こんにちは、家族カウンセラーの宮本まき子です。子育てや家族問題の電話相談室に22年間勤務、私が受けた相談だけで約2万件。悩みの上位に「コミュニケーションがとれない、わからない」なのは昔も今も変わりなし。おそろしいのは、小さな悩みでも貯めこんでいると、そのうち利子がついて「大きな悩み」の積立貯金になってしまいます。

単行本やコラムを書いたり、講演したり、テレビでコメントしてつくづく思うのは、人間関係の行き違いから、しまいに人生を諦めたりしないで欲しい。知識と経験に「裏ワザ」をトッピングしてさまざまな「コミュニケーションに関する悩み」にお答えしましょう。目からウロコがポロリと落ちたら、あなたの人生はもっと見通しがよくなりますよ。

思春期なんかこわくない

思春期は子どもがおとなに成長する後半のプロセスです。明治維新の150年前まで14、5歳になれば武士の男子は元服、商家なら丁稚から手代になり、女子は嫁入り準備の年頃でした。つまり、社会的自立と思春期は同時進行でしたから、否応なくおとなにならざるをえません。悩むヒマなどなく、誰もが「自分の才覚で一生食っていく」道を探っていたのです。

社会人になる時期が遅くなった現代では、思春期特有のホルモン分泌で「中途半端なおとな」でいることが多くの悩みや惑い、不安をおこします。高校生のスマホ利用率が80%を超えたそうですから、この相談室にたどりついた中高生諸君に言いたい。「すべて発達段階。数年後にそうだったのかとわかるから、今焦らなくていいよ」そしてわが子の「変化」にうろたえる親御さんは再確認しましょう。子育ての最終目標は「どんな状況下でも、自分で考え、自分で食って(自立して)、身を守り、生き抜く力をつけること」であります。

思春期前期(おおよそ中学生時代)

Q:友だちが上背が伸びて男っぽくなっていくのに、僕はチビで色白のままです。女の子にモテないのではと、不安で焦ってます。

出典 https://doctors-me.com

A:思春期の必需品は「6歳年上の同性」彼に具体的な中高生時代の変遷(「俺の友だちもチビだったけど、いまじゃ180cm以上だぜ」「ヒゲがはえれば背も伸びるよ」など)を聞けばホッとするでしょう。14、5歳の男子の性ホルモンの分泌は急激で劇的です。ある日突然噴出、毎日増量されて一年ぐらいで成人男性に近いホルモン量に。つまり毎朝目覚めるたびに心身ともに「昨日と違う自分」がいるわけで、いわば「ホルモンの嵐」に戸惑うばかり。君のいまは「嵐の前の静けさ」なんですね。

大学生男女180人に「中学時代の悩み」を語ってもらったら、最多が「友だち、先輩との人間関係」の107人、次点が「にきび、容貌、スタイルへのコンプレックス」の53人、次が「好きな子が振り向いてくれない、恋」の45人、「性への戸惑い」15人…。なんのことはない、どれも自分の心の動揺なんです。「友だちの視線や評価が気になる、俺にはセックス・アピールがない」とクヨクヨ悩んでいました。3年たてばホルモンのおかげで自然に解決するだろう悩みに夜も眠れない、親の言葉もシャットアウト、そんな極端な視野狭窄も思春期の特徴です。

ちなみに「中学時代、誰の言葉を信用しましたか?」の問いにはほぼ90%が「友だち、先輩」をあげ、親は最下位。担任は下から2番目でした。小学生のときにべったりだった親や教師との人間関係を悩んだのは180人中たったの10人。思春期は誰も自分のことでいっぱいいっぱいなんですよ。

≪自分でも気がつかないうちに心が病んでいるかも…≫
心のお疲れが爆発する前に、今の心の状態を知るには

Q:中一男児、中三女児の母親。反抗しないかわりに会話が少なく、返事はすべて生返事かLineで返ってきます。

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A:「思春期トリセツ本」の多くは、「それっ、親子の断絶じゃ」となりがち。でも家族内なら、思春期のコミュニケーションはもっとアナログな、音なしの「ボディ・ランゲージ」でもよろしいのでは?「放っておいてほしいけど、かまってほしい、見守っていてほしい、無視しないで」というアンビバレントな言い分にはつき合いきれないでしょう。

自分の容姿と友だちとのLineの即レスばかりクヨクヨイライラ悩むわが子への「親のお仕事」は「メシ、フロ、ネル、少しのカネ」と言ったら、講演会場の中三の生徒たちがどっと笑いました。人は寒くて空腹だとロクなことを考えません。その日嫌なことがあっても家に帰りさえすれば腹いっぱい食べられて、冷えた身体を風呂で暖めて、気持ちのいい寝床で「明日はきっといいことがある」と思いながら眠りにつく。昔も今も、ライフラインの確保は「思春期傷だらけ症候群」の最短回復法なのです。

