富山から出張の度いらっしゃる、素敵なお客様のお話。

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筆者の店には、東京に出張がある度に立ち寄ってくれるお客さんも多い。

SEをしているUさんは、その中の一人だ。いつも富山から四人で東京に来て、筆者の店に寄りたいからと、わざわざ新橋のホテルに泊まる程、筆者の店を好んでくれている人だ。

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Uさんは、その四人で一緒に来る。東京での仕事が終わり、ホテルに入るまでのほんの一時間。月に一回くらいであるが顔を出してくれる。

「いや~、またここに来られた、東京はいいな、、、」

「地元には僕の店に似ている店は無いですか?」

「富山っていっても市内じゃないからね、、、。何も無いんだよ」

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などという会話から始まると、決まっていつも「ベタなんだけど・・・」という前置きを付けてからリクエストに入る。

「ベタなんだけど、、、カルチャー・クラブある?」

「ありますよ、曲は何にしますか?」

「カーマは気まぐれ!」

「はい、これですね」と筆者は瞬時に10000枚のCD棚からこの曲の入っているアルバムを取ってみせる。

「マスター、何でこれだけCDがあるのに、僕が言った曲を直ぐに出せるの?」

「だって、人気のある曲だから置き場所くらい覚えてしまいますよ」

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そんなやり取りの中で、Uさんは、「俺、あんまり洋楽詳しくないんですよ…」と真面目に話しを振ってきた。

「いえいえ、そんなこといいじゃないですか。好きな曲を聴けばいいと思いますよ」

Uさんは、場末とは言え東京で、周りのお客さんが音楽通で色々な薀蓄を言いながら飲んでいる姿にコンプレックスを持っているかのような言動が多い。

筆者はそんなUさんがのことがお客さんとして非常に可愛く見える。

決して洗練されているとは言い辛い四人組で来店する彼らだが、他のお客さんや筆者の店の方針に合わせてくれようとしている。筆者はそんな彼らを「田舎臭い」とは思わないし、むしろマナーの良いお客さんだと思っている。非常に有難いとも思っている。

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「次ですよ!!」と言って前の曲が終わったところで「カーマは気まぐれ」をかけた。照れ臭そうにUさんは筆者に会釈をしてくれる。

今となってはデジタルともアナログとも言いがたい音色から始まってハーモニカが印象的なイントロは、その時代多感な青春時代を過ごした者には強烈な思い出が蘇ることだろう。

83年全米1位となった彼らの代表作となったこの曲。英国のバンドだが遠く離れた日本、そして東京も富山も同じように、その時の若者達に愛聴された。良い音楽に場所は関係無い。

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「良い曲だな~…マスターさぁ、二号店富山に出そうよ、俺毎日行くからさぁ」

「富山ですか?行ったこと無いしなぁ…」

なんて会話をしているうちに曲が終わってしまった。

「マスター、有難う。俺のリクエストかけてくれて」

筆者はそのとき思った。いつも当たり前のように仕事なのでお客さんのリクエストをかけているが、Uさんは、リクエストの曲をかけた時に筆者に会釈をしてくれた上、曲が終わったときに「有難う」を言ってくれた。

お金を払っているんだから、俺は客だ!…そんな態度も取れる場所で、その謙虚さは何でだろう。確かに筆者はUさんとの仕事は気持ち良くすることが出来る。Uさんが連れてくる仕事の後輩と思われる人も、いつも穏やかにUさんとの時間を楽しんでいるように見える。

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「東京で生まれた」とか、「音楽に詳しい」とか、「大きな会社で働いている」とか、「良い大学を出ている」とか、筆者を含めてきっと多くの人がそういうことの何かにコンプレックスだったり優越感を持っていると思うが、それはただ他人との比較に過ぎないと思うようになった。

それは、Uさんが、人と人との繋がりの中で、優劣を決めずに常に相手に敬意を払っている姿を見たからだ。

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筆者はUさんが、実は音楽に詳しいのではないかと思っている。ただUさんのことだから、お連れさんや他のお客さんに気を遣って、皆が知っている曲を敢えて「ベタだけど…」の言葉の後にリクエストするのではないかと。「カーマは気まぐれ」なら恐らく他の同世代と思われるお客さんや、お連れさんも好きだろうと。

筆者はUさんが、富山に住んでいてSEだという事以外、肩書きや学歴等も知らない。もしかしたら物凄く有名で偉くて金持ちの人なのかもしれないし、その逆なのかもしれないが、そんなことは全く関係が無い。筆者はそんなUさんに敬意を払いたい。

そして筆者もお客として酒場に行く機会があるが、その時はUさんの真似をして、お店の人に気持ちよく働いてもらえるようになろうと決意をした。


最後までを読み頂き有り難う御座います。

この記事を書いたユーザー

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東京都大田区大森生まれ。立正大学附属立正高等学校、尚美学園短期大学音楽ビジネス学科、放送大学教養学部生活福祉専攻卒業。STAY UP LATEオーナー。 ライター業と、セミナー講師、司会業も実質少々。江戸川区在住、一児の父。愛猫家。

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