺めながら暮らしています。

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス