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医師が解説する医療・健康サイト「Doctors Me」編集部です。
今月24日、安倍首相が自民党総裁に再任され『ニッポン「一億総活躍」プラン』を打ち出しました。「新3本の矢」と言われる3つの成長戦略の中には、第二の矢「夢をつむぐ子育て支援」として出生率1.8が目標に掲げられています。
そんな中思い起こされるのが、昨年12月7日の衆院選応援演説で、麻生太郎財務大臣の「子ども産まないのが問題」という発言が波紋を呼んだこと。

なんか「高齢者が悪い」みたいなイメージ作ってる人がいっぱいいるけど、子ども産まないのが問題なんだからね。長生きするのが悪いこと、みたいなことを言ってもらっちゃ困りますよ。

出典 http://logmi.jp

12月7日「中村ひろゆき 手稲区区民センター個人演説会」より (全文

「産まない」のではなく「産みたくても産めない人」がいることを置き去りにしている点が、論争を呼びました。

また、以前には東京都議会で女性議員に対し「結婚しろ」「子供を産めないのか」といったヤジが飛び、問題となったニュースがあったように、"女性の活躍"、"子育て支援"を日本の成長戦略として掲げているにも関わらず、その中心である議会、議員の女性への認識がまだまだ甘いようにも捉えられます。

この件に関し、Doctors Meで妊活についてのコラムを執筆いただいている、

・産婦人科専門医 樽井智子先生
(コラム:正しく知ろう妊活

・妊活カウンセラー 今井さいこ先生
(コラム:妊活をもっと楽しもう!

上記お二方の先生それぞれに、インタビューしてみました。

まず、産婦人科専門医として日々、妊娠を希望する女性や、希望していてもなかなか産めない女性の治療やお話を聞いている、樽井智子先生にお伺いしました。

Q1:今回の「子どもを産まないのが問題」という発言は率直にどう感じましたか?

『子供を産まない』のではなく、『子供が産めない』状況にあるカップル、特に女性に対する配慮が見られない発言、男性ムラ社会にいる方の発言と感じました。

実は、今回の麻生氏の発言は、氏の支持者(主に中高年の有権者)に向けて、少子高齢化について話をしていた際の言葉で、『子供を産まないのが問題』には、明確な主語がありませんでした。

中高年の有権者に向けて話しており、主語が、「あなた」か、「あなたの子供世代」か、「世間一般の女性」かは、はっきりしません。ですが、『産む』のは、女性だけが出来る事です。
発言の後半で『子供が生まれないから』、少子高齢化になる、と言っており、『子供を産まない』『女性』だけを非難するつもりは、なかったのかもしれませんが、『子供を産まないのが問題』と言われれば、主語は『女性』と取られて仕方がないと思います。

『少子化=女性が生まないのが問題』、と思っているのではないのであれば、言葉をもう少し慎重に選んで使って頂きたかったです。

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Q2:何故このような発言がつい出てしまうのでしょうか?

子供を産み、育てる現場にいた事のない男性だから、こういった発言をしてしまうのだと思います。

さらにその背景には、
第一に、多くの男性は、少子化の原因は、女性にある、特に子供が出来ない不妊の原因は、女性(だけ)にある、と考えていること。(著者注;不妊の原因は、男女半々です。参考

第二に、与党自民党にも野党にも、政治の場には、女性、特に出産・子育てを経験した女性政治家が少なく、男女分業、子育ては女性がする仕事、といった古い男性的な考え方が、 政治家の考え方の主流であること。
があると思います。

本来、子供は、カップルで作り、産み、育てていくものではないでしょうか?

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Q3:問題を提起しつつ、誤解を与えないためにはどういった発言が良かったのでしょうか?

一般的に、子作り=性交渉、なので、妊娠・出産に関する発言は、注意していないと、セクハラになってしまう可能性が高いです。

男性がセクハラ発言をしない為には、今話している相手の女性が、自分の恋人、妻、娘、孫娘だったら、同じ様に話すか?どう話すか?と、言葉に出す前に考えていただければ、セクハラ発言にならなくなると思います。

また、出生率低下=女性が生まないのが問題、と考えられがちですが、女性が生まないのではなく、産めない、産みにくい現状があります。少子化の原因・責任を全て女性に押し付けるような発言、考え方は、ぜひ改めていって欲しいと思います。

そして、会社の同僚、近所の方、親戚などからの『お子さんは?』『子供はまだ?』といった本人には悪気がない言葉によって、生みたくても産めない人が、傷つけられています。

正しい知識やデータを知り、その上で、頭で理解するだけでなく、その現場にいる人ときちんと対話をし、その人の立場・現状を心から理解していれば、自然と、不適切な発言はでてこなくなると思います。

