記事提供:カラパイア

今年1月から8月までに、35万人以上の移民がヨーロッパの国境に押し寄せた。これまでで最高の人数で、実際にはもっと多い可能性がある。

毎日のように、ハンガリーで抗議する移民の姿や、地中海を渡り切れずに溺れて亡くなった子供の写真などが報道されている。近年最悪の難民危機といっていいだろう。

今や世界中がこの問題によって翻弄されており、各国が移民受け入れ表明を出すなどしているわけだが、厳しい現状はなかなか一般人に届かない。

海を隔てた遠い日本にいたらなおさらだ。ここでは現在のヨーロッパの危機についての明白な真実を動画を交えながら見ていくことにしよう。

10. 移民なのか?難民なのか?

出典 YouTube

マスコミのほとんどはこれまで、移民についての危機を述べてきたが、国連の意見は異なる。国連は2015年7月時点で、地中海を渡ってきた13万7000人の人たちについての調査結果を発表し、彼らの大多数は難民として十分に分類されると結論づけた。

たちまち、ヨーロッパのメディアの間で、重大かつ感情的な議論が活発化した。BBCのような放送局は、大勢の難民や、彼らと一緒に到着した経済活動をする移民の両方を中立かつ正確に表現しているとして、技術的には正しい“移民”という言葉を使い続けている。

一方で、移民は自発的に来ている人たちのことをいい、国連も彼らを難民とを一緒にするべきではないとしているため、移民と難民は明確に分けるべきと強く主張する人たちもいる。

アル・ジャジーラは、難民という言葉は侮辱の意味があり、国境を越えてやってきた人たちすべてを非人間的に扱っていると主張している。イギリスのチャンネル4やガーディアンも同意見で、ワシントンポストは意見を保留している。

昨今、移民をめぐる言葉は毒のあるものになっているため、こうした議論は重要なことだ。

イギリスのタブロイド紙は、移民のうじゃうじゃした“群れ”がもうすぐ襲撃・侵略してくると報道し、さる著名なコラムニストでさえ、地中海で亡くなった人たちを“ゴキブリ”と呼んだ。彼らがどこから逃げてきたかを考えれば、こんなことを書けるはずがない。

9. 難民のほとんどは世界最悪の場所から逃げてきている

出典 YouTube

もちろん、経済活動のための移民も同じルートでヨーロッパにやってくる。しかし、大多数は世界でもっとも危険な国から逃げてきている。地中海を越えてヨーロッパに入ってくる人たちの3分の1は、シリアの大虐殺から逃れてきている。

次に多いのが、アフガニスタンやエリトリア。前者は腐敗した無法国家、後者はアフリカの北朝鮮として知られる残忍な独裁政権国家だ。

それよりは小規模だが、同じように恐ろしい地域から逃げてきた難民もいる。イラク、ソマリア、ナイジェリアなどの人たち、2003年以降大量虐殺が行われてきたスーダンのダルフール市民も、安全を求めてヨーロッパを目指す。

総計でアフリカからヨーロッパを目指す難民の70%になると考えられている。

一方で、特に危険とは思われていない国からの難民の数もかなり多い。2015年の1~3月の間、コソボ市民からの亡命申請書はどこよりも多かった。アルバニア人、セルビア人の数もかなり多くなっている。

しかし、こうした国からの申請はだいたいが却下されている。ドイツはバルカン半島からやってくる人たちを送り返すことにしている。

8. 甘い見解、足並みのそろわないヨーロッパ諸国

出典 YouTube

2015年8月末までの8ヶ月間で、35万人の難民が地中海を渡ってEUを目指した。これは2014年全体の難民数よりも7万人も多いし、アイスランドの全人口よりも多いが、ヨーロッパ全土の比率から見ればそこまで多くはないといのがEUの見解である。

たしかにEU全体の人口は5億300万人、面積は440万平方キロメートルで、これはインドとペルーを合わせた面積よりも大きい。ここでの35万人を考えると、全人口の0.7%よりも少ないことになり、この数字は少ないように思える。

だがここには送還されたり、亡命を却下されたバルカン半島からの難民の数は入っていないのだ。

ヨーロッパに上陸する難民たちについてのこうした甘い公式発表は、すべての国の現実を反映していない。ハンガリーのように、本当に限界まできている国もあれば、影響がほとんどない国もある。

イギリスは今年、300人未満のシリア難民を受け入れてきたが、全体的には亡命希望者の数は減っているとみている。イギリスは2011年の20万人近くから、7万6000人以上少ない11万7161人だけを今は受け入れている。

スペインは2万1112人の亡命申請を受け、ヨーロッパの一国当たりの割り当て数は一番低い。スロバキアはさらに少なく事実上はゼロだ。

本当の問題は、難民の再定住について、ヨーロッパの方針が定まっていないことだ。ドイツは各国に公平に分担してもらって、ハンガリーやギリシャの負担を減らして欲しいとしているが、EUにこれを強制するルールはない。

結果的に、国境を実質的に封鎖して、これ以上の難民を流入させないようにしている国も出てきている。

7. 受け入れ限界に達しつつある国

出典 YouTube

ここ数年、ハンガリーは13万人近くの亡命希望者に門戸を開いてきた。この数字はそれほど大きくないとはいえ、それほど人口の多くないハンガリーにしてみれば、悪夢のような試練になっている。

バルカン半島に上陸した難民の主な通り道のひとつになっているため、この小さな国は玄関先を通り過ぎる人々の流れを目の当たりにしてきた。

首脳陣はドイツへ向かおうとする難民を駅から締め出すことでこれに対応をした。さらに南のギリシャも、同じように戸惑っている。すでに財政難に苦しんでいるこの小さな国に、何千もの亡命申請を処理する能力はない。

結果的に、レスボス島のような場所に毎日のように新たな難民が2000人も上陸してくるため、人口が9万から11万へと膨れ上がった。何千もの人が一時的にキャンプするせいで、頻繁に衛生面の問題も生じ、政府が秩序を維持する余裕もない。

難民に優しいことを誇る国でさえ、想像以上のトラブルを抱えているかもしれない。ドイツはシリア難民を寛大に受け入れてきたが、ジ・エコノミスト紙はこの国は政治的に限界に達しつつあると主張している。

6. それでもヨーロッパの多くの国民は難民を歓迎している

出典 YouTube

上記のような記事からは、ヨーロッパ各国が団結して難民にノーを突きつけているように思えるが、一部マスコミのあおりもあるとはいえ、現実は違う。

ドイツでは、たくさんのサッカーファンが多くの試合で、難民を歓迎する巨大なのぼりを掲げていた。ヨーロッパサッカーは伝統的に、極端な人種差別主義の温床と考えられてきたので、これは予想外の出来事だった。

反移民傾向のあるオーストリアでさえ、2万人がウィーンをデモして、迫害を逃れてきた人たちとの団結力を見せた。

ミュンヘンの臨時難民キャンプでは、食料の寄付を呼び掛けが大きくなりすぎた結果、キャンプに物資があふれてしまったため、ドイツ警察が地元住民の協力を断らざるを得なくなってしまった。

世論調査では、ドイツ国民の60%が自分の国はもっと多くの難民支援ができると信じていることが繰り返し示されているという。

もっとも難民の影響が大きい、ハンガリーの最前線の町セゲドですら、通りにあふれる難民へ食料や衣類、医療品の寄付が多く見られた。ギリシャでも同じような状況が報告されている。

だからといって、これがすべてが順調にいっていることを示しているわけではない。ドイツ東部では、ネオナチによって難民保護施設が放火された。スウェーデンでは、難民のコニュニティの中で恐怖が蔓延している。

しかし、普通のヨーロッパ人は徒党を組んで難民に対抗することはまずない。

5. イギリスはとりわけ葛藤している

出典 YouTube

同じ英語圏の国として、多くのアメリカ人は難民危機について興味をもっていて、イギリスにニュースを求めている。しかし、メディアが煽って政治的な争いにもつれこんでいることもあって、イギリスはとりわけ葛藤している。

最近の世論調査では、難民危機にどう対応したいのか、イギリスは迷っているように見える。ITVによる調査では、イギリス国民の約半分が難民の入国に反対しているとしている。

