記事提供:長谷川豊 公式ブログ

大阪に桜宮高校という高校があります。皆さん、名前を憶えているかもしれません。2012年、体罰と称する暴力行為により、被害生徒が自殺するという悲しい事件がありました。

橋下市長が厳しく問題視し、名門ともいわれていた「体育科の廃止」を訴えたことは大きくニュースになりましたよね。

あの桜宮高校が現在どうなっているのか?私がキャスターを務めるテレビ大阪の『ニュースリアル』で特集を組みました。

橋下市長が厳しく糾弾したこともあり、2013年には学校に対するバッシングだけでなく、校舎の窓ガラスが割られたり生徒の自転車が壊されるなど、いわれなき被害も相次ぎました。

今週月曜日、その桜宮高校で1年で最も盛り上がる桜高祭(さっこうさい)が行われました。

中心的に取り組んでいる生徒たちは当時、中学3年生。あの時、あの報道時に受験生だった子たちです。実は今回の体育大会の責任者を務めた3年生の杉本君も、本来であれば桜宮高校の体育課に入る予定でした。

突然の行政による体育科の一方的な廃止。

杉本君は「桜宮高校の野球部に入る」という夢が断たれ「当時は泣きました」とインタビューに語ってくれました。しかし、それでも意思を変えないで桜宮に行こう、と体育科の廃止された桜宮高校にそのまま進学したのです。

事件後、桜宮高校はあらゆる教育改革を進め、もともとあった問題点を全力で洗い出しました。

・自由に意見が言えない上下関係があったのではないか?
・精神論が行き過ぎていたのではないか?
・学校自体が閉鎖的だったのではないか?

一つ一つを、教師と生徒が一体となって改善していきました。元バレーボールの代表監督である柳本晶一氏も招聘(しょうへい)し、教育改革も進めました。専門のスポーティングマネージャーを雇用し、科学的なトレーニングを進めました。結果…

各クラブの成績は3年前と比べ、現在は同水準にまで回復しているのです!

繰り返しますが、体育科はすでに廃止となっています。それでも、桜宮高校は今、あの時の一件を受けて大きく成長していたのです。

あの時、「桜宮高校自体を廃校にすべき!」「もう桜宮は終わった!」と口々に攻撃し、さげすんでいた人々は、現在の桜宮高校に対して詫びるべきです。

詫びなくてもいいが、彼らの真摯な努力に敬意を表すべきだ。ネット上には、いまだに情けない書き込みが残っています。

やめてしまうことは簡単です。

なくしてしまうことは実に楽な選択肢です。

しかし、教育のとても大切な要素として「失敗し・苦労し・涙を流し」そこから学ぶ、ということがあることを忘れてしまっている人が、最近は多すぎる気がします。

それらの人は、いたずらに危険から子供たちを遠ざけ、いたずらに子供を甘やかし、まるで一見すると子供たちに寄り添っているふりをして、実態は子供たちが「学べる機会を奪っている」のではないか、と私は危惧しています。

現在、日本各地で行われている「組体操」に対してのバッシングが相次いでいます。

「危険だ!」「ケガをする!」「後遺症が残る可能性も!!」…。

とても大切な指摘ですし、それらの意見の全てを否定するつもりはありません。

しかし、それらの意見の急先鋒ともいえるある先生のコラムを読ませていただきましたが、結論から言うと、あまりにも内容が薄く、「まず否定ありき」でいろいろなデータを出してしまっているため、全く説得力のないもので驚きました。

その中で一番驚いたのが「組体操」に対するあまりに強い偏見でした。

「子どもは、先生や保護者の駒ではない」

「巨大組体操が、子どもたちにどのような負荷や危険を与えているのか」

「『感動』から離れて、『リスク』に目を向けることが大切である」

この先生は、いったい何校の学校に自ら足を向け、何人の生徒と保護者に直接意見を聞き…いや、そもそも実際に学校で組み体操を教えた体験はあるのでしょうか?あまりに薄く、偏見が強いものの見方に辟易としました。

私たちの『ニュースリアル』では、実際に現場に足を運び、現在の大阪府内の小学校の現場の児童、そして保護者のみんなに直接マイクを向けアンケート調査を行いました。一番被害を被る可能性の高い子供たちです。

そして、例の八尾市の小学校の事件もありました。大阪では教育委員会による規制も発表されていました。結果は…

大阪の70%以上の児童・保護者が「組体操のピラミッドはやめるべきではない」という答えでした。

「分からない」を除き、「ピラミッドはやめるべき」というアンケート結果はわずか10%にも満たないものでした。

きっとこの先生は、なぜ、現場の子供たちや保護者がこう答えているのか、全く理解出来ないことでしょう。

頭から否定するためにおそらく、机の前でネットをカタカタと叩き、データと事故件数を、自分の意見に寄せるために出しているだけなので、上記したような稚拙な分析しかできていないのではないでしょうか?

私も、この先生が指摘するように、組み体操を無駄に高く積み上げたり、生徒の安全を全然考えもせずに、先生方が暴走しているのであれば、「ピラミッドをやめろ」と指摘するでしょう。しかし組み体操を批判する方々の中には…

「一体感を得られる程度」

「下の子は感動すらもない」

「いったい何を学べるのか」

と決めつけている人もいます。批判している暇があれば、勝手な決め付けをする前に、現場に足を運び、もっと汗をかくべきだと思うのは私だけではないのではないでしょうか?

組み体操を批判している方々は、一度冷静になって「なぜそれでも組体操をしているのか」を現場のみんなに聞くべきでしょう。パソコンの画面に真実は存在しません。きっと、思ってらっしゃるものとは比べ物にならない熱い思いを語ってもらえることでしょう。

現場の先生方が、生徒を「駒だ」なんて思ってるわけないでしょうに。現場の先生方が、リスクを考えていないわけないでしょうに。

子供たちを一番大切に思っているのは、多くの現場の先生方なのだと私は信じています。

私は、こうやって手抜きして、一方向からしかものを見ずに、リスクがある、だからあれはやめろ、これもやめろ!と言っている方々を認めません。

汗をかいている、低い給料で子供たちと接してくれている多くの先生方に対して失礼にもほどがある偏見です。私も先生の全員が聖人君子だ、というつもりはありませんが、少なくとも生徒を「駒だ」なんて絶対に思ってはいない!

組み体操にリスクがあるのは理解しました。他にもリスクがあるスポーツや行事は山のようにある気がしますが、そこは理解します。しかし、リスクがあるなら、まずすべきことは…

リスクを研究し「改善」することです。「やめる」ことじゃあない。

やめてしまっては「何も学べない」で終わりです。工夫も研究も存在しない結論だ。あまりに幼稚と言わざるを得ません。この先生が提示すべきは「やめろ」ということではなく「組体操のリスクを軽減するアイデア」ではないかと思うのは私だけでしょうか。

あの時、桜宮高校が世間の声に押されて「廃校」という選択肢を取っていたら、今年の素晴らしい桜高祭の大成功は存在しなかったでしょう。

取材に答えてくれた杉本君、生徒会長の丸山さん。みんな立派でしたね。

バッシングで嫌なことも多かったでしょうが、取材したディレクターより素晴らしい桜高祭だったと報告を受けています。皆さんは他の高校では得られなかった素晴らしい経験をしたことでしょう。どうか胸を張って、受験に臨んでください!

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス