「暑さ寒さも彼岸まで」といいますが、涼しくなりはじめた9月中旬頃、色鮮やかな花を咲かせる彼岸花。

山林原野ではほとんど見られず、人里に近い田んぼや墓地の近くに咲いています。私達の身近にありながら、その燃えるような赤い色は時として不気味にさえ感じるほど。

今回は妖しくも神秘的な彼岸花の魅力をご紹介いたしましょう。

彼岸花という名前の由来

「彼岸」とは現世の向こう岸、極楽浄土のこと。
秋の彼岸(9月15日~9月26日頃)とちょうど重なるように開花し、一週間ほどで散ってしまうことから「彼岸花」と呼ばれています。

彼岸の期間に含まれる「秋分の日」は昼と夜の長さがほぼ同じになり、太陽が真西に沈みます。極楽浄土は西方にあるとされているので、あの世とこの世が交わる日と考えられていました。

墓地の周りによく植えられていることから「死人花」「地獄花」「幽霊花」とも呼ばれます。根に毒を持つ彼岸花は鼠などから遺体を守るために植えられていましたが、彼岸の時期に墓地で揺れている毒花の姿が、この世ならぬものに見えたのかもしれません。

「彼岸花を持ち帰ると火事になる」
「彼岸花を摘むと死人が出る」
「彼岸花を摘むと手が腐る」

花が炎に似ていることや、墓地に植えられていること、毒を持っていることからこのような恐ろしい迷信も生まれました。

別名は曼珠沙華

彼岸花の別名は「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」。
サンスクリット語で“天上の花”という意味です。「おめでたい事が起こる兆しに赤い花が天から降ってくる」という仏教の経典によります。

一方では不吉、また一方では僥倖の印。相反する二つの名を持ち、なんとも捉えどころがありませんね。

さらにお隣の国、韓国ではロマンチックな名前が付けられています。

花と葉が想い合う「相思華」

彼岸花は花と葉が別々の時期に出ることから「葉見ず花見ず」とも呼ばれますが、韓国では「相思華」と名付けられました。

「葉は花を思い、花は葉を思う」

同じ根から生まれたのにお互いを見ることのできない花と葉が想い合うようすを表した名前です。相思華は秋の季語でもあります。

ほかにも「天蓋花」「狐の松明」「剃刀花」など1000の呼び名があるといわれています。これほど多様なイメージを持たれる花というのも珍しいでしょう。

普通の植物とは逆の成長サイクル

何より不思議なのは普通の草花が咲く春に枯れ、冬に青々とした葉を茂らせていることです。

秋雨のあと地面から芽を出し、一気に茎を伸ばします。そして40~50センチほどの高さまで伸びるとあの特徴的な花を咲かせます。やがて花は茎とともに枯れ、そこから葉が伸びてきます。春になり、すっかり枯れてしまうと秋が来るまで地表から消えてしまうのです。

生き様も見た目と同じで個性的。人間のように右へ倣えとしないところが面白いですね。

飢饉の備えとして

強い毒を持つ彼岸花は年貢の対象から外されていました。しかし、その毒は水溶性で水にさらせば取り除くことができます。球根からは良質のでんぷんが取れるので、いざという時の食糧にもなりました。

もっとも、昔の人は完全に毒を取り除けたかどうか測定できないのですから、背に腹は変えられぬという覚悟をもって食べたのでしょう。生き抜くことの苦労がしのばれるお話です。

色のバリエーション

彼岸花には赤以外に白や黄色の花もあります。
白い花はシロマンジュシャゲ、黄色はショウキズイセンというヒガンバナ科の花です。ピンクやオレンジなどの花もあり、同じ花でも違う表情を見せてくれます。

彼岸花を見るなら

天然の群生地としては日本最大級、埼玉県日高市の「巾着田」は赤い絨毯のように川岸を埋めつくす彼岸花が圧巻です。神奈川県横浜市の「西方寺」は赤・白・黄の彼岸花を見られるお得なスポット。

見頃は今月末ごろまで。開花時期などは各サイトでお確かめのうえお出かけください。

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華蓮 このユーザーの他の記事を見る

子供の頃から不思議なものを見つけたら調べずにはいられない性格。ちょっと恥ずかしがり屋なのはご愛嬌。一般の人が知らない「面白い」を探すのが私の喜びです。

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