特に、シリアの内戦を逃れてきた人たちについては、47%の回答者がイギリスに迎え入れるべきではないとしていて、さらに42%が国境の封鎖を望んでいるという。

しかし、別の世論調査ではこれとは逆の結果が出ていて、イギリスの若者10人中8人は、難民に寛容なイギリスの歴史を誇りに思っているという。

地域によって、かなり意見が割れている。スコットランド自治政府首相のニコラ・スタージェンは、難民支援を確約する一方で、300人以上のシリア難民の受け入れを拒絶したとして、キャメロン首相を公に非難した。

首相率いる保守党の議員たちも、キャメロン首相の対応を恥としているが、マスコミの意見は割れている。タブロイド紙も高級紙と論争し、毒のある言葉の応酬が普通に繰り広げられている。

ヨーロッパの中で一番難民の流入の少ないイギリスで、こうした動きがあるのは興味深い。

4. 難民危機はまだEUを分裂させる可能性がある

出典 YouTube

ヨーロッパが直面しているさまざまな問題の動きを左右する触媒として、難民危機がどのように作用しているかということが、もっとも注目すべき面だ。ヨーロッパ全体が沈みかねない金融破綻を回避できても、EUはいまだ分裂の危険の淵にある。

この最前線にあるのは、“自由”という潮流の原理だ。人の移動の国境管理を廃止するシェンゲン協定の一部として、ヨーロッパ26の加盟国は互いの出入国管理を廃止した。その結果、どの国の人間も好きな場所に住み、働くことができるオープンなEUが誕生した。

これはヨーロッパの基盤のひとつとみなされている。アンゲラ・メルケル首相は、ドイツはシェンゲン協定のないEUは崩壊するとみなしていることを明確にしたが、今、この協定を廃止したいと思っている国もある。

デンマークは、国境管理を復活させたいと煽っている多くの国のひとつだし、イギリスはアイルランドと共にシェンゲン協定に加盟していない唯一の二国だが、同じ意見だ。

別の方面からも、ドイツはEUとの間に問題を抱えていて、ほかの国が難民をあまり受け入れないことにベルリンは苛立ちをつのらせている。

また、2016年4月上旬にイギリスで行われる、EU残留を問う国民投票が近づいていることも問題だ。

難民危機がイギリスを離脱に追いやる可能性を懸念する人もいる。もしそんなことになれば、すでにフィンランドが主張しているように、イギリスがいなければ、EUは存在しないも同然という事態になりかねない。

3. ヨーロッパ以外の国はもっと多くの難民を受け入れてきた

出典 YouTube

確かにヨーロッパの難民危機も大変だが、ほかの地域とは比べものにならない。

中東では、これまで多くの国々が急速な人口の変化を体験してきた。すでにトルコだけでも、ISから逃れるために必死で国境を越えたシリア難民のせいで、人口が160万人も膨れ上がった。

UNHCR(国連難民高等弁無官事務所)は、年末までには、トルコに住む難民は200万人にのぼる想定している。

しかし、これはトルコの総人口の2.6%にすぎず、比較的少ないほうだ。ヨルダンではもっと多い。この小さな国は62万人の難民を受け入れているが、これは自国の人口640万人の10%近くに当たる。

さらに悪いことに、ヨルダンは今、水不足の危機にある。レバノンでは、2015年3月現在で、5人にひとりがシリア難民だが、現在はすでに4人にひとりになっている可能性がある。こうした事態に比べると、ヨーロッパはまだ難民の数は比較的少ないほうだ。

アメリカもこの危機に絡んでいる。最大の難民受け入れ国のひとつとして、アメリカは毎年平均7万人の難民を受け入れている。

残念なことに、911以降、シリア難民がその恩恵にあずかることは非常にむずかしくなっている。これまでシリア難民はたった1000人しかアメリカに受け入れられていない。だが、ホワイトハウスは、2016年までにはその数を8000人に増やす計画だ。

2. 経済効果は予想以上に好調

出典 YouTube

ヨーロッパでの難民論争は、人々の流入が自国の経済に与える影響について焦点が当てられてきた。

移民や難民が気前のいい生活保護を過剰に期待して、ヨーロッパに引き寄せられていると多くは思っている。特にイギリスではこの考えが顕著だが、全体像からはほど遠い。

イギリスの福祉状況は、かなり悲惨だ。2012年の欧州委員会の報告では、イギリスはポーランド、ルーマニア、スロヴァキア、エストニア、マルタと並んで、比較的福祉に余裕がない位置づけだ。

ベルギー、デンマーク、ポルトガル、スペイン、フィンランド、オランダがもっとも高い。3ヶ月以上居住し、就労見込みを証明することが要求されるイギリスで、移民が失業手当を請求するのは難しい。

それでも、仕事がなくても、いちおう6ヶ月までの手当ては請求できる。

イギリスでは、亡命申請者は週たったの36.95ポンド(約6800円)しか受け取ることができない。これはフランスよりも低い。難民天国のはずの、ドイツやスウェーデンでさえも少ない。

さらに労働制限があり、イギリスやスウェーデンでは、難民の就労には厳しいルールがある。つまり彼らの影響が求人市場を狭めているということなのだ。

ザ・エコノミスト紙は、これを実際問題とし、各国に難民受け入れと就労の場を与えるよう要請してきた。移民が最終的に国庫に貢献してくれて、事業を展開し、自国民よりも犯罪率が低いことが研究で示されていると指摘する。

さらに、移民が全体的な賃金を引き上げていることも示されているという。ヨーロッパの急速な高齢化が進む中、多くの国家が必ず通らなくてはならない道なのかもしれない。

1. 本当に苦しんでいるのは難民自身であるということを忘れてはならない

出典 YouTube

ヨーロッパの難民危機について報道は、EUへの影響ばかりに集中する傾向があり、本当の犠牲者は誰なのかということを忘れがちになる。アンチ移民のヨーロッパ人たちの心配ももっともだが、本当に苦しんでいるのは難民自身なのだ。

毎日、迫害から逃れようとして、子どもたちが地中海で溺れ死んでいる。2015年9月2日、トルコのビーチで、アイラン・クルディという男の子が打ち上げられ、うつ伏せの状態で死んでいるのが見つかった。

男の子とその家族は、シリア北部のISの残虐行為から逃れて、カナダへ行こうとしていた。男の子は3歳で、5歳の兄も一緒に亡くなった。

オーストリアでは、トラックで運ばれていた71人の難民が、夏の暑さの中、道路脇に置き去りにされ、中にいた全員が窒息死した。死者の中には2歳の女の子ひとりと8歳から10歳の男の子3人がいた。

発見されたときには、遺体の腐敗が激しく、正確な死亡者数もわからないくらいだったという。

150人がリビアの海岸で溺死したとか、今年の1月から4月の間に、必死でヨーロッパにたどり着こうとして、名前もわからない人たち2000人近くが死んだとか、毎日、こんな話が次から次へと出てくる。

現在のヨーロッパの難民危機への答えは簡単には見つからないかもしれないが、このような想像を絶する苦しみを味わっている人たちを無視するなど、決して許されることではない。

過激派組織「イスラム国(IS)」の台頭などの影響もあり、シリアやイラクで数百万人規模の人びとが国外避難を余儀なくされており世界の難民数は急増している。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、世界全体の難民数は2013年時点で5100万人(推定)にのぼり、第二次世界大戦後で最も多くなっている。

各国が新たな受け入れを表明する中、難民認定が極めて少ない日本の現状に海外メディアや人権団体から疑問が投げかけられているのは周知のとおりだ。ロイター通信は、「欧州は難民に扉を開いたが、日本は扉をきつく締めた」と題する記事を配信した。

昨年の日本の難民認定数が5000人の申請者に対しわずか11人だったことが影響したようだ。

日本は多額の資金援助をしているものの、「難民に冷たい国」との印象が強まっている。国連の代表者は日本に対し、「状況はひっ迫している。資金援助のみならず人道支援を求めている」 との公式見解を表明した。

出典:listverse
出典:guardian

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス