記事提供:ガジェット通信

100年ぶりに城が動く―。漫画や映画の宣伝文句のようだが、実話である。現存12天守のうちの1つ、弘前城が100年ぶりに動くのだ。動く城・弘前城は青森県弘前市、弘前駅からバスで15分ほどのところにある弘前公園内にそびえ立っている。

弘前公園は日本一ともいわれる桜の名所で、ゴールデンウィークごろに行われる桜まつりには200万人ほどの来場者が訪れる観光名所だ。

その弘前公園のシンボルともいえる弘前城が動くというのはどういうことなのだろうか?実際に弘前市へ行って取材してきた。

まず、弘前城とは一体どんな城なのか。弘前城は、弘前藩の初代藩主・津軽為信によって築城が計画され、二代藩主・信枚によって1611年に完成。当初は高岡城と呼ばれていたが、後に弘前城と改称し今では国の重要文化財、国の史跡にも指定されている。

立派な石垣が築かれ、城の周りには大きな濠が、その周囲にはたくさんの桜が植えられている。春には濠が桜の花びらで埋め尽くされ、まるで桜のじゅうたんのような花筏(はないかだ)が見られるなど、見どころの多い城だ。

歴史があり、観光名所でもある弘前城だが、なぜ動く必要があるのか。その答えは天守を守る石垣にあった。

弘前城の石垣は築城時から現存する部分もあるほか、江戸時代から増築した部分や、明治から大正時代にかけて約100年前に修理した部分といったように、いくつもの時代を経て現在の姿になっている。

だが、この石垣部分が1983年の調査によって、崩壊の危険性をはらんでいることが発覚した。天守を巻き込んだ崩壊の恐れもあるため、石垣の修理を行うことが决定。

しかし、石垣は天守の真下にも築かれているため、天守が現在の位置にあると修理ができない。

そこで、“曳屋(ひきや)”という、建造物を動かす伝統技術を用いて弘前城を動かすということになったのだ。曳屋は、古くはピラミッドなどの建築にも使われたと言われている技術で、建造物を解体することなく別の場所に移動させる建築工法だ。

曳屋が現存天守に用いられたのは、江戸時代から現在に至るまでに100年前と今回の2度のみ。総重量400トンの天守を動かすという、この機会を逃すと二度と目にすることがないであろう大事業なのだ。

それでは、曳屋とは一体どういう作業なのだろうか。工事担当者に話を伺ったところによると、まずは城を地面から切り離し、浮かせる。そしてレールに乗せて、2度の回転を繰り返しながら70メートルも移動させるという。

最初の工程である天守の切り離しは、8月16日に行われた。この日に行われた安全祈願祭である地切り式には県内外から2000人の来場者が訪れ、世紀の大事業の幕開けを見守った。

切り離された天守はジャッキアップされて宙に浮いた状態になっており、隙間にさらなるレールを組み込んで移動させる準備をしている。

城は、柱の四方を鋼材で挟んでレールに乗せることで浮いているため、城内を見ていると建築中の建物というか、工場現場というか、とにかく城とは程遠い存在のように思える。

現在はこのような建築技術を駆使して進められるが、100年前の曳屋は手作業が中心で、丸太などを使って移動させたと推測されている。気の遠くなる大工事だ。

石垣から切り離した後は、2メートルほど浮いた高さをレールで移動する。少しでも傾きが生じると、天守がスライドしてしまうためこの作業は慎重に行われる。

そして、20メートルほど移動したところで城を約30度回転させる。この回転は、本丸にある貴重な桜や松といった植物を傷つけないために行うもの。

さらに30メートルほど進んだ地点でもう1度回転させるのだが、2度目の回転は元の天守と同じ角度で移動を完了させるためだ。

こうして移動が完了した際には、弘前城の背後に岩木山を望む形となり、期間限定だが今までにない弘前城の姿を鑑賞できる。

曳屋は今年の10月末を目処に完了予定。石垣修復工事は平成26年度からの10年間を見込んでおり、平成33年に再び天守の曳屋を行う計画となっている。

また、弘前城の曳屋をきっかけに、城だけでなく市民や街全体を動かしていく『HIROSAKI MOVING PROJECT』も始動。

今年は、9月から10月にかけて小学生を対象に曳屋工事見学会を開催、シルバーウィークには、曳屋ウィークと題して曳屋体験会が現地で行われるほか、9月20日、21日には東京の新宿ステーションスクエアにて“バーチャル曳屋イベント”が開催される。

今後、二度と見られないかもしれない大工事なので、弘前まで足を運んで観て頂いても損はないだろう。

今は石垣の真上だが、今後は動かして地面から浮いた状態がしばらく続くので、かなり貴重な光景になることは間違いない。

HIROSAKI MOVING PROJECT

ガジェット通信特集ページ:城が70メートル移動する!?弘前城本丸石垣修理事業応援大特集

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