全国の公立小中学校の通常学級に在籍する児童生徒のうち、人とコミュニケーションがうまく取れないなどの発達障害の可能性のある小中学生が6.5%に上ることが5日、文部科学省の調査で分かった。推計で約60万人に上り、40人学級で1クラスにつき2、3人の割合になる。しかし4割弱の児童生徒は特別な支援を受けておらず、専門家は「支援策を話し合う校内委員会などが十分に機能していない」と指摘している。

出典 http://www.nikkei.com

これは、2012年12月日本経済新聞の記事。
この結果は、2002年の調査よりも割合が増加しており、確実に年々発達障害の可能性のある子どもたちが増えている。

レッテルハリはやめて

筆者は、20年間公立保育士として現場で子どもたちと関わってきた。
その20年においても、子どもたちのコミュニケーション力の低下を感じる場面は増えているように思う。

長年保育士をしていると、子ども達の生活の様子や遊びの様子を身近でサポートする中で『この子は困っているな』『もしかしたら、何かの特性を持っているのかもしれない』と思う子に気づけるようにもなってくる。

早期発見、早期療育
発達障害の子どもたちにとって、とても大切なことだ。

現場保育士は、子どもたちの毎日の様子を記録し、子どもたちの健やかな育ちを願いながら日々サポートし、保育している。
子どもたちのツマヅキを見つけたら、どう支援していくかを考え、忙しい中でも一人一人に合った保育の工夫をしているのだ。

しかし、この状況の中、「保護者の理解を得られない」ということは保育士にとって一番つらい事。
特に、グレーゾーンと言われる子どもたちにおいて、私たち保育士は保護者との関わりをどうするかを慎重に検討する。

支援は、『できない扱い』『特別扱い』しているのではなく、特別扱いしないために『その子が自分でできるための必要なベース作り』をして、自分の力で達成できることを目指すこと、だと筆者は思っている。

『なんでできないの?』
『どうしてみんなと一緒にしないの?』

責められて、育った子どもは自己否定が強くなっていく。
『自分はダメな人間だ』
『どうせ、何をやっても無理なんだ』

そんな風に自分を責めなくてもいいように、『こうすればできる』『これは得意』
自分の特性を理解して、周りに認めてもらい、自分でできたという達成感を味わってさえいれば、自己肯定感は健常発達の子ども達同様高まっていく。

発達障害児だからできない・・・
発達障害児だから難しい・・・

なんて決めつけるのはおかしな話だ。

自分のチカラで生きていける子に育てよう

発達障害児の母は思う。
『この子の将来が心配だ』
『社会の中でちゃんと生活していけるのか』

だが、この悩みは発達障害児の母だけが感じるものなのか?

今の社会情勢は、何が起こるかわからない。。。
これからの社会を生き抜くために大切なのは、『自分のチカラで生きていける』と思える心を育てることだ!と思っている。

大人たちが大切にすべきは、健常発達児、発達障害児どちらにおいても、『自己肯定感』『自己効力感』を高める関わりであること。
それは、保育士、保護者を含め地域、学校などすべての大人との関わりの中で育っていくのだ。


ここで発達障害についての定義について紹介しておく。
保育用語辞典にある『発達障害』の定義は発達障害とは、何らかの脳障害に起因し、一般的には、認知、言語、運動、あるいは社会性など、環境・社会との相互作用の中で浮かび上がってくる障害である。

わかりやすく言うならば・・・
発達障害は脳機能の発達が関係している生まれつきの障害のこと。

コミュニケーションをとりながら対人関係を作ることが苦手な面がある。
そのために周りの人から『自分勝手な人』『困った人』『関わりたくない人』と思われてしまうことも少なくない。

ここに、発達障害が『理解されにくい障害である』と言われる所以があるのだろう。
本人たちは一生懸命頑張っているのに・・・
周りの人は繰り返し教えているのに・・・
上手くいかないことが多く切なさを感じてしまう。

筆者が保育士になりたての20年前にも発達障害と思われる子どもは在籍していた。

その当時はまだ発達障害の認識が薄かったとはいえ、それを考慮したとしても確実に発達障害児は増えていることは、先述した文部科学省の調査からも明らかだ。

だからこそ発達障害が特別のものとして考えられるのではなく、一つの個性として周りの理解が深まり、同じ社会で生きているという意識が大切になってくるのだ。

誰だって得意不得意があり・・・性格だって一人一人違う。

それに、発達障害ではない子どもとの関わりにおいても根本的なことろで、大切にしなければならないポイントは同じである。
保育の現場では子どもの目に見えている行動を『氷山の一角』と捉え、本当に大切なことは水面下にある本質の感情を受け止めることだと勉強する。

この考え方は、筆者が学んでいるアンガーマネジメントの『怒りは二次感情』の部分によく似ている。
これらを含め、発達障害の子どもたちを理解するために、アンガーマネジメントの考え方やスキルは大変有効だ。

