記事提供:東京都議会議員 おときた駿 公式サイト

こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。今日は兵庫県明石市まで、弾丸日帰り視察(片道4時間!)の帰りの新幹線です。

さて、以前の記事でも少しだけ触れましたが、

「手話って『言語』なんだよ」

と言われても、何のことかわからない人が大多数だと思います。一般的な聴覚障がい者・手話に関する認識は、このくらいではないでしょうか。

・聴覚障がい者は全員、手話を使うことができる
・手話は、日本語を手で表す技術である

…まあつまり、この世界に入って勉強する前の私の認識なのですが(苦笑)。これはどちらも誤りです。厚労省の調査によると、聴覚障がいをお持ちの方で、手話を主なコミュニケーション方法としているのは約14パーセントにすぎません。

そしてその手話の中には、先天的に耳が聴こえないろう者の方が、『言語』として身に付ける「日本手話」と、日本語を母語として育った方が、後天的に身に付ける「日本語対応手話」の2種類があります。

我々がイメージしている日本語を手で表す、いわばツールとしての手話は後者で、健常者の手話通訳者や中途失聴者の方などが身に付ける手話は、こちらの日本語対応手話になります。

これに対して、生まれついて聴覚障害を持つろう者の方々は、日本語とは体系も文法も異なる独自の表現である「日本手話」を身につけます。

この日本手話は、音声を持たないだけで立派な「言語」として成立しており、

「アメリカ人が英語で思考する」

ように、ろう者の方々は日本手話で思考し、行動しているのですね。

我々が英語をいったん日本語に翻訳して理解するように、彼らは日本語字幕を理解するとき、日本手話という思考回路を経過して理解する、ということになります。

言語が異なれば、文化も違います。

「日本手話」ネイティブであるろう者たちによって作られる文化は「ろう文化」と呼ばれ、例えば日本人の「上座」は座敷の一番奥ですが、ろう者にとっての「上座」は、そのコミュニケーションの特性上から座席の中央になったりします。

また時に、

「ろう者の方々は、ズケズケと失礼な物言いをする」

という評価をされることがあります。これはアメリカ人の表現を、我々がストレート過ぎると感じるのと同様、言語から派生する文化様式の違いなのです。そして、

「ろう者の8割は、ろう者同士で結婚する」

というデータがありますが、これも手話ネイティブのろう者の方々が、独自の言語と文化を持つ人々であると考えれば容易に理解できます。

ろう者にとって、日本語を母語とする健聴者と結婚することは、我々にとって国際結婚をするようなもの、というわけですね。

でも実はこの日本手話、言語として「発見」されたのは、比較的最近の出来事です。ようやく近年になって科学的・学術的な研究が進み、脳科学の見地からも

「日本手話は言語であり、日本手話者(≒ろう者)は手話で思考している」

ことが証明されつつあります。

しかしそれ以前の「日本手話」は、大正期からごく最近まで「猿真似」「手真似」などと呼ばれ、

「ろう者の日本語習得を妨げる悪しきもの」
「音声言語である完成された日本語と異なり、不完全なもの」

という考えのもと、日本語習得を第一と考える国家の教育政策により、ろう学校などの教育機関で厳しく禁じられてきた歴史があります。

そんな中でも、ろう者同士たちは集まれば自然に手話で会話をし、その言語は仲間内・後輩たちに伝承され、今日まで生き残り文化を形成してきました。

ろう者たちやその支援者たちの粘り強いロビイ活動と、前述のように科学的・学術的な研究が進んだことで、近年ようやく虐げられていたこの手話の立場が見直されつつあります。

障害者の権利擁護意識の高まりとも相まって、2011年に制定された改正障害者基本法の中ではついに、我が国の歴史上初めて手話が言語として位置づけられることになったのです。

障害者基本法第3条(地域における共生等)

三 全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること。

出典 http://www8.cao.go.jp

日本には、言語が2つあった。

一つは日本語、そしてもう一つは日本手話である。

ここまでが前提です(長いよ!)

…なのですが、冒頭に述べたように我々日本国民の中に、「手話は言語である」と認識している人はごくごくわずかに過ぎませんし、手話通訳を含む聴覚障害者へのサポートはまだまだ不十分と言わざる得ません。

そこで現在、国政では「手話言語法」、地方自治体では「手話言語条例」を制定し、手話とろう者・聴覚障害者の立場を確固たるものにする動きが広がっています。

国政での動きは正直鈍いものの、地方自治体では鳥取県と神奈川県、区市町村レベルでは10を超える自治体で手話を言語として位置づけ、その権利保全と普及啓発を義務付ける「手話言語条例」が制定されています。

聴覚障害者の当事者たちにとって、この手話言語条例制定の流れは、自分たちの存在意義と実際の生活環境改善がかかった、非常に注目度の高いアジェンダになっているのです。

そしてこの手話言語や障害者対応について、日本でもっとも先進的な条例を制定したのが、何を隠そう兵庫県明石市。

聴覚障がい者支援政策を調査する中で、この分野の第一人者である群馬大教授の金澤教授に先週末お会いしてきたのですが、

「キミ。この問題に取り組むなら、明石に行かなきゃダメだ。いますぐに行ってきたまえ!

「わかりました、来週行ってきます!!(即答)

という流れで明石行きが確定したわけですね。

※上記の勢いは、だいたい実話です

※その場で関係者に電話をしてアポとってました

(写真中央下段が金澤教授)

この明石市の取り組み・条例は非常に示唆に富むものだったのですが、長くなりすぎたので珍しく次回につづく!

手話と聴覚障がい者支援政策にご興味ある方は、金澤教授の本より詳しい物はない(!)と言われておりますので、ぜひご一読をおすすめ致します。ただし、読み通すには覚悟が必要です…。

一部はWebでも読めますので、まずはこちらも勉強になるかもしれません。

日本にあるもう1つの言語――日本手話とろう文化 金澤貴之/ろう教育

まだ東京に着きません…明日からいよいよ本会議です。

それでは、続きはまた明日。

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス