アンパンマンは子どもに悪影響を与える?

 日テレ系で放送されているアニメ「それいけ!アンパンマン」。「どんな子どもも必ず通る道」と言われるほど、乳幼児に人気のある番組です。

 先日、3歳の女の子のお母さんとアンパンマンについて話す機会がありました。そのお母さんはお子さんのアンパンマン好きを自覚しながらも、最近アンパンマンを見せるのをやめたと仰っていました。「バイキンマンのような悪者が出てくる世界をまだ見せたくない」と。

 その発言を受け、改めてアンパンマンをまじまじと見てみました。そして気付いてしまいました。「バイキンマンの悪事は概ねアンパンマンによって作られている」ということです。

バイキンマンの行動パターン3つ

 改めてアンパンマンのストーリーは見てみましょう。大きく分けてこの3パターンになります。

その1 バイキンマンが食べ物を横取りするパターン

食べ物をモチーフにしたゲストキャラクターが登場し、街の人達やアンパンマンの仲間たちに食べ物を提供します。そこへバイキンマンが登場し、食べ物を横取りしてしまいます。そこでアンパンマンやその仲間たちがバイキンマンを倒し、一件落着となるパターンです。一番多いパターンといえます。

その2 ドキンちゃんによる連れ去り指示がでるパターン

ゲストキャラクターが食べ物をモチーフにしておらず、キャラクターがかわいい場合に多いのですが、ドキンちゃんが「バイキンマン、一緒に遊びたいから連れてきて」と無茶苦茶な指示をするパターン。こちらも連れ去られたキャラクターを助けに来たアンパンマンやその仲間たちがバイキンマンを倒し、一件落着。

その3 バイキンマンが悪事を働かないパターン

その1と同じく、食べ物をモチーフにしたゲストキャラクターが登場します。ゲストキャラクターは街の人達やアンパンマンの仲間に食べ物を提供します。そしてそれと同じようにバイキンマンにも提供します。するとバイキンマンは「今日のところは勘弁してやる」などと捨て台詞をはきながら飛び去っていきます。
オクラちゃんのような誰にでも優しい天然タイプのキャラクターが登場した時にありがちなパターンで、『バイキンマンさん』などと呼び善人と悪人を区別しません。

食べ物を望むだけ与えられるはずの世界で…

 ご存知の方も多いと思いますが、アンパンマンは作者のやなせたかし先生が戦時中に経験した飢えの辛さをもとに創作されています。アンパンマンの世界には通貨は存在せず、望むだけ食べ物が与えられ、それが幸せだとされている世界なのです。


Q.アンパンマンワールドにはお金はありますか?

A.アンパンマンワールドでは、自分で作ったものをあげて、みんなに喜んでもらうことだけでうれしいので、お金はまったく必要ないんですよ。

出典 http://www.anpanman.jp

 そこで一つの疑問が出てきます。

 バイキンマンに食べ物が与えられないのはなぜだろう…

正義のあり方ってなんだろう?

 作中でバイキンマンは鬼のように食べ物を食べます。人から奪います。それゆえ悪者と認定されアンパンマン達正義の味方からの裁きを受けます。

 しかし、上記の「その3」のように食べ物を与える側が先に与えてしまえば、バイキンマンは悪事を働くことはありません。アンパンマンの正義が裁くことではなく、悪者にすら与えることだったらアンパンマンの世界は変わるでしょう。

 その時、ある一つの可能性に気付きました。

 そもそも悪事は、悪者を断罪する、排除することから生まれているのではないだろうか?ということです。これは社会にもいえることではないでしょうか?

この世界をどう生きるか

 犯罪、不正などが起こると、その存在を排除したり断罪したくなる気持ちがどうしても働きます。しかしそれはフタをしただけで、何の解決にもならないということを、私たちはそろそろ学ばなければいけないと思います。
 もちろん犯罪はあってはならないことです。しかしその根にあるものが変わらなければ、排除や断罪が更なる犯罪を生むことがあることも自覚しなければならないと思うのです。

 アンパンマンはどんな世界なのでしょうか。悪事がくじかれる正しき世界なのか、それとも悪事が排除される世界なのか、勧善懲悪の美しい世界なのか…感じ方は人それぞれ違うでしょう。冒頭のお母さんのように悪者から遠ざけたい、見せたくない、という気持ちはわからないでもありません。各家庭の教育方針ですから否定もしません。しかし私はこう思うのです。

 子ども達が目にするこの世の中は、単純に美しいものばかりではありません。一見すると美しく見える正義ですら、その下敷きになっている人がいて成り立っているという面があるのです。さらに言えば子どもの中にある感情も美しいものばかりではありません。親から見ると「負の感情」とされるようなものもたくさん持ち合わせています。

 見たくないものときちんと向き合う。排除するだけでなく、その原因が自分を含めた社会にもなかったか疑ってみる。アンパンマンというテレビアニメを子どもと一緒に見ることで、複雑な世界に寄り添うヒントを見つけることもできます。

 大切なことは世界を悲観して悪者探しをすることではなく、自分がその世界でどう生きるかを決めることです。そうすれば世界はもっと明るくなる。そんな気がしてなりません。
 

この記事を書いたユーザー

味井戸バラ このユーザーの他の記事を見る

3歳0歳育児中のワーキングマザー。感情コントロールが苦手な長女を育てていくうちに、育児書マニアに。愛読書は雑誌「PHPのびのび子育て」、佐々木正美先生著「『育てにくい子』と感じたときに読む本」など。現在佐々木正美先生の「かわいがり子育て」を実践しており http://iyaiyaki.jp/ ブログに記録を残しています。

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