発達検査をすることの意味は『診断名をつけること』が目的ではなく『その子が社会で生きていく為のノウハウを早いうちから身に付けることができる』ことだと考えている。

一人一人の特性を理解し、子ども本人と一緒に「自分の取扱説明書」と作っていくことが大切だ。
目の前に大きな壁があったとしてもそこで立ち止まり、パニックになることなく別の方法を選んで前に進むことができる。
そのために、小さいうちから保育士、親、子どもが協力して『取説』のページを一緒に増やしていくことが重要なのだ。

自分の経験から作り上げる『取説』だからこそ、その子が自分で使いこなせるようになっていく。
一つの問題に対して色々なバージョンの対応策があればあるほど、自分で乗り越えられるという自信につながっていくのではないだろうか。

『取説』を作ることは、子どもたちの手を無理やり引っ張るのではなく、背中をそっと押してあげることができる、必要な時に必要なサポートをしてあげられる素敵な大人の第一歩となる。



子どもは親の感情表現を模倣する

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会が推奨している、『アンガーマネジメントキッズ』のプログラムをご存じだろうか?

筆者もこのプログラムを、協会認定アンガーマネジメントマスタートレーナーとして定期的に養成講座を開催している。

ここ数年、いじめや自殺、殺傷事件を最たるものとして、子どもの感情コントロールの問題が顕在化するのは思春期以降がほとんどだが、その芽はもっと小さい頃から子どもたちの心の中に根付いている。

怒りの感情を不適切な形で表出してしまうと、周囲との関係が簡単に壊れてしまうことを知っておくのは大切な事だ。

このプログラムは、アンガーマネジメントの理論とテクニックを小さな子どもにもわかりやすく、すぐ実践できる形で『怒りを反射的にぶつけない・自分の要求や感情を適切に表現する方法を身に付ける』ことを目的として立ち上げられた。

思春期に入ると子どもの感情の起伏は激しくなり、コントロールが難しくなっていく。

しかし、思春期前に自分の感情と向き合うことができ、怒りのツボについて気づくことができていれば自分の感情を伝えることができるのだ。

保育園児の怒り方を見ていると、送迎時の保護者の怒り方と似ていることがある。

『怒り方』というのは、親や周りの人から自然と模倣して身に付いていくものなのだ。

日本では感情理解教育が遅れているため、『怒り方』を学ぶことはなかった。
しかし、これからは違う。

アンガーマネジメントにより、怒りの反射を防ぐテクニックを知り、新しい習慣を抵抗なく受け入れられる幼少期からセルフコントロールを積み重ねていくことで、コミュニケーションスキルの高い子どもたちの先にある未来は無限に広がっていくのだ。

自分なりの感情表現方法を見つけること

発達障害の子どもは、上手く自分の気持ちを伝えられないことがある。
特に、怒り感情は扱いにくい。
これは、すべての人に言えることだ。

アンガーマネジメントのゴールは『怒らない子どもになる』ことではない。

『怒ることは悪いことではない』

怒り感情を封印してして、自分を傷つけてしまわないためにも、自分の感情を適切に吐き出し、表現し、対処していくことによって、将来的につらい状況に直面しても上手に乗り越えられるチカラを身に付けさせておきたい。

目指すのは『自分なりの表現方法を見つけること』

感情に振り回されるのではなく、自分の感情を自分で扱えるようになる。
初めの一歩として、自分の気持ちに気づき、それを伝えることで『怒る必要がない』経験を積み重ねてほしい。

大きな一歩は望めないかもしれないが、その子なりの一歩一歩を積み重ねることで、自尊心を育み、自分自身はもちろん、友達、家族を理解し大切にしたいという気持ちが育っていくのではないだろうか。

このプログラムは10のワークから構成され、遊びを通して子どもたちに感情理解教育を進めていく。
遊びの中で、たくさんの対処法をストックしておくことで、実際に怒り場面に直面したとき、引き出しの中からそれらのストックしたテクニックや知識を引っ張り出すのだ。

上手く使えて表現できたり、問題解決ができた時に『うまくできた』の経験値が上がる。

沢山のストックを持っておくことで、『これがダメでもあっちがある』『次はこれを試してみよう』と対応できる。

子どもに関わる仕事をしているなら、ぜひ、取り入れてもらいたいプログラムだ。


この記事を書いたユーザー

野村恵里 このユーザーの他の記事を見る

平成26年3月、岡山市公立保育園を退職。
「大人も子どもも、もっと自分を好きになろう」をテーマに、同4月、colorful communicationsとして起業。公立保育園勤務20年の経験、2児の母、発達障害児の母という子どもにとって身近な立場から乳幼児学童期教育現場でのアンガーマネジメント講演会活動や色彩心理カラーカウンセリング講演会などを実施。
また、講演会講師として保・幼・小・公民館・教育委員会・その他子育て団体からの依頼をいただき、親しみやすい講師としてコミュニ ケーション研修を開催中。

得意ジャンル
  • 育児

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