犬を飼い始める事はとても簡単です。もしも仔犬を家に迎えたら、きっとあなたの心は豊かになり、あなたにも、そして家族にも幸せな生活が訪れることでしょう。

しかし残念ながらその幸福は、永遠に続くわけではありません。いつかやってくるのが愛犬と病魔との闘い。それは命を懸けた壮絶なものかもしれません。勇敢に病に立ち向かう愛犬を前に、あなたは一体、何がしてあげられるのでしょう?

私たちの周りには、どれくらいの犬が暮らしているのか?

出典 http://www.gettyimages.co.jp

朝早いうち、或いは夕方、私たちは沢山の散歩中の犬とすれ違います。いったいどれだけの犬が私たちの身の回りに暮らしているのでしょうか。

一般社団法人 ジャパン ケンネル クラブによると、2014年度の犬の新規登録数はなんと306,438頭にもなるそうです。

また東京都福祉保健局の資料によれば、平成25年度の犬の登録数は6,737,992頭。総務省発表による日本の世帯数5,595万2,365世帯から計算すると、実に約8.3世帯につき1頭の犬が飼われている計算になります。

素晴らしい犬との暮らし

出典 http://www.gettyimages.co.jp

愛犬と過ごす毎日。それはとても素晴らしいものです。
世話の焼ける仔犬の頃、運動量の増える成犬、落ち着きを見せ始めるシニア犬。
その時々で、飼い主とその家族の心に、違う色の暖かい風が吹くことでしょう。

今や、8.3世帯に1世帯が、そんな幸せな日々を手に入れているのです。

しかし、いつか訪れる悲しい別れ。その直前には苦しい闘病が

出典 http://www.gettyimages.co.jp

しかし、残念ながら犬の寿命は人間ほどに長くはありません。
犬の平均寿命は近年飛躍的に伸びました。諸説はあるものの、いまや平均14歳にも達しています。しかし人間と比べれば遥かに短い一生です。この短い時間を犬たちは全力で駆け抜けていくのです。

犬は人間と比べれば、一般的に抵抗力も回復力も高いので、動物病院のお世話になったとしても、大概が原因不明の下痢や嘔吐、食欲不振などが理由。対処的な薬剤の投与だけで、自然に回復していきます。
しかし、14年という一生の最後には、飼い主と愛犬のつらい別れが待ち受けており、その別れの手前には、終末期における愛犬と病魔の戦いがあります。

犬は一生の最期の時期、病魔との闘いに、どれくらいの期間を費やすものなのでしょうか? 大変に興味深いテーマなのですが、そのようなデータはどこを探しても見つかりそうにありません。

臨床の現場にいる獣医師に、体験的な側面から話を聞いてみることにしました。

ラクーンアニマルクリニック 木佐貫敬 院長

出典筆者撮影

『いわゆる終末医療という観点からいうと、犬の最期の闘病は、大体2週間から1か月の間だと思います。まずは1週間取り組んでみて、快方に向かうかどうかを見極めながら、更に1週間と伸ばしていく。そして1か月と言うのは犬の体力からも、飼い主さんの疲労度合からしても、限界の時間です。終末期の看護は大変ですから。

もっと広い意味で、我々獣医師がずっと継続して看ている犬が、慢性疾患が次第に悪化して、治療の甲斐なく亡くなってしまう場合も最期の闘病なのだと考えると、大体1年くらいは闘っているんじゃないでしょうか。病気の種類によっては2年とか。
その反面で、急性疾患の場合は勝負が早いですね。3日程度か、早ければその日のうちというケースもあります。

ただ、事は慢性と急性だけで区切れるものではありません。慢性的な疾患であっても、末期にならないと獣医を訪れない飼い主さんも多いですしね。
そもそも闘病というのが、獣医が診察した時点から始まるのか、飼い主さんが愛犬に異常を感じた段階から始まるのかの定義も曖昧です。

ありきたりな回答になってしまいますが、犬が最期の闘病にどれくらいの時間を使うかは、一概に言えないというのが正直な感想です』

木佐貫敬

麻布大学獣医学部獣医学科卒業
Murdoch Uni Western Australia School of Vet Sceience卒業
Companion Animal Surgery (Singapore) 勤務

在星中は欧州及び豪州の獣医師と交流を深め、約4年の勤務後渡米。フロリダ州マイアミ South Kendall Animal Hospital 勤務 各分野の専門医たちから暖かいサポートや指導を受け多くを学びました。また爬虫類を含むエキゾチック動物診療も幅広く経験。