「別に」「うるせぇ」しか言わないわが子に口を聞かせる魔法の言葉があります。「おこづかい、足りてるの?」この撒き餌で振り向かない子はまずいません。「足りない!、欲しい!」と食いついてきたら、あとは問い詰めないこと。ああだ、こうだと財政事情を陳述しますから、「あら、まぁ、そうなの、へえー、大変ね」と適当に「合いの手」を入れて「聴いてますわよ」のポーズをしてください。「こうすればいい、ああしなさい」みたいに熱心向き合うと逆に引いて、「聴いて欲しいけど、支配するなよ」の無言のサインが顔つきに出ます。「ま、困ったら相談にのるわよ」程度のエールでじゅうぶんです。失敗も挫折も学習の一部、へこたれたときに戻れる所が「自分のうち」であればいいですね。

思春期後期(高校生時代)

Q:高校がおもしろくない。先生も級友もサイテー。中退したいのに親が反対します。

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A:当人は気づいてないでしょうが、履歴書が「高校中退」ではなくて「中卒」になり、進路の幅がぐっと狭くなります。友人は子どもの意志を尊重したのに、数年後に定職につけない息子から「なぜあの時点で止めてくれなかった」と逆恨みされたとか。「大学検定試験」に受かるのも大変、専門学校に進むのにも専門業種の資格をとるにも「高卒」の履歴が必要です。在学していれば難なくとれる卒業資格に、余分な年数と労力をかけることはない。

おとななら、親ならそういう効率の良さを計算しますよ。あなたも思春期前期と違ってプレ社会人なのですから、「親は自分をだまそうとしている」なんて幼稚な勘繰りを捨てて、じっくりと対策を話し合ってみたらいかがでしょう。

それから、学生時代に少人数の「嫌な他人」とつきあえていないと、社会に出て不特定多数の「嫌な他人」とつきあうのがしんどくなります。「お世辞を言う、嘘をつく、いいかげん、だらしない…」サイテーな連中は、見かたを変えれば「人を喜ばす、あいまいにする、ゆるい、気楽な」自由人かもしれません。学生時代はモラトリアムといって、無風のお試し期間だから、自分と同じ視点や価値観を持たない人とどう折り合うか、いろいろ試してみればいいのです。この対人関係の実験を「怖れ知らずに」社会人時代に職場でやってしまうと、問題人物にされてしまうかもしれません。

Q:俺の彼女は手はつないでも、絶対にやらせないから恋愛にならない。不感症じゃなかろうか。

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A:15年前、おばちゃまが大学で教養課程を担当したとき、250人の講座生の中で「ちゃんとした性教育を受けてきた」のはわずか3人でした。大多数はアダルトビデオにエロ漫画、ネット情報で学習というお粗末さ。高速道路を無免許で走っているような実態です。ビデオの中のあれこれ「ヘンタイ」を真似て、彼女から罵声を浴びたの、往復ピンタされたの、蹴飛ばされたのという学生も少なからずいたし、AVの筋書を盲信して、「寝れば恋に落ちるはず」と順番を間違えているケースもあって、おばちゃまはただただ、ため息をつくばかり。

だんだん腹も立ってきて、セックス以前に、恋をしなさい、恋を!一人の異性を好きで、好きで、好きでたまらないとずっと思い続け、流され続ける。そしてある日滝壺に落ちて大失恋する。心の整理をつけて、どん底から這い上がる。これが正しい恋のやり方です。早い時期に失恋しておけば免疫もついて、次回はもう少し早く立ち直れる。その繰り返しでおとなの恋に到達するんです。恋や愛を使い捨てにするばかりで、誰かを大事に愛し続ける持久力を持てなかったら、親になったときにどうやって子どもを愛し続けるの?」と怒鳴ったら、教室中シーン。やがて言うわけです。「その話、高校で教えて欲しかった。そうしたらこんなに苦しまないですんだろうに」

というわけで、質問者の高校生に忠告。不感症の心配より、本気で彼女(彼)を「好きで、尊敬してる」かどうか、自分の想いを「言葉で」伝えられたかどうかを繰り返し自問しましょう。全世代にわたって、恋愛は「究極のコミュニケーション」です。そして思春期にしかできない恋があります。それら特権を捨てて、おとなびた恋を前倒しするのはもったいない。発達というのは順序通りにいかずに飛び越すと、後でひずみがでたり、やりなおしをしに戻ったりするそうです。いい年なのに女子高校生の制服に異常に執着したりするオッサンになるのはうらわびしいですよ。乞う、再考。

≪私も実は…?性欲の度合い、チェックします!≫
うわ…私の性欲、強すぎ?!性欲の強さに実は相手もウンザリしてるかも…

まき子おばちゃまからの伝言

「自分が醜い芋虫みたいで、できればさなぎになって籠り、蝶になるまで出て行きたくなかった」。運動会で体が小さいのを女生徒たちに「かわいい~」と囃された彼は、翌日から布団にもぐったままで、不登校になりました。「異性の視線が気になってなんて、誰にも言えず、親にも先生にも心配をかけました。今思えばバカみたいな原因ですが、思春期ってそこしか見えないんですね」半年後に復帰したのは「大丈夫か?」と入れ代わり立ち代わり蓑虫くんを見舞いに来た担任や級友たちに根負けしたから。教え子が語った中学時代の実話です。

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