皆さん、もし自分が試してみようとしたスーパーの試食品が誰かの吐き出したものだったとしたら、どう思いますか?

きっと喜ぶ人はいないでしょうし、それどころか、気持ち悪くなってしまうと思います。そして、私が去年の冬、近くのスーパーで見かけたのは、まさにそんな光景でした。

丁度一年前のことになります。私と母は迎春準備のために、近くのスーパーに買い物に行きました。その時、お総菜コーナーに一人の男の子がいました。二歳くらいで、とても可愛らしい子でした。その子の前には山積みになった試食用の唐揚げがありました。何気なく見ている私の前で、信じられないことが起こりました。

幼児は試食用の唐揚げを食べるのではなく、吐き出した!

どうするのかなぁと思っていたら、その子は唐揚げを口に運びました。美味しそうだし、食べたかったんだなと納得して去ろうした私は愕然。何と、その子は口に入れた唐揚げを食べるのではなく、吐き出して元の試食用唐揚げの山に戻したのです。更に、子どもは続けて同じことを繰り返しているではありませんか!

流石に、これは放置できないと思いました。ただ他人が吐き出したものを食べるというだけでも汚いし不衛生極まりないですし、第一、インフルエンザや流行病に感染していたとしたら、一大事です。まだ幼い子ですから、近くに親がいるはずだと探してみました。

母親は近くにいたが、自分の買い物に夢中になっていた―。

その子のお母さんと思われる若い女性が近くにいたのですが、生憎と自分の買い物に夢中になっているようでした。時々、振り返って子どもの方を確認はするものの、子どもの方も利口ですから、母親が見ているときはそんなことはしません。つまり、幼児であっても、自分がしていることは「悪いこと」であると認識してはいるのです。その子はお母さんがまた目をはなすと、唐揚げを口に入れては吐き出していました。

もちろん、母親に注意するべきだと思いました。注意という言い方が良くなければ、教えてあげるべきだと思いました。しかし、一瞬、私は迷ってしまったのです。

幼児がスーパーなど公共の場で他人に迷惑をかける行為をするというのは、実はよくあることです。そして、我が子のとんでもないふるまいに気づかず放置している親に対して、非難コメントが殺到しているスレッドなども見かけます。ただ、そういう場合、注意された親が素直に我が子の非を認めないことが多いというのが実情のようです。認めるどころか裏腹に「ウチの子を悪者にした。言いがかりをつけた」と怒り出すような信じられない親もいるとか。

実は親御さんに注意しようとした寸前、そんな書き込みをとあるサイトで読んだことを思い出してしまった私でした。何しろ、お母さんは子どもの行為に気づいてないのですから、果たして「言いがかりをつけた」と逆ギレされたら、どうしようかという不安がよぎったのです。そんな私に母が言いました。

「親に言うよりは子どもに言った方が良い場合もあるのよ」。

母は何もできないでいる私の前を通り、子どもに近付きました。「ボク、お口に入れて出したものをそこに戻して駄目ですよ」。優しく言って聞かせても、男の子はチラリと母を見ただけで、同じことを続けています。私は、どうなることかとハラハラと見ていました。あくまでも懲りずに唐揚げを吐き出す子に、母は少し強い口調で話しかけました。

「吐き出した物は汚いの。そんなものを皆が食べるところに置いてはいけません」

母と幼児はしばらく見つめ合っていました。また、その子が吐き出しものを元に戻そうとした時、母は「メッ。悪いことはしてはいけません」と言いました。私は子どもが泣き出すのではないかと思っていたのですが、その子はしばらく母と唐揚げを見つめてから、ニコッと笑いました。判ったというような笑顔で大きく頷いて、近くにいた母親の方に戻っていきました。

その時、母がしみじみと呟いたセリフを忘れられません。

「親に言えば、もしかしたらウチの子はやってないと怒り出す可能性もあったでしょ。ああいう場合は、親よりむしろ子ども本人に言い聞かせた方が効果があるのよ」

母が言うには、子ども自身も自分が良いことではなく悪いことをしているという自覚はある、だからこそ、子どもに直接教えてあげた方が良いのだということでした。子ども自身の「悪いことをしてはならない」という気持ち(良心)に訴えかける方が良いのだという考え方に私は深く共感を覚えたのです。

なるほど、と納得できました。流石に子育て、人生のベテランであり大先輩だけある言葉でした。念のため、私はレジで支払いを済ませる時、店員さんに事の次第を報告し、その子が吐き出した唐揚げがまだ残っているので、早急に処分して欲しいとお願いしました。店員さんはもちろん、そんなことは知らず驚いていましたし、「汚い」と顔をしかめていました。

私がいちばん驚き呆れたこととは。

この出来事は母が子どもに言い聞かせ、子どもも素直に言うことをきいてくれた―それで落着でした。ただ、レジで支払いを済ませた直後、私は二度、驚くことになりました。

両親が近くにいながら、子どもを好き放題にさせていたという驚くべき事実

あろうことか、その子はお母さんだけでなく、お父さんとも一緒にスーパーに来ていたことが判りました。そして、お父さんの方を私はそれまでに何度も目撃していました。その男性は子どもの近くにいて、子どものすることを見ていました。つまり、父親の方は幼い息子が唐揚げを吐き出していることをちゃんと知っていたのです。なのに、一言も注意をしないというのは、あまりにも親として無責任だと感じました。

よそさまのことではありますが、自分の買い物に夢中で我が子の行いに気づきもしない母親、行いを知って他人に迷惑をかけるのを承知で知らんふりをする父親。そんな両親に育てられた男の子が将来、どんな大人になるのかと不安になったのは確かです。

それ以来、どうもスーパーの試食コーナーのものは何があるか判らないと食べる気がしなくなってしまいました。

人として「してはいけないこと」、幼児期から善悪の判断を教える必要性を感じた出来事。

この場合、人として「してはいけないこと」を親が子どもに教えられていないといえます。やはり、「他人に迷惑をかけること」は「してはならないこと」だと幼児期から親がきちんと教えることが大切なのでは痛感した出来事でした。

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フリーライター。ウェブ小説を書いています。2013年、「歴史浪漫文学賞」において最終選考通過。入賞候補作品「雪中花~とりかえばや異聞」書籍化。洋の東西を問わず、歴史が大好き。自称【歴女】です。韓流時代劇に夢中。そのほかにも美容・天然石アクセサリー作りなどに興味があります。
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