10年以上にわたる海外生活の中で様々な事例を経験し、現在でも専門医たちとのネットワークを通じて困難なケースについて個別にアドバイスをうけ、日々の診療に反映しております。また、常に国内外の学会や文献をリサーチし、幅広い情報を得るべく努力しております。

日本及び米国フロリダ州・ハワイ州獣医師免許
日本獣医師会・米国獣医師会会員

ラクーンアニマルクリニック ホームページ

出典 https://sites.google.com

それでは愛犬の闘病とは

出典 http://www.gettyimages.co.jp

当然ながら、犬は口をきくことができません。飼い主は、獣医師が提案した治療法の中なら、自分の愛犬に良かれと思われる方法を1つだけ選んで、その成果に掛けることになります。

”愛犬の命を預かる”という、犬を飼った瞬間から負っている責務の重みを、このときほど飼い主が実感することはないでしょう。
『自分の選択が誤っていれば、愛犬の命を奪うかもしれない』
その重圧が飼い主の心に重くのし掛かります。

その事実を実感させられるのが、”愛犬闘病ブログ”です。
数あるブログの中には、この”愛犬闘病ブログ”というカテゴリーが存在します。言うまでもなく、自分の愛犬が闘病をするさまを綴ったものです。
8.3世帯に1世帯が犬を飼うということは、8.3世帯に1世帯がいつかは、愛犬の闘病に立ち会うことを意味します。1つのカテゴリーが生まれるのも当然と言えます。

その”愛犬闘病ブログ”の中では、同じ不安、同じ悩みを抱えた飼い主たちが、本心で語り合ってます。以下に2つその例をご紹介します。あるブログのコメント欄に投稿された書き込みです。

愛犬が思いもよらず病気になって、悩み苦しみながら闘病生活を送っていくって、まさに血の涙を流すって表現なんですよね。

私は主人を闘病の末看取っています。同じように苦悩しながらの闘病生活でした。
しかし、あの時は透明の涙しか流してはいなかった気がするんです。

それはどちらが大変だったとか辛かったって事ではなく。辛く悲しいのはどちらも同じなのだけれど。ラフ(投稿者の愛犬の名)の闘病に関しては、常に血の涙を流しながら考えて決断して、毎日が過ぎていってるように感じます。
うまく言えませんが…

出典 http://ameblo.jp

注:趣旨を損なわないように、執筆者の許可を得て、若干の訂正が加えてあります。(原文は出典からのリンクでご覧になれます)

忘れることはありません。
闘病にくじけて、あの日、息子に愛犬の世話を頼んで逃げたこと。

現実から逃げたかったんです。
それに、そんな気分の時に一緒にいても犬にはばれるので、こちらもふーっと息抜きがしたかたってのもあるかな。

今でも罪悪感があります。
いつもじっとこっちを見ている子がいるのに、家を空けたことに。
犬は感じ取るといいますよね。
でも、あの視線、とっても私には重かったんです。

「いなくてよかったよ。お母さんなら耐えられないと思うよ」
息子からの言葉、私にはものすごく救いだった。

でも、なんであの時に姉と買い物(お肉を買いに)出かけたんだろう。
まだ身体は暖かかった。あと10分早く家に帰れたら良かった。

可愛かったなー
最近は良いことばかり、思い出すようにしています。
そして今でも時々、あの子が寂しそうな目でじっと見ているのを思い出します。

出典 http://ameblo.jp

注:趣旨を損なわないように、執筆者の許可を得て、若干の訂正が加えてあります。(原文は出典からのリンクでご覧になれます)

愛犬闘病ブログはこんなにある

出典 http://www.gettyimages.co.jp

”愛犬闘病ブログ”は、世に中にどれくらいあるのでしょうか?

それを知るうえで参考になるのが、ブログのランキングサイト。数多くのブログが登録されており、数千のカテゴリー分けがされています。人気順にランキングされているので、目的のブログを見つけるためには便利なサイトです。

犬のカテゴリーでの登録数が多いのが、にほんブログ村 の56101サイト。その中から犬の闘病に関連があるものを、多い順に抜き出してみると、犬 闘病生活 344サイト、犬 思い出・ペットロス 218サイト、犬 健康 204サイト、犬 介護 93サイト、犬 闘病記(永眠)45サイト、犬 闘病生活(がん)24サイト、アレルギー犬 19サイト、犬 闘病生活(リンパ腫・肉腫)10サイト、犬 リハビリ 3サイト。
実に1325サイトが、犬の病気(死を含む)と健康について語っていることになります。

ブログを書いていながらも、ランキングサイトに登録をしていない方は、登録者をはるかに上回るはずです。世の中には少なくとも数千、もしかすると1万以上の”愛犬闘病ブログ”が存在しているのではないでしょうか?