Q4:本件をふまえ、今後政界や施策に期待したいことを教えて下さい

価値観やライフスタイルが多様化している中、政治家は、少子化対策の必要性について、改めて示しながら、議論を進めることが必要と考えます。

政治・行政の仕事は、国民一人一人を幸福にすることではないでしょうか? 少子化対策の際には、くれぐれも「産めよ 増やせよ」という誤ったメッセージが伝わらないようにしながら、「産みたい」という希望を持っていても、様々な事情でかなわない人にプレッシャーを与えることなく、「産める」環境作りをして頂きたいです。

ライフステージの、「結婚・妊娠・出産・育児」の各段階において、子供を産むのを妨げる原因・要因があり、また特に「出産・育児」については、第1子、第2子及び第3子以降ごとに、異なる阻害要因があると考えます。

特に働く女性の立場から考えると、 女性人材の活用と出生率の回復を共に実現するには、ワークライフバランスの達成できる社会の実現が不可欠だと思います。

ワークライフバランスの達成には
・育児と仕事の両立支援
・柔軟に働ける環境の実現
の2つが必要です。

妊産婦が安心して出産・子育てできる社会を作るためにはどのような取組が必要か?
生命を生み、育むことの大切さへの理解をどのように広げるか?
を踏まえて、きちんと予算を与え、有効な政策を作り、実行していって欲しいと思います。

続いて、妊活カウンセラーとして日々、妊娠を希望する女性のお話を聞いている今井さいこ先生にお話を伺いしました。

Q1:今回の「子どもを産まないのが問題」という発言は率直にどう感じましたか?

この発言が報道されたときに一番に感じたことは、前後の文脈や真意がどこにあるのか、ということを考えることが大切だということです。
全文を読んでいない方は読んでみると良いと思います。(全文

それを踏まえてこの発言を聞くと、当事者である私としては正直そこまで不快に感じない、というのが率直な意見です。

高齢者が長寿であることは身近な方たちにとっては喜ばしいことですし、当然ですが高齢者を責める理由はありません。一方で、人口が減っていることを考えると、若い世代が子どもを産むことは大切だと常日頃から思っています。

だからこそ、私たち世代が「産まない理由」がどういうところにあるのか、という実態をきちんと把握し、その理由に含まれる「産めない」現状に対する政策を期待しながら、妊活カウンセラーをしています。

もしかして不妊症?なかなか子どもを授かれない原因はどこに…

Q2:何故このような発言がつい出てしまうのでしょうか?

一言で言うと、心の声がそのまま出てしまった、ということだと思います。
その背景には「自分の意見が大多数であり、賛同を得られる」という自信を持っていること、また、安心して話ができる場であった、という環境的な要因もあると思います。

Q3:問題を提起しつつ、誤解を与えないためにはどういった発言が良かったのでしょうか?

まずは「不妊」という分野に対して理解があること、応援する立場であることを一言添えることが必要だと思います。

また、「分かってます」という顔をして意見を述べるのではなく「正直、気持ちは全て理解できていない」「分かっていない部分もある」と認めたうえで発言する潔さも時には必要だと思います。

妊活カウンセラーとしていろいろな方とお話をする中で、「不妊の気持ちは当事者にしかわからない」という声をよく聞きます。私は万人が理解できるものだとは思っていませんが、不妊ではなかったけれど応援したい、という方がたくさんいることも知っています。

特に、男性や既に子どもがいる方、子育てを終えた方は誤解されやすい立場にいると思うので、この点を気をつけると良いと思います。

Q4:本件をふまえ、今後政界や施策に期待したいことを教えて下さい

私は「子どもを産みたいけど産めない」という女性や夫婦をサポートしているのですが、その中で大変なことを聞くと

・病院通い
・仕事との両立

という声が圧倒的に多いです。

現時点では個々が勤務する会社のサポートに期待せざるを得ないところもありますが、それにも限界があると思いますし、偏りも出てくるでしょう。なので、施策で援助してもらう仕組み作りには期待したいです。

例えば、妊活をサポートする取り組みをしている企業には助成金を出したり、政府で妊活の実態を把握しその情報を広く公開して企業の仕組みづくりに役立てる、など。

人口増加や出生率増加に臨む政府には、もっと私たち世代の生の声を聞く場を増やしてもらうことで施策をつくるヒントがたくさん得られると思うので、この点には積極的になってほしいな、と思います。

と同時に、私たち自身も現状や声をもっと発信していく必要もあると思うので、私自身も活動面で情報発信には力を入れていきたいと考えています。

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