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財務省が2017年4月の消費税10%の引き上げに合わせて導入を検討している、酒類を除く飲食料品の2%還付案。マイナンバーカードを使用しなければならないため賛否も両論なのですが…。

ジャーナリストの内田誠さんが自身のメルマガ『uttiiの電子版ウォッチ』で新聞各紙がどう伝えたかを比較・分析しています。

消費税10%引き上げ時の還付制度案、各紙はどう伝えたのか

今朝の各紙が、共通して重視しているのは…。

「消費税10%時の還付」についてです。昨日の《読売》記事の後追いを《朝日》と《毎日》が1面トップにしました。《読売》も1面左肩に続報的な位置づけの記事を置き、さらに関連記事を2つ置いている。

その他、「辺野古協議決裂」、「司法試験問題漏洩」と「安倍無投票再選」関連の扱いが大きい。

◆1面トップの見出し1行目は…

《朝日》…「飲食料品 2%分『還付』」
《読売》…「司法試験 問題漏洩」
《毎日》…「マイナンバー使い還付」
《東京》…「「辺野古ありき」で決裂」

◆解説面は…

《朝日》…「増税分還付 公明乗る」
《読売》…「東芝 多難の再出発」
《毎日》…「制度設計 場当たり」「軽減税率 財務省が代替案」
《東京》…「経済格差 進む二極化」「安倍政権2年8ヶ月」

ということで、今日は、この「消費税増税と還付」の問題を共通テーマとして扱います。各紙、かなり扱い方に幅があり、記者が走り回っている様子が見えて興味深い展開です。

したがって、【基本的な報道内容】も概括的にして、出来るだけ早く各紙の報道内容に入っていきたいと思います。《東京》はこの記事を落としているので、同紙の個性的な解説記事「核心」について触れます。

基本的な報道内容

消費税を10%に引き上げるのに応じ、負担緩和策として、「酒類を除く飲食料品」を購入した消費者に税率2%相当の金額を後から給付する仕組みを財務省が検討している。

所得に関係なく、一律に還付するもので、買い物時にその金額の情報をマイナンバーカードに保存する方式。

しかし、これでは、小売店への情報端末の配備などが課題として残り、社会的な混乱は避けられないとの懸念がある。また、給付に上限額を設ける考えで、実質、半分程度しか戻らないことになりそうだ。

バレバレの「マイナンバー普及策」なのに…

【朝日】の1面トップ、見出しは「飲食料品2%分『還付』」「消費税10%時自公了承」。

自民・公明両党は、2017年4月に消費税の税率を10%に引き上げるのに併せ、酒を除く飲食料品の2%分を購入後に消費者に戻す「還付制度」導入で大筋合意した。

制度案は、消費者が購入時にマイナンバーカードを店の機械に通すことなどで還付される金額が記録され続け、一定時期にまとめて登録した金融機関に振り込まれる形。

還付額の上限を設けることで、より多く買った人には事実上の所得制限が掛かる方向で検討。税収減を抑える効果もあるという。

マイナンバーカードについては、個人情報の流出の恐れ、カードを読み込む機械の普及にかかる時間や経費の問題、カード自体の普及が増税時期に間に合わない心配などがある。

公明党の山口代表、井上幹事長、北側副代表が協議、「財務省案はよくできた制度」と理解を示した。

還付制度なので食料品をすべて対象にでき、線引きの必要がないこと。低所得者の負担も軽減できることなどで公明が容認。自民党も大筋で受け入れる考えという。

uttiiの眼

昨日の《読売》の記事と比較してハッキリしているのは、この仕組みに対して《朝日》は非常に好意的だということだ。

課題については、《読売》が厳しい調子で指摘していた「カード読み取り機械の普及」には言及しているものの、《読売》が懸念を示していた「大規模店と零細店の格差拡大」のような論点は出さない。どちらが弱いものの味方なのかと言いたくなった。

《読売》が指摘した、還付金受け取りについての行政の事務負担増大論も、《朝日》の頭の中では「銀行振り込み」で解決済み。どうせマイナンバーで口座も把握されてしまうので問題ないですよと言いたいのか、実にあっさりとした筆致。

もう1つ、公明党が「よくできた制度」と言っているというところは、解説記事の内容紹介を兼ねて以下に。

解説記事「時時刻刻」の見出しは「増税分還付 公明乗る」となっていて、さらに「幹部『立派な軽減税率だ』」「協議暗礁 焦りの末」と続く。当初導入を目指していた「欧州型」の軽減税率が行き詰まった末の財務省案。

《朝日》もさすさがに「マイナンバーカードをかざす必要があるなど、課題は多い」とするのだが、来夏の参院選でどうしても「軽減税率実現」を訴えなければならない公明党は、財務省案を「100点満点の制度設計は無理だ」として受け入れるという。

しかし、《朝日》の記者は頭の中がこんがらがっているのではないか。

「欧州型の軽減税率とは異なり、『還付』という手間がかかる仕組みだが、酒を除く飲食料品はすべて対象になる」というのは記者の言う通りだが、その後にこんな文章が続く。「また、財務省にすれば、還付に上限を設けることで税収減は抑えられる

この表現は一体何だろう。こういう矛盾した文章を書いて平気でいられる神経が私には分からない。要するに、食料品に関しても、2%分の減税は行わないというのが結論ではないか。

さらに最後のパートでは、「『マイナンバー前途』多難」とか、「買い物 カード必須」「購入を記録 懸念も」と付け足し的に課題を並べている。ここに決定的な記述がある。

「マイナンバー法では、来年1月からマイナンバーのカードを受け取るかどうかは、本人の自由だ。内閣府の調査では、カードの取得を『希望する』との回答は全体の24.3%しかいなかった」。

この話、要はマイナンバーを徹底し、カードの所持を含めて国民に強制するためのツールにしようとしている、そういうことではないのか。税金をホンの少し安くする代わりに、個人個人の消費を含む行動記録を政府がその手に握りやすくなる。

消費税増税はもちろん、マイナンバーにも基本的に賛成してしまっている《朝日》では、この点からニュースをすべて逆照射し、アグレッシブな見出しを1面に置くことなど、到底考えられないのだろうなあ。

低所得者対策こそが必要

【読売】は1面左肩に「給付額に一律上限」の見出しで記事を置いている。2面と11面に関連記事。

uttiiの眼

「買い物時に、金額のデータを共通番号制度のマイナンバーカードを通じ、政府が新設するデータセンターに保存。たまった金額を後から支払う」との記述。ちょっと横道にそれるが、「政府が新設するデータセンター」というのは恐ろしい。

そのうち、「国民情報省」なんて名前が付いたりして、悪巧みを始めるのではないかという気がする。ビッグ・ブラザーの具体的イメージ。

ところで《読売》のこの記事は、昨日から引き続き、「上限を設ける」ことに対する批判のトーンで貫かれている。

今日も「こうした仕組みは、消費者の増税負担を和らげるという本来の目的にはほど遠い」と厳しく批判。《朝日》がこの制度に対する「承認」の雰囲気を漂わせているのと対照的だ。

さらに驚くのは2面の記事。「公明 反発広がる」の見出しは、《朝日》が書いた「公明乗る」とは正反対。公明党幹部が「原案はハッキリ言って軽減税率ではなく、単なる給付措置だ。有権者に説明できない」と語ったとされ、幹部の対応も曖昧な印象だ。

大見得切って「軽減税率実現!」などと大騒ぎをしてしまった公明党は、安保法制に加えて、この問題でも大恥をかき、大混乱を来すのかもしれない。

もう1つの関連記事にはさらに驚くような事が書かれている。

「消費増税分給付どうみる」と題された識者のコメントには、今回の原案について「低所得者対策としては無理がある」、「大企業なら容易かもしれないが、零細事業者には負担が大きい」、「高齢者は大変な混乱に陥るだろう」として、

「消費者の負担が増えるような政策はやめてほしい」
というところに至る。「そもそも政府・与党は、10%への増税時に、低所得者対策として軽減税率を導入すると言っていたはずだ」と難じる識者は、主婦連合会参与の山根香織氏だ。

昨日の事実上のスクープに始まる《読売》の展開は、もしかしたら、この山根氏が情報源で、記者は山根氏の考え方を下敷きにして取材したのかもしれない。そんな気がする。

痛税感の緩和ケアだったのか…

【毎日】は1面トップで「マイナンバー使い還付」との見出し。本文の見出しは「消費者 残る痛税感」。

uttiiの眼

《毎日》の1面記事の特徴は、問題の中心を「痛税感」に置いている点。リードの最後に「後日の還付では消費者の負担感を抑える効果は限定的になると見られるなど、問題点も残されている」とある。

まあ、後追いなので、《読売》とは違う書き方をしなければ、というプレッシャーがあったかもしれないが、これは若干横道にそれることになったかもしれない。

この原案が既に安倍総理と菅官房長官に説明され、了承を得たというのは他紙は書いてない内容。

「しかし、普及する見通しが立っていないマイナンバー制度を前提としており、実際に機能するかは不透明だ。マイナンバーカードの取得は任意で、還付が行き渡らない可能性がある」という指摘はその通りだろう。

記事の最後の部分はこの問題についての公明党山口代表の反応で、独自の内容を含む。

首相官邸で記者団に語った内容なのだが、「痛税感を和らげて経済全体の消費マインドを冷やさないことが重要だ」と指摘し、財務省案を精査する必要があるとの認識を示したと。

さらに「政府には心して説明にあたって頂きたい」と語り、財務省が主導して流れを作ろうとしている状況に苦言を呈したと。

この最後の一文が重要。記事には現れない様々な取材の成果を込めた「評価」が書かれているからだ。公明党の立ち位置についての《毎日》の捉え方は、《朝日》と《読売》の、ちょうど真ん中くらいかと思う。

3面の解説記事「クローズアップ2015」は、見出しが「制度設計 場当たり」。マイナンバーを使う前提について、批判的に書かれている。

読み取り機械の設置が17年4月には間に合いそうにないこと、普及のバラつきは不公平を生むこと、プライバシー保護に問題があるカードを持ち歩くという危険、また税収減を最小限にしたい財務省が「上限」を低く抑えようとするだろうということなど。

《毎日》は最も重要な点に気付いたようだ。「財務省には、消費税の負担軽減制度の導入を機にマイナンバーの普及を加速させたいとの思惑があるとみられる」とハッキリ書いている。

公明党については「困惑が広がっている」との評価。後日還付という方法に「有権者の理解を得られるのか」との懸念、さらにマイナンバー前提の仕組みについても「SF映画のような未来の話で非現実的だ」という幹部の声を紹介している。

「このままでは公明党の理解は得られないだろう」という自民党税調幹部の発言も。公明党、全然この仕組みに乗ったなんていう状況じゃないでしょう。ねえ《朝日》さん!

反・日本国憲法的な内閣

【東京】の今朝の解説面は、同紙が時折掲載するもので、経済関係を中心としたデータ分析。今朝は「経済格差 進む二極化」と題して、安倍政権の2年と8ヶ月で日本がどう変わったかを統計的に示す記事になっている。

uttiiの眼

まずは「国の姿」に関して。政権発足前に24・1%だった高齢化率は、26%に増え、4分の1を超えた

「予算」は90兆円台だった12年度に対し、今年の当初予算は96兆超え。

「経済」。株価は1万円丁度くらいだったのが、1万7,800円程度。為替は激変があり、84円台だったのが119円台に大幅な円安。

民間平均給与額は27万円5,250円からホンの少し増えて27万7,152円になったが、消費者物価指数は2010年を100としたときに99・2から103・7と上がった。

「雇用」では完全失業率は4.1%から3.3%に下がったものの非正規雇用率が35.5%から37.1%に。

最もビビッドにこの間の変化を物語る「暮らし」に関わる数字は驚くようなものばかり。貯蓄ゼロ世帯が26・0%から30・4%に増え、生活保護受給世帯数は156万7,797世帯から162万5,941世帯へと急増。

70歳から74歳の医療費自己負担割合は1割から2割に上がり、65歳以上の介護保険料は月額平均で4,160円から5,514円へと上昇した。

アベノミクスは一時株価の上昇をもたらしたが、「大企業優先のため副作用も目立つ」とする。円安で中小企業は資材の輸入コストが膨らんだ。

物価の上昇に賃上げが追いつかず、消費税増税の影響もあり、食料品の値上がりで消費者の負担は重くなっている。個人消費の冷え込みでGDPは今年の4~6月期で年率換算マイナス1.6%

安保法案に対する国民の怒りが沸点に達している今、この記事を読んで改めて考える。

昨年7月の閣議決定に始まる一連の動きは、安倍政権の反・日本国憲法的な性格を如実に示すものだが、生活保護法改悪に象徴されるように、その格差拡大政策も、日本国憲法25条に違反する。

NHK支配の強化などを通じた言論抑圧政策を含め、憲法的秩序全体に対する攻撃が、この内閣によって行われ続けてきたということができるだろう。

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