以下に、にほんブログ村の人気ランキングの上位5サイトをご紹介します。
飼主さんたちの闘病に対する考え方は様々です。しかしどのサイトからも一様に、皆さんが真剣に愛犬と向き合っている姿が伝わってきます。

おばぁ犬頑張る
パピヨン14才のおばぁ。緑内障により両目失明他、持病と上手に付き合って行くには?

出典 http://blog.goo.ne.jp

そらの雲
リウマチと闘うミニチュアダックス そらの日々 てんかんも発症したけど毎日頑張ってます!!

出典 http://ameblo.jp

ピーチーはおふろが嫌いよ
ミニチュア・ブルテリア、ピーチー(14歳)の闘病記です。突然、てんかん持ちになっちゃったよ。

出典 http://ameblo.jp

smile again
一年間の闘病生活(肺がん)の末14歳7ヶ月の 生涯を閉じた海君との日々を綴っています。

出典 http://ameblo.jp

hime himeな毎日
ひめちんとの大切な大切な日々の日記です。2014年2月から悪性リンパ腫により闘病中です!

出典 http://elmohimeochan.blog.fc2.com

血の涙はなぜ流れるのか?

出典 http://www.gettyimages.co.jp

愛犬の闘病で、なぜ飼い主は血の涙を流すのでしょうか?

楽しかった日々と現実のギャップに慄くから?
愛犬の苦しみを取り除いてあげられない、自分のふがいなさを恥じるから?
もっとやさしくしてあげれば良かったという後悔?
もう目の前に迫ってきている、避けられない別れへの恐れ?

闘病は真剣に向き合えば向き合うほど、様々な思いがない交ぜとなって、飼い主の心に去来します。

ここで、一つだけ言えることがあります。
愛犬は誠実に、何の疑いも持たずに、飼い主のことだけを信じて、果敢に病魔に挑みます。何故ならば、それが犬という生き物の本能だからです。

人間の心は犬ほど強くなく、些細なことで揺れ動きます。
真っ直ぐな犬の心と、今にも折れてしまいそうな飼い主の心。
その両者のきしみが、飼い主に血の涙という言葉を、想起させるのではないでしょうか。

犬とは言葉を交わせない。だから余計に飼い主に切なさがつのる。
飼い主の血の涙とは、飼い主が愛犬にそそぐ、愛情そのもののようにも思えます。

血の涙とは、つらいものなのか?

出典 http://www.gettyimages.co.jp

犬を飼うということは、最期の別れも同時に引き受けることが前提。切り離すことはできません。これから犬を飼おうかと考えている方は、一歩立ち止まって、考えてみるべきだと思います。しかし、怖がる必要は一つもありません。

今回ご紹介したブログを読んでみれば、すぐに分かるはずです。
愛犬の闘病に直面し、血の涙をながしている飼主さんたちだって、最初からそんな覚悟をしていたわけではありません。誰もが愛犬との楽しい生活を夢見て、可愛い仔犬を家に迎えているのです。

闘病ブログを書いている飼主さんたちには例外なく、ある特徴があります。それは愛犬との掛けがえの無い思い出が、大きな心の財産になっているという事です。そしてその財産は、愛犬の闘病中にも絶えず積みあがっています。

更に、もう一つ大事なこと。
それは、飼い主さんたちが真正面から、愛犬の病と対峙していることです。

血の涙を流すのはつらい事。
だけど、血の涙を流せる飼い主さんは幸せな人。
そんな風に思えてなりません。

これから犬を飼う方々が皆、いつか幸せな血の涙を流すことができますように……

この記事を書いたユーザー

Peachy このユーザーの他の記事を見る

某大学工学部を卒業後、当時黎明期だったビデオゲーム業界に。エンジニアを希望するが、配属先は企画。結局在籍中はデザイナーとして過ごす。退職後はデザインツールの開発、CGの技術開発、TVアニメの企画など。目下の興味の中心は”犬との生活”。14歳のミニチュア・ブルテリア、ピーチーが相棒。

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス