記事提供:カラパイア

食べても食べても太らない人がいる一方で、努力の甲斐もなく体重が増え続ける人もいる。だが、将来的には誰もが同じ土俵の上に乗れるようになるかもしれない。科学者が、脂肪細胞の蓄積と燃焼を切り替える「メタボスイッチ」を発見したからだ。

「これまで肥満は食事量と運動量のバランスが悪い結果と考えられてきましたが、こうした考えは個人の代謝についての遺伝学の貢献を無視しています」と米マサチューセッツ工科大学のコンピューター生物学者マノリス・ケリス博士は話す。

ケリス博士の考えでは、遺伝子が痩せにくい、太りやすいなどの要因を決定づけているという。科学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』誌に掲載された研究によれば、ある遺伝的変異体が肥満と密接に関連しているという。

この変異体は、脂肪細胞をエネルギーを燃焼するベージュ脂肪細胞ではなく、蓄積する白色脂肪細胞に変えてしまう。

問題の変異体は、IRX3とIRX5の二つの遺伝子発現に影響するDNAの非コード領域、エンハンサー・イントロンと関連している。人体が作り出す脂肪細胞の種類を決めているのが、IRX遺伝子だ。

通常、エンハンサーの活動はARID5Bタンパク質によって抑制されている。

しかし、ケリス博士らはヨーロッパ人の約40%、東南アジア人の42%が、ARID5Bがその機能を果たさない肥満リスク変異体を持っていることを発見した。これがあると、IRX遺伝子は過剰に白色脂肪細胞を作り出す。

こうした遺伝的リスク因子は、不運な宿命と思われがちだ。しかし、合成生物学の最新の成果のおかげで、困った遺伝子に通常の機能を取り戻させることも夢ではなくなった。

ケリス博士らが研究しているのは、脂肪を蓄えるIRX遺伝子のスイッチを切り替えて脂肪燃焼型変異体にする方法だ。論文にはこうある。

「人間の脂肪細胞内のIRX遺伝子の活動を止めると、その細胞は脂肪を燃焼するベージュ脂肪細胞になった。また、標準体重のマウスの脂肪細胞内にあるIRX3遺伝子も阻害した。

するとこれらのマウスは、他のマウスと同じ食事量と運動量であるにもかかわらず、身体の脂肪の50%以上を失った。さらに高脂肪食による体重増も防ぐことができた。

食欲の調整を司る視床下部という脳の一部にあるIRX3遺伝子を阻害した場合、同様の効果は得られなかった。この結果は、白色/ベージュ脂肪切り替えスイッチが脂肪細胞内では機能するが、脳内では機能しないことを示唆している」

遺伝的変異体を使った治療が開始されるには、まだ何年もかかるだろう。しかし、こうしたことが将来可能になると知っているだけでも胸が踊るはずだ。ケリス博士は、「これはおそらく肥満解消の鍵であり、その解明のために全力を尽くします」と語っている。

出典:mit

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