「母が一人家を出て行ったことで、世間は母に冷たくなりました。それが母の傷になったのは間違いないわ。」普通、よほどの事情がなければ母親は子供を置いて行かない。当時、周りが口にしなくてもそれは当たり前のことだったにも関わらず、ミッシェルの母は子供二人を夫のもとに残して家を出た。

あの日の出来事を今でもはっきり覚えている

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まるで最後の晩餐の光景だった。ミッシェルは、何十年経ってもあの夜の食事メニューを忘れることができないという。静けさの中で父が母と別れると言った言葉は、まだ7歳と11歳だったミッシェルと妹の心を引き裂いた。

今まで幸せだと思っていた家庭が一瞬にして壊れた。だが、事実は隠しようがなかった。母は父を愛してはいなかったのだ。もう長い間、ずっと。

「両親の結婚生活は、愛がなかったかというとそうじゃないんです。父は私達家族を深く愛してくれていました。母が出て行くと言った時、母を愛している父はもちろん説得しようとしたんです。」だが、母の意志は固かった。

母は数キロ先に引っ越して行った

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父が引きとめても決心が変わらなかった母に、気に入らないなら出て行くのは君だーそう言った父。世間は自分に味方してくれる、という自信があったのだろう。70年代は、今のように女性が家を出て行くことなど滅多になかった時代だった。

ミッシェルたちは小さな町で育った。周りは知り合いばかり、そして親戚がたくさん住んでいた。母と同年代の女性はみな、結婚していた。母のように出て行く人など一人もいなかったのだ。

母はミッシェルと妹に言った。「あなた達のお父さんと結婚して、私は幸せじゃないの。だから出て行かなきゃいけないのよ。私が幸せじゃないと、お父さんも幸せにはならないわ。一緒にいると私にもお父さんにもよくないのよ。そして貴方達二人にも、よくないことなのよ。」

「父のもとを去るだけで、私達は捨てられたんじゃない。」

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母が二人に言った言葉は矛盾がなく、明らかだった。その時ミッシェルは思った。「母は私達二人を捨てるんじゃない。父のもとを去るだけだ。父を捨てただけだ。」と。母と一緒に家を出ることも可能だった。だが、姉妹は父のもとに残った。

数キロ離れた距離に母が住むとはいえ、まだ幼い二人には「今まで住んでいた家を出る」ということがよく理解できていなかった。「この家を出たら、スクールバスのお迎えに来てもらえない。」「ここを出たら友達と遊べなくなる。」そんなことを思った。

母は当然悲しんだ。一緒についてくると思っていた我が子が夫のもとに残ると言ったのだ。しかし、母は結局一人で出て行った。

世間はたちまち母に冷たくあたった

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母は、自分の決断が正しいことを知っていた。だが、世間はそうは見なかった。最初のうちこそ、母とすれ違っても普通に接していた人達の態度が冷たいものに変わるまで、時間はかからなかった。スーパーで知り合いに会っても、母は冷たくあしらわれた。

肉親の兄でさえ、母と口をきかなくなった。周りはみな、「母親たるものが子供を捨てて何を考えてるんだ。」と口に出さなくてもそう思っていた。母の父は15年以上も母と連絡を取ろうとしなかったという。「親戚中が、母を嫌悪し今でも恨みに思っている人もいるわ。」そうミッシェルは話す。

「でも私と母の絆は強かったの。母が出て行った後でも、お互いよく話をしたわ。」ミッシェルと妹は母の新しい家によく遊びに行った。「もともと母は昼間働いていたし私達も学校だったからあまり接する機会もなかったけど、母の新しい家が私達の2番目の家のように感じたわ。」

母があの時出て行かなければ、私達の関係は変わっていた

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母とはいつも近い存在だと言うミッシェル。「あの時、母が出て行ってなかったら今のように私達は近くはなれなかったと思うわ。母があの家で我慢して、惨めで不幸な生活を送っていたらきっと私達との関係も変わっていたに違いないわ。」

70年代に、世間の冷たい風に耐えることは容易ではなかっただろう。しかし、母の決断は母のためにも、自分たちのためにも良かったのだとミッシェルは言う。「母はいつも言ってるわ。自分は妻には向いてないのよ、って。」

子供達は、そんな母の考えを受け継いだ。「でも一番大切なのは、もし今の状況が気に入らないなら、どうやったら変えることができるかを考えないといけない、ってことよ。母は言ったわ。世間から批判されても自分が臆病者にならないほうがずっとマシ、って。」

母のしたことを理解し、今でもその関係を親密に保っているというのは素晴らしいことだと思う。いくら自分たちの判断で、父親のもとに残ったとはいえ、普通なら1人で出て行った母を恨む気持ちが湧いてもおかしくはない。

ミッシェルは母のしたことを誇りに思うと言っている。惨めで充実した結婚生活を送れないことほど、女性にとって人生の無駄以外のなんでもない。人が幸せになるには、いつもしなければいけない決断が人生の節目、節目にあるのだろう。あなたは今の結婚生活、本当に幸せだろうか。